ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コルメス河畔通り23番地』(1975) シャンタル・アケルマン:脚本・監督 バベット・マンゴルト:撮影

   

 先週観た『私、あなた、彼、彼女』(1974)の翌年に撮られた作品で、シャンタル・アケルマンの代表作とされる作品。主演はデルフィーヌ・セイリグで、この200分に及ぶ作品で、彼女はさいしょから最後まで、ほぼ「出ずっぱり」である。というかこの作品、そのデルフィーヌ・セイリグ演じるジャンヌ・ディエルマンという女性の3日間を、ただ冷徹に「観察」しつづけるような映画。そういうところでは、先の『私、あなた、彼、彼女』の方法・演出を引き継いでいると思える。

 そのようなところで、『私、あなた、彼、彼女』をとても楽しんで観たわたしとしては、もうこの作品で「何も起こらず」とも、ただ、このジャンヌ・ディエルマンという女性の「行為」だけを追う作品だったとしても興味深く観たことだろうと思う。例えば彼女がキッチンで料理をつくる仕込みを延々と映すシーンにはなぜか引き込まれてしまう。
 撮影も、彼女が息子と二人で住む2DKだかのアパルトマンの中、何ヶ所かの定位置を決め、そこにフィックスされたカメラからの「ワンシーンワンカット」とも言える撮影から、日常生活をパフォーマンスとして捉えた「パフォーマンス映画」とも観てしまうのだ。
 しかし実のところこの作品、ラストの「事件」に向けて、隠されたドラマティックな要素にあふれた作品ではあると思った。

 つまり、毎日の家事その他、ルーティンにこだわるヒロインの、そのルーティンが狂って行くさまがラストにつながって行くだろうし、そこに二日目の夜の、ヒロインと息子との会話(というか、息子が語る「セックス」の話)が大きな意味を持っていたと思う。
 いったいなぜ、息子はあのような話をしたのだろうか。ひょっとしたら息子は、自分が学校へ行っている昼間に、母親がアパルトマンで「売春」をしていることを知っているのだろうか。

 例えば、ヒロインが知人の買い物のあいだ、アパルトマンでちょっとのあいだ預かる赤ちゃんのことだとか、ヒロイン自身が買い物に出かけて会う店員とのやりとり、買い物の帰りに立ち寄る喫茶店、そして彼女のアパルトマンのエレヴェーターのこととか、書きたいことがいろいろあるのだけれども、ちょっと今はゆっくりと時間が取れないし、頭の中がまとまってもいないことだし、このあたりで。