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人間の文学〈第9〉マルゴ (1967年)作者:ウラジミール・ナボコフAmazon 前にも書いたように、これは先日読んだナボコフの『カメラ・オブスクーラ』(1932)を、ナボコフ自身が英訳して『Laughter in the Dark』のタイトルで出したもの。 ナボコフは先に出された…
カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1)作者:ナボコフ光文社Amazon 今年の初めに同じナボコフの『キング、クィーンそしてジャック』を読んだとき、わたしは「これがナボコフが書いた最初の『犯罪小説』ではないか」と書いたのだけれども、それに…
体内の蛇: フォークロアと大衆芸術作者:ハロルド シェクターリブロポートAmazon う~ん、この本を読んだ感想を書くべきなのだが、読み終わってしばらく経ってみると、この本なんて「どうでもいい」本のように思えてしまい、書く言葉も見つからないのだ。 が…
偉業 (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-3)作者:ナボコフ光文社Amazon 翻訳された貝澤哉氏が「解説」で書いておられるが、ナボコフの長編小説の多くは、既存の小説ジャンルのパロディとして捉えることが出来る。例えばデビュー作『マーシェンカ』は恋愛小説、『目』…
11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:パトリシア ハイスミス早川書房Amazon「ヒロイン」(The Heroine) パトリシア・ハイスミス24歳の時のデビュー作。このときからすでに、人の精神の歪みを冷徹に捉える視線は恐ろしいほどに鋭かったようだ。 主人公のル…
11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:パトリシア ハイスミス早川書房Amazon「モビールに艦隊が入港したとき」(When the Fleet Was In at Mobile) 「序文」で、グレアム・グリーンが「お気に入り」とした作品。主人公ジェラルディーンの「内的独白」を交え…
11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)作者:パトリシア ハイスミス早川書房Amazon「かたつむり観察者」(The Snail-Watcher) 食用かたつむりを観察し、飼育するようになったピーター・ノッパードの「悲劇」。 ハイスミス自身がかたつむりの飼育を趣味としていた…
死者と踊るリプリー (河出文庫)作者:パトリシア・ハイスミス河出書房新社Amazon この本の原題は「Ripley Under Water」。リプリー・シリーズの第2作が「Ripley Under Ground」(邦題『贋作』)と似ていて、じっさい、その内容も『贋作』から引き継いでいて…
リプリーをまねた少年 (河出文庫 ハ 2-16)作者:パトリシア・ハイスミス河出書房新社Amazon 原題は「The Boy Who Followed Ripley」だから「まねた」というニュアンスではなく、「ついて行く」とか「追いかける」という言葉の方がふさわしいだろう。 わたしが…
アメリカの友人 (河出文庫 ハ 2-15)作者:パトリシア・ハイスミス河出書房新社Amazon 原題は「Ripley's Game」なのだけれども、この邦訳が刊行される前にヴィム・ヴェンダース監督による映画化作品『アメリカの友人』が先に公開されて知られるようになってい…
贋作 (河出文庫 ハ 2-14)作者:パトリシア・ハイスミス河出書房新社Amazon トム・リプリーシリーズの前作『太陽がいっぱい』からこの『贋作』までに、刊行には15年のブランクがあるけれども、内容的には『太陽がいっぱい』から6~7年あとのことのようで、…
太陽がいっぱい パトリシア・ハイスミス 青田勝訳 角川文庫 角川書店作者:パトリシア・ハイスミス 青田勝訳ノーブランド品Amazon 凛としたアラン・ドロンのたたずまい(わたしにはマリー・ラフォレの美しさこそ!)と、ニーノ・ロータの甘美な映画主題曲でよ…
プードルの身代金 (扶桑社ミステリー ハ 8-9)作者:パトリシア ハイスミス扶桑社Amazon ハイスミスの作品には、読後感のよろしくないものがあれこれとあるけれども、この『プードルの身代金』からは、読み終わってもただ「やりきれない」という気もちから抜け…
スモールgの夜 (扶桑社ミステリー ハ 8-6)作者:パトリシア ハイスミス扶桑社Amazon(実はこの本、2021年10月にも読んでいて、わたしのことだから読んだ記憶はまるで残っていなかったのだけれども、この日この本の感想を書くにあたって、その2021年10月にこの…
世界の文学〈8〉ナボコフ (1977年)キング、クィーンそしてジャック 断頭台への招待作者:ナボコフAmazon (わたしが今回読んだのは、今手軽に入手できる新潮社刊の「ナボコフ・コレクション」によるものではなく、もっと古い、1977年に刊行された「集英社版 …
溝口健二の人と芸術 (1964年)Amazon 黒澤明監督には橋本忍という脚本家がいて、小津安二郎監督は野田高梧との結びつきが強かったけれども、同じように溝口健二監督には依田義賢という脚本家がいた。依田義賢は脚本家になってまもなく溝口監督の『浪華悲歌』(…
セバスチャン・ナイトの真実の生涯 (講談社文芸文庫)作者:ウラジミール・ナボコフ講談社Amazon とりあえず読了したが、これは再読したいところ。ただ図書館本なので来週中に返却しなければならず、そうもいかないのが残念ではある。 この本は、37歳で夭逝し…
ロリータ、ロリータ、ロリータ作者:若島 正作品社Amazon 日本における、ナボコフの『ロリータ』翻訳の決定版を出された若島正氏による、いわば「翻訳者の視点から語る『ロリータ』論」という本、なのだが、いわゆる「作品論」というのではなく、「言語の魔術…
ロリータ (新潮文庫)作者:ウラジーミル ナボコフ新潮社Amazon 前にこの『ロリータ』を読んだのはもう6年も前で、それから今までのあいだにわたしは記憶障害も起こしていて、『ロリータ』の内容は誰もが読まなくても知っているぐらいのことしかわかっていな…
アナーキスト人類学のための断章作者:デヴィッド グレーバー以文社Amazon あまり書きたくはないのだけれども、わたしが政治的立場を選ぶとすれば、それは「アナーキズム」ということになる。まあ「政治的立場」などというよりも「信念」のようなもので、政治…
象の物語―神話から現代まで (「知の再発見」双書)作者:ロベール ドロール創元社Amazon 著者のロベール・ドロールという人は、以前に『動物の歴史』というけっこう分厚い本を読んで知っていた。この「象」の本は、創元社の「知の再発見双書」の一冊として刊行…
熊: 人類との「共存」の歴史作者:ベルント ブルンナー白水社Amazon 7月にいちど読んでいた本だけれども、その頃は国内で「熊問題」も今ほどではなかったし、わたしもこの本の内容をまるで思い出せなかったりしたので、また読んでみた。 けっきょくこの本は…
愛しすぎた男 (扶桑社ミステリー)作者:パトリシア ハイスミス扶桑社Amazon この文庫本の裏表紙には「いま話題の<ストーカー>(追跡者)の世界を内側から描いた名手ハイスミスのノンストップ・サスペンス!」とあり、「あとがき」にも「日本でも注目されつ…
消しゴム (光文社古典新訳文庫)作者:アラン ロブ=グリエ光文社Amazon アラン・ロブ=グリエの作家としてのデビュー作にして、「ヌーヴォー・ロマン」の登場を告げることになる作品。発表は1953年である。 わたしはロブ=グリエの映画こそ観ているが、小説を…
ディフェンス (河出文庫)作者:ウラジーミル・ナボコフ河出書房新社Amazon 1930年に刊行された、ナボコフの3作目の長編小説(ロシア語)だが、この邦訳は1964年にマイケル・スキャメルとナボコフ自身によって翻訳された「英語版」からの翻訳。ロシア語から英…
下の画像は、スペイン版のこの『メイスン&ディクスン』の表紙で、読み終わったあとにこの絵を見ると「ああ、まさにメイスンもディクスンもこ~んな感じだったな」とは思うのだ(左のメイスンは白髪なのではなく、愛用の鬘をかぶっているのだ。いっしょにい…
この本を読むのは連続して2回目のこと。とにかく初読のときには「どこか道を迷っていた」感じだったのだが、こうやって2回目に読むと前に読んだときに見失っていたところにもあれこれ気づき、「やはりこうやって2回読むことにしてよかった」とは思うのだ…
トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(下) (Thomas Pynchon Complete Collection)作者:トマス・ピンチョン新潮社Amazon ついに、この分厚い本を読み終えたのだが、どうも途中で使用していたパソコンのクラッシュなどということもあって、読書継続の…
トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)作者:トマス・ピンチョン新潮社Amazon 主人公のチャールズ・メイスンとジェレマイア・ディクスンとは「実在の人物」で、日本のWikipediaにも、彼らが測量して引いた…
賜物 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集2)作者:ウラジーミル・ナボコフ河出書房新社Amazon ナボコフは1940年にアメリカへ渡るのだけれども、その前のドイツ~フランス亡命時代の、そのさいごにロシア語で書かれた作品がこの『賜物』(これが亡命時代さいごの…