ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

Book

『絶望』(1936) ウラジーミル・ナボコフ:著 貝澤哉:訳

絶望 (光文社古典新訳文庫)作者:ナボコフ光文社Amazon この小説(ロシア語版)の刊行された1936年、ナボコフはベルリンで生活していて、前々年の1934年には長男のドミトリイが誕生している。ナチスの勢力の増大に伴って翌1937年に家族でパリに移り住むのだっ…

『イメージ 視覚とメディア』(1972) ジョン・バージャー:著 伊藤俊治:訳(ちくま学芸文庫)

イメ-ジ: 視覚とメディア (ちくま学芸文庫 ハ 23-2)作者:ジョン バージャー筑摩書房Amazon 原題は「Ways of Seeing」で、ジョン・バージャー単独の著作ではなく、連続テレビ番組の「Ways of Seeing」で語られた問題を発展させ、図版の取り入れ方の形式を含め…

『世界の名著 プルードン・バクーニン・クロポトキン』より『十九世紀における革命の一般概念』(1851) ピエール・ジョゼフ・プルードン:著 渡辺一:訳

世界の名著 53 プルードン・バクーニン・クロポトキン (中公バックス)作者:プルードン,バクーニン,クロポトキン中央公論新社Amazon 1809年にフランス東部で生まれたプルードンは、8歳の頃から働きながら勉学に勤しんでいたらしいが、19歳からは学業をあきら…

『狼王ロボ シートン動物記』(1899~1901) アーネスト・トンプソン・シートン:著 藤原英司:訳

狼王ロボ シートン動物記 (集英社文庫)作者:アーネスト・T・シートン集英社Amazon よく『シートン動物記』というが、じっさいにシートンの著作に『シートン動物記』という作品があるわけではなく、シートンが生前発表した12冊の著作に含まれる55編の「動物物…

『世界の名著 プルードン・バクーニン・クロポトキン』より「アナーキズム思想とその現代的意義」(1967) 猪木正道・勝田吉太郎:著

世界の名著 53 プルードン・バクーニン・クロポトキン (中公バックス)作者:プルードン,バクーニン,クロポトキン中央公論新社Amazon これは、近代アナーキズムの3人の思想家、プルードン、バクーニン、そしてクロポトキンの著作を集めたアンソロジー的な書物…

『インターネットを武器にした<ゲリラ> 反グローバリズムとしてのサパティスタ運動』(2002) 山本純一:著

インターネットを武器にした<ゲリラ>作者:山本 純一慶應義塾大学出版会Amazon 「サパティスタ民族解放軍(Ejército Zapatista de Liberación Nacional)」略称「EZLN」はメキシコ南部のチアパス州を拠点に活動する先住民族の組織で、その活動は1960年代…

『アナーキスト人類学のための断章』(2004) デヴィッド・グレーバー:著 高祖岩三郎:訳

アナーキスト人類学のための断章作者:デヴィッド グレーバー以文社Amazon この本を読み終えたあと、じつはわたしはこの本を1年半前にいちど読んでいることが、この日記からわかった。例によってまったく記憶していなかったのだが、それで読み終えてからその…

『倫理21』(2003) 柄谷行人:著

倫理21 (平凡社ライブラリー 471)作者:柄谷 行人平凡社Amazon この本も、先日読んだ『世界共和国へ』のように、「他者を手段としてのみならず、同時に目的として扱え」というカントのことばへと収束していく。ここに道徳を越えた「倫理」のもんだいがある。…

『世界共和国へ 資本=ネーション=国家を超えて』(2006) 柄谷行人:著

世界共和国へ: 資本=ネーション=国家を超えて (岩波新書 新赤版 1001)作者:柄谷 行人岩波書店Amazon 近年の「グローバリゼーション」とは、とりわけ「資本主義的な市場経済がグローバル化した」ということで、「資本主義の世界市場化」ともいえる。とりわけ…

『実践 日々のアナキズム ―世界に抗う土着の秩序の作り方』(2012) ジェームズ・C・スコット:著 清水展・日下渉・中溝和弥:訳

実践 日々のアナキズム――世界に抗う土着の秩序の作り方作者:ジェームズ・C.スコット岩波書店Amazon 「アナキズム」は日本語に訳すと「無政府主義」として一般に知られているけれども、この「無政府主義」ということばは大きな誤解を招くと、今は多くの人が言…

『ペスト』(1947) アルベール・カミュ:著 宮崎嶺雄:訳

ペスト(新潮文庫)作者:カミュ新潮社Amazon 2020年の「コロナ禍」で、ふたたび全世界で読まれるようになった小説。わたしは持っている文庫本のページに折り目がつけてあったことなどから、はるかむかしにこの本を読んでいたことがわかったけれども、やはり…

『ちくま日本文学全集 004 尾崎翠』 尾崎翠:著

ちくま日本文学004 尾崎翠 (ちくま文庫)作者:尾崎 翠筑摩書房Amazon 尾崎翠(1896~1971)の代表作は、この一冊にほぼすべて収録されているであろう。巻末の精緻な「年譜」を読むだけでも、この稀有な才能を持たれていた尾崎翠の生涯がよくわかるのだが、193…

『隣りの女』 つげ義春:著

隣りの女作者:つげ 義春日本文芸社Amazon 掲載作は以下の6篇。・「隣りの女」(1985年3月) ・「散歩の日々」(1984年6月) ・「少年」(1981年7月) ・「ある無名作家」(1984年9月) ・「近所の景色」(1981年10月) ・「池袋百点会」(1984年12月) つげ…

『国家はなぜ衰退するのか 権力・繁栄・貧困の起源』(上・下) ダロン・アセモグル&ジェイムズ・A・ロビンソン:著 鬼澤忍:訳

実はわたしは読み始める前に大きな勘違いをしていて、それはこの本の内容は「すべからく国家というものはいずれ衰退するものなのだ。それはなぜか?」というようなものだと思っていたのだった。 そうではなくこの本は「国家には繁栄する国と衰退する国とに分…

『ハーディ短編集 月下の惨劇』 トマス・ハーディ:著 森村豊:訳

月下の惨劇 他5篇: ハーディ短篇集 (岩波文庫 赤 240-7)作者:ハーディ岩波書店Amazon この短編集は、翻訳者がハーディの3冊の短編集から6篇の短編を選んで翻訳したもので、内容は以下の通り。 「Wessex Tales」(1888)より 「見知らぬ三人の男」(The Three …

『オードリー・タン 自由への手紙』 オードリー・タン、クーリエ・ジャポン編集チーム

オードリー・タン 自由への手紙講談社Amazon オードリー・タンによる著作ではなく、日本のオンライン雑誌社のオンライン・インタビューに答えたものを文字起こししたもの。 このインタビュー時(2020年)、オードリー・タンは台湾のデジタル担当政務委員(大…

『呪いの館』ナサニエル・ホーソーン:著 鈴木武雄:訳

呪いの館作者:ナサニエル・ホーソン角川書店Amazon この角川文庫版では著者名は「ナサニエル・ホーソン」となっているけれども、日本では一般に「ナサニエル・ホーソーン」と表記される。以後は「ホーソーン」と表記したい。 ホーソーンは長編『緋文字』(185…

『箱男』 安部公房:著

箱男(新潮文庫)作者:安部公房新潮社Amazon なかなかに感想を書くのも難しい本だけれども、この小説のひとつのテーマ、「見る」「見られる」、そして「覗く」「覗かれる」という関係性について考えていたら、去年の暮れに「お騒がせ」ニュースになった、「…

『カフェ・パニック』ロラン・トポル(ローラン・トポール):著 小林茂:翻訳

カフェ・パニック (創元推理文庫 546-1)作者:ロラン トポル東京創元社Amazon この文庫本での著者名の表記は「ロラン・トポル」なのだが、一般にこれ以外のところでは彼は「ローラン・トポール」として知られている。一般に彼はロマン・ポランスキーが監督・…

『かめくん』北野勇作:著

かめくん (河出文庫)作者:北野勇作河出書房新社Amazon 主人公の「かめくん」はまさに「かめ」、人間大のカメで、人間社会の中にさほど違和感なく融け込んで生活しているようだ。ただ、この小説の中で「かめくん」がことばをしゃべる、という場面はいちども出…

『カモノハシの博物誌 ふしぎな哺乳類の進化と発見の物語』浅原正和:著

カモノハシの博物誌~ふしぎな哺乳類の進化と発見の物語 (生物ミステリー)作者:浅原 正和技術評論社Amazon 3年半前にいちど読んだ本だけれども、前回はただ「カモノハシ」について知れること、という視点を中心に読んだのだけれども、今回は何というのか、「…

『マルゴ』(1938) ウラジーミル・ナボコフ:著 篠田一士:訳

人間の文学〈第9〉マルゴ (1967年)作者:ウラジミール・ナボコフAmazon 前にも書いたように、これは先日読んだナボコフの『カメラ・オブスクーラ』(1932)を、ナボコフ自身が英訳して『Laughter in the Dark』のタイトルで出したもの。 ナボコフは先に出された…

『カメラ・オブスクーラ』(1932) ウラジーミル・ナボコフ:著 貝澤哉:訳

カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1)作者:ナボコフ光文社Amazon 今年の初めに同じナボコフの『キング、クィーンそしてジャック』を読んだとき、わたしは「これがナボコフが書いた最初の『犯罪小説』ではないか」と書いたのだけれども、それに…

『体内の蛇 フォークロアと大衆芸術』(1988) ハロルド・シェクター:著 鈴木晶・吉岡千恵子:訳

体内の蛇: フォークロアと大衆芸術作者:ハロルド シェクターリブロポートAmazon う~ん、この本を読んだ感想を書くべきなのだが、読み終わってしばらく経ってみると、この本なんて「どうでもいい」本のように思えてしまい、書く言葉も見つからないのだ。 が…

『偉業』(1932) ウラジーミル・ナボコフ:著 貝澤哉:訳

偉業 (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-3)作者:ナボコフ光文社Amazon 翻訳された貝澤哉氏が「解説」で書いておられるが、ナボコフの長編小説の多くは、既存の小説ジャンルのパロディとして捉えることが出来る。例えばデビュー作『マーシェンカ』は恋愛小説、『目』…

『11の物語』(1970) パトリシア・ハイスミス:著 小倉多加志:訳(3)

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:パトリシア ハイスミス早川書房Amazon「ヒロイン」(The Heroine) パトリシア・ハイスミス24歳の時のデビュー作。このときからすでに、人の精神の歪みを冷徹に捉える視線は恐ろしいほどに鋭かったようだ。 主人公のル…

『11の物語』(1970) パトリシア・ハイスミス:著 小倉多加志:訳(2)

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:パトリシア ハイスミス早川書房Amazon「モビールに艦隊が入港したとき」(When the Fleet Was In at Mobile) 「序文」で、グレアム・グリーンが「お気に入り」とした作品。主人公ジェラルディーンの「内的独白」を交え…

『11の物語』(1970) パトリシア・ハイスミス:著 小倉多加志:訳(1)

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:パトリシア ハイスミス早川書房Amazon「かたつむり観察者」(The Snail-Watcher) 食用かたつむりを観察し、飼育するようになったピーター・ノッパードの「悲劇」。 ハイスミス自身がかたつむりの飼育を趣味としていた…

『死者と踊るリプリー』(1991) パトリシア・ハイスミス:著 佐宗鈴夫:訳

死者と踊るリプリー (河出文庫)作者:パトリシア・ハイスミス河出書房新社Amazon この本の原題は「Ripley Under Water」。リプリー・シリーズの第2作が「Ripley Under Ground」(邦題『贋作』)と似ていて、じっさい、その内容も『贋作』から引き継いでいて…

『リプリーをまねた少年』(1980) パトリシア・ハイスミス:著 柿沼瑛子:訳

リプリーをまねた少年 (河出文庫 ハ 2-16)作者:パトリシア・ハイスミス河出書房新社Amazon 原題は「The Boy Who Followed Ripley」だから「まねた」というニュアンスではなく、「ついて行く」とか「追いかける」という言葉の方がふさわしいだろう。 わたしが…