ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

映画

『ナイトメア・アリー』(2021) ウィリアム・リンゼイ・グレシャム:原作 ギレルモ・デル・トロ:脚本・監督

日記に書いたように、わたしは数日前に、この原作から1947年に映画化された同じタイトルの『Nightmare Alley』(日本公開時は『悪魔の往く道』という邦題)をYouTubeで観ている。ただし英語字幕について行けなかったので、細かい展開はわかっていない(そも…

『ベルファスト』(2021) ケネス・ブラナー:脚本・監督

アイルランド(ベルファスト)が舞台で、映画もモノクロだというので、てっきりケン・ローチ監督の作品かと思ってしまっていたのだが、これはケネス・ブラナーの自伝的作品なのだった。じっさい、Wikipediaでケネス・ブラナーのことを調べると彼はベルファス…

『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2021) ウェス・アンダーソン:監督・脚本

長いタイトルだけれども、これはつまり、こういうタイトルの雑誌なのであり、この映画はイコールその雑誌なのである。「カンザス・イヴニング・サン」というアメリカの架空の新聞社が、フランスの架空の町「アンニュイなんとか」というところに編集部を置い…

濱口竜介短篇集『偶然と想像』濱口竜介:脚本・監督

40分ほどの<短篇>3篇による作品で、濱口監督は同趣向の<短篇>を計7篇、つまりあと4篇の準備ができているという。 ここでの3篇は、「魔法(よりもっと不確か)」「扉は開けたままで」「もう一度」。 どのドラマも物語の主体は女性にあり、そういう意…

『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』アミール・“クエストラブ”・トンプソン:監督

これは、「ウッドストック」の行われた同じ1969年の夏に、ニューヨークの公園で開催された「Harlem Cultural Festival」というイヴェントの記録映像。一夜のイヴェントではなく、6月29日から8月24日までの日曜日の午後3時にハーレムのマウント・モリス・パー…

『アメリカン・ユートピア』スパイク・リー:監督

この映画は、2018年にリリースされたデヴィッド・バーンのアルバム「American Utopia」に基づくブロードウェイ公演の記録ということで、2019年のことだったらしい。あやうくCOVID-19禍に呑み込まれるところだったが、こうやってこのステキな公演が記録された…

『ライトハウス』ロバート・エガース:監督

わたしとしては、まずは近年傍役ばかりであまりフィーチャーされないウィレム・デフォーがたっぷりと拝める、という気分で観ることを選んだ作品。 監督はロバート・エガースという人で、2015年に『ウィッチ』という作品で監督デビュー。この作品が2作目だと…

『ノマドランド』ジェシカ・ブルーダー:原作 クロエ・ジャオ:脚本・編集・監督

フランシス・マクドーマンドが主演してまたまた今年のアカデミー賞の「主演女優賞」を受賞したということ(これで3回目?)、そのアカデミー賞で「作品賞」と「監督賞」を受賞した作品だということ、監督のクロエ・ジャオは中国生まれの中国人だということ…

『スパイの妻』黒沢清:監督

こうやって本編を観る前に予告を観たり、黒沢監督や主演二人のインタヴューを観たりもしていたのだけれども、これはまったく予想外の作品だった。脚本は先日観た『寝ても覚めても』で脚本と監督をやっていた濱口竜介と、野原位という人物。もちろん黒沢清監…

『i-新聞記者ドキュメント-』森達也:監督

森達也監督の作品、『A』や『A2』も観ていると思うのだけれども、あいにくと(病気のため)記憶には何も残っていない。ただ、先年の『FAKE』のことは記憶にある。そんな『FAKE』の記憶からこの作品のことを書きたい気になる。 『FAKE』は、「真」と「偽」を…

『パラサイト 半地下の家族』ポン・ジュノ:協同脚本・監督

カンヌ国際映画祭で「パルムドール」を受賞した作品。監督は韓国のポン・ジュノ監督なのだけれども、わたしには彼の監督した映画の記憶はまるでない。観ていないということはないと思うのだけれども、作風など、まるでわからない。この作品も、とにかくは「…

『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』クリス・フォギン:監督

「実話」の映画化ということだけれども、コーンウォールの船乗りたち(漁師・警備艇、救命艇の乗組員ら)「Fisherman's Friends」が大手レコード会社(Universal Music)と契約し、2010年にそのファースト・アルバムがみごとに売り上げトップ10入りし…

『家族を想うとき』ケン・ローチ:監督

わたしにはケン・ローチ監督の作品を観た記憶がない。キャリアの長い監督だから何かしら観ているはずだけれども、記憶が残っていない。とにかくは思いっきりリベラルな視点からの社会派ドラマを撮る監督のはず。 この作品の原題は「Sorry, We Missed You」と…

『永遠の門 ゴッホの見た未来』 ジュリアン・シュナーベル:脚本・編集・監督

これは、ゴッホの生涯のさいごの3年ほどにスポットを当ててつくられた作品だと思う。まずはパリのカフェでの「グループ展」との名目での展示から始まるが、けっきょくゴッホの作品だけの「個展」状態で、カフェの店主から「作品を撤去しろ」と言われるのだ…

『アイリッシュマン』マーティン・スコセッシ:監督

この作品は、前に観たアルフォンス・キュアロン監督の『ROMA/ローマ』と同じように、本来Netflixによってストリーミング配信される映画で(わたしが観た時点でまだストリーミング配信は始まっていない)、わたしが観た映画館や渋谷のアップリンクなど、ごく…

『ボーダー 二つの世界』アリ・アッバシ:監督

これはスウェーデンとデンマークとの合作映画だけれども、舞台はスウェーデン。このあいだ観たスワーンベリもスウェーデンの人だし、ちょっとスウェーデン週間。 原作者が以前観た『ぼくのエリ 200才の少女』を書いた人だそうで、観終わってみるとたしか…

『帰れない二人』ジャ・ジャンク-:脚本・監督

どうもこの邦題はよくわからない。もっと即物的なタイトルでよかった気がするけれども、まあそれでは客が入らないのか。ちなみに英語タイトルは「Ash is Purest White」で、これまたよくわからないけれども、映画の中でチャオ・タオがこれに近いことを語って…

『メランコリック』田中征爾:脚本・監督・編集

‥‥冒頭は、「いわゆるクライム・サスペンスが始まるのか?」という雰囲気なのだが、まあ撮影とか照明とかはよろしくはない。「どうなのか?」と観ていると、つまり営業を終えた町の銭湯が、「殺し」を請け負った殺し屋の「作業場」であり、作業が終わればち…

『ブルーノート・レコード ジャズを越えて』ソフィー・フーバー:監督

レーベル「ブルーノート・レコード」は創立80周年になるという。ブルーノートはわたしにとっても思い出深いレーベルだ。わたしの世代はロックの興隆期とジャズの衰退期(?)を同時に体験したわけで、ロックが発展してインプロヴィゼーションとか皆がやるよ…

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』~使用音楽について(1)

今回は、映画で使用された音楽についていろいろと書きます。この映画の音楽については思いつくことが山ほどあり、いったいどれだけの長さになってしまうか予想もつきませんが。 まずはしょっぱな、ディカプリオとブラッド・ピットのドライヴシーン、クレジッ…

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』クエンティン・タランティーノ:脚本・監督

あの「シャロン・テート事件」に絡んだ映画だ、ということぐらいしか知らずに観に行った。あと、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットとの初共演作品らしい。時制はまさに1969年。このところわたしの中ではこうやって、「1969年のおさらい」…

『新聞記者』藤井道人:監督

わたしなどでもよく知っている<現実の事件>(「伊藤詩織さん裁判」や「加計学園問題」)を活かしながら、今の日本の政治問題に密接な作品として惹き込まれた。 先日ちょうど、蓮實重彦の『ハリウッド映画史講義』を読んだところだったけれども、その本には…

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』フレデリック・ワイズマン:監督・製作・編集・音響

ここでは「ニューヨーク公共図書館」本館と各地の分館、研究組織それぞれをカメラはまわり、それぞれで勤務する各分野の長、子どもたちへの読みきかせ教室、貸出係から返却された本を分類する人々まで、図書館運営にかかわる多くの人たちの活動が記録されて…

『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』(2015) フレデリック・ワイズマン:製作・録音・編集・監督

ジャクソンハイツとはニューヨークのマンハッタンの東、ブルックリンの北の「クイーンズ区」の北西部の区域。クイーンズ地域ならば、わたしも多少の知識がある。アフリカ系、そしてヒスパニック系の住民がひしめき合い、いわゆるWASPの文化とは異なる文…

『主戦場』ミキ・デザキ:監督

巷で話題のドキュメンタリー『主戦場』。わたしは、例の歴史改ざん主義者らが「慰安婦問題」で間抜けな発言をして曝される映画、ぐらいの認識しかなかったのだけれども(もちろんそういう発言もあるのだけれども)、もっともっと踏み込まれた作品で、今の日…

『旅のおわり 世界のはじまり』黒沢清:脚本・監督

ウズベキスタンとの共同制作で、その中央アジアのウズベキスタンでのオールロケ。 黒沢監督お得意のホラーでもサスペンスでもないし、前に「旅」がタイトルに織り込まれた作品にはちょっとがっかりしていただけに、かなり不安があったのだけれども、こ、こ、…

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』マイケル・ドハティ:監督

久々に観るハリウッド映画。わたしはもともとゴジラ映画は嫌いじゃないし、この映画の元ネタの『三大怪獣 地球最大の決戦』も幼いころに映画館で観ているから、この映画への興味も強かった。それに、『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンス、そ…

『ビル・エヴァンス タイム・リメンバード』ブルース・スピーゲル:制作・編集・監督

ビル・エヴァンスは、おそらくわたしのいちばん好きなジャズ・ミュージシャンだろう。ジャズのレコードでいちばんたくさん所有していたのも、ビル・エヴァンスのレコードだった。もちろん最も聴いたのは最初のトリオでの4枚だったけれども、それ以外の録音…

『イメージの本』ジャン=リュック・ゴダール:監督

ゴダール、88歳の最新作。ゴダールよりも半年ほど年上のクリント・イーストウッドも先日すばらしい新作が公開されたし、そのイーストウッドよりさらに半年ほど年上のフレデリック・ワイズマンもまた、精力的に撮りつづけている。ワイズマンの近作をしばら…

『マイ・ブックショップ』ペネロピ・フィッツジェラルド:原作 イザベル・コイシェ:監督

舞台は1950年代の終わり、イギリスの海岸沿いの小さな田舎町で、戦争未亡人のヒロインが、ひとりで本屋を始めるという話。時代はちょうどナボコフの『ロリータ』が発売され、ちょっとした騒動になった時期。そんなことも映画では描かれているらしい。‥‥…