展覧会
まず先にちょっと、わたしの見た、この展覧会の観客層のことを書いておきたいのだけれども、圧倒的に若い女性の観客が多かった。だいたい70パーセント以上はそういう若い女性観客で、20パーセントぐらいが若い男性観客。こういう現代美術の展覧会にけっ…
久々の「展覧会」カテゴリー。 この高島野十郎(たかしま やじゅうろう)という人は福岡は久留米に生まれ、東京帝国大学の農学部水産学科を卒業したのだが、以後独学で画家を志し、ヨーロッパに3年間渡ったと。 おそらくは実家が裕福で経済的な圧迫はなかっ…
このCOVID-19禍の下、ドイツは日本よりよほど大事(おおごと)だったろうけれども、そんな中で、これだけの考古学的にも重要だろう美術品を海外に送り出されるというのは大変なことだったと思う。それを実現した国立ベルリン・エジプト博物館のスタッフの方…
第1章 古代社会の男女 第2章 中世の政治の女 第3章 中世の家と宗教 第4章 仕事とくらしのジェンダー -中世から近世へ- 第5章 分離から排除へ -近世・近代の政治空間とジェンダーの変容- 第6章 性の売買と社会 第7章 仕事とくらしのジェンダー -…
ヴィルヘルム・ハマスホイというデンマークの画家について、まったく知るところはなかったのだけれども、去年の早い時期からこの展覧会のチラシは都美術館に置かれていて、とても興味を持っていた。 そのチラシの、ハマスホイの室内画を観た感じでは、「これ…
まあ去年いちど観ている展覧会なのだから、その感想もまた同じようなものでしょう。ただ、日記の方にも書いたけれども、この美術館のキャパが少し大きいということと、空間が外にも拡がっているところとかで、美術館の方々がいろいろと趣向を凝らして自らも…
「中島敦とは誰だったのか?」というのが、今のわたしの頭に渦巻く想念ではある。そのわたしなりの「答え」は中島敦の作品を読むことから解き明かさなくてはならないだろうが、その大きな「補助資料」として、この展覧会があった。ちょうどわたしの中で「中…
ちょっとばかり手前みそで書いておきますと、清水真理さんはわたしのやっていたイヴェント「crosstalk」にずっと参加していただいた作家さんでした。清水さんからはのちに、「crosstalk」に参加したことが自分にプラスになったというような言葉をいただき、…
『不思議の国のアリス』で展覧会を開くならば、キュレーターの手腕と予算次第でとても面白い展覧会にはなるだろうし、「いいかげん」にやろうと思えばいくらでもいいかげんな展覧会にもなってしまうだろう。そういうところで一抹の不安を抱きながら観に行っ…
マックス・ワルター・スワーンベリ、昔は「スワンベルグ」との表記だったけれども、かつては大手出版社から、シュルレアリスム美術の画集の一冊として刊行されてもいたと記憶している。 今、自分の中で、このスワーンベリの描く浮遊する鳥と人間との合体、そ…
観客数が60万人を越えたとかで、大ヒットの展覧会らしく、アジアでの巡回展も実現するらしい。 ぐるっとまわってみて、数ヶ所に設置された大規模なインスタレーションは見ごたえがあったのだけど、あとは彼女の過去の活動の写真パネル展示が中心。途中に流さ…
(写真は「愛知芸術文化センター」展示のウーゴ・ロンディノーネの「孤独のボキャブラリー」) わたしは10時半ぐらいから、まずは豊田市周辺~豊田市美術館の作品から観始めたのだが、けっこう展示場所を徒歩で巡回するのに時間が取られたし、いちばん観た…
岸田劉生は、近代日本美術史の中で特異な位置を占めていると思っていた。それは、「印象派」に耽溺することもなく、もっと時代をさかのぼった北欧フランドル美術への親和性にあるのではないかと思っていた。そのことが、この展覧会を観ようと思った理由でも…
ジュリアン・オピーの作品は、一目見れば「ジュリアン・オピーだ」とわかる(ただ、近代美術館に常設されている「日本八景」はわからんが)。基本、彼の作品は単純化された太い黒い線による人物を描いた作品がいちばんポピュラーで、あとはLEDによる様々…
坂本繁二郎の、「馬」の絵の記憶はある。若い女性の半身像も記憶しているが、それ以外のこの人の画業を知っているわけではない。しかし、こういう大掛かりな「回顧展」というものは、その画家の生涯の画風の変遷をみせてくれるわけでもあるし、そういう意味…
作品展示:宮本隆司写真作品、栲象さんの活動資料、羽永光利写真作品 上映作品: 宮本隆司撮影・庭劇場ドキュメンタリー作品『Kubikukuri Takuzou』(2011) インスタレーション『首くくり栲象 声とことば』映像・構成:余越保子(2010) 余越保子『Hangman Taku…
ボルタンスキーの作品というのは、観ているようでちゃんと観てはいない。今回の展示はもちろん会場に合わせた新作インスタレーションもあり、同時に今までの彼の活動を総括する「回顧展」という性格も合わせ持つというから、やはり観ておきたい展覧会ではあ…
先に書いたように、わたしはこの展覧会で、彼の「平行植物」関連の作品がまず観られればいい、ぐらいの気もちでいて、もちろん立体作品も含めてのそんな「平行植物」関連の作品を堪能したのだけれども、思いがけずにレオ・レオーニのシンプルな絵本に夢中に…
速水御舟の作品は、あまりに有名な「炎舞」といくつかの椿の絵ぐらいしか知らないし、実物を観たという記憶もない。この山種美術館はその「炎舞」をはじめ、御舟の作品120点を所蔵しているそうなのだが、今回の展覧会で(会期中の展示替えを入れて)その…
大きく、五つのセクションに分かれた展示。「Lo Manthang(ロー・マンタン)」「当方の市」「建築の黙示録」「塔と柱」そして「シマというところ」。「シマというところ」には8点の「ソテツ」、それから「面縄ピンホール2013」、「サトウキビ」という作…
ちょうど今、クリムト、そしてラファエル前派と、19世紀末から20世紀初頭に「女性たち」を描いた画家たちの展覧会が並行して開催されている。蠱惑的な女性の魅力をカンバスに定着させた作品が集まった感があるけれども、もちろん作家それぞれで「女性像…
ジョセフ・コーネルはわたしの大好きな造形作家のひとりである。今となっては恥ずかしくもあることだが、わたしは彼の影響を受けて「ボックス・アート」を数多く造っていた時期もあったのだ。しかし、考えてみたら単品でコーネルの作品を観たことはあっただ…
町の「猫ショップ」に置いてあるような立体のネコ人形とか、八代亜紀の絵画作品とかもあって、あと、申し訳程度にビアズリーとかの海外作家の作品も展示されていたのだけれども、ま、わたし的にはそういうのはどうでもよくって、やはりこの展覧会は「浮世絵…
ラファエル前派連中の作品は日本でも人気があり、けっこうしょっちゅう「ラファエル前派展」なるものが開催されている印象がある。それで今回の展覧会の特色は、そんなラファエル前派の画家たちを支援した批評家のジョン・ラスキンの生誕200年に合わせた…
クリムトの作品は美しい。クリムトの父は金工師、彫板師であり、クリムトの弟のエルンストも工芸彫刻師となり、クリムト自身もウィーンの工芸学校で学んだところから、彼の作品には工芸的な要素と絵画的要素が融合され、その後期には<金>という<色彩>を…
‥‥心に残る展覧会だった。タイトル通りに、彼女の母、愛猫のスーリー、彼女の父それぞれの死に向き合う作品だったのだけれども、わたしはこうして、いきなりに「死」に向かう準備もないままにギャラリー内に足を踏み入れてしまった。そして、そこで「死」に…
『限局性激痛』1999年1984年、私は日本に三ヶ月滞在できる奨学金を得た。10月25日に出発した時は、この日が九十二日間のカウントダウンへの始まりになるとは思いもよらなかった。その果てに待っていたのはありふれた別れなのだが、とはいえ、私…
近年、大規模に再評価熱の高まる岡上淑子の、とりあえずは総括的展覧会といっていいのでしょうか。 今回こうやって彼女の作品を総括的に観て、やはりそこに「廃墟~ディストピア」的な世界観も読み取れることに注目し、「これは今の時代に再評価されるわけだ…
まずは、「阪神淡路大震災」があった*1。そして「9.11」があり、「東日本大震災」、「フクシマ」があった。世界のディザスターは継続、拡張していて、アメリカでは「トランプ」という妖怪、そしてもちろん日本では、「安倍晋三」という妖怪が米国/日本の秩…
写真術は、その誕生のときに(シャッタースピードの問題ゆえ)「静止するもの」をこそ捉えることに本領があり、風景を撮ることからこそ、その歴史が始まっただろう。そこに自然風景を撮ることと同時に、建築物を撮るということがさかんに行われ、それはひと…