映画
そもそもの原作はフランスのグラフィック・ノヴェルということで、そこから『セヴン』の脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーが脚本を手掛けた。 マイケル・ファスベンダー(冒頭からラストまで、まさに「出ずっぱり」)演ずる雇われ殺し屋が依頼された…
映画の冒頭はスタンダードサイズ、モノクロの画面でちょっと驚かされるのだが、「司会者」とおぼしき人物が、「これから演劇製作の舞台裏のドキュメントをお見せします」と語り、そのうしろでタイプライターに向かった劇作家(エドワード・ノートン)が執筆…
1923年(大正12年)9月6日、関東大震災後の混乱の中、千葉県東葛飾郡福田村(現在の野田市)において、香川県から来ていた薬の行商グループ15人が地元の「自警団」に朝鮮人と怪しまれ、15人のうち女性子供を含む9人(1人は妊婦であった)が虐殺された。これ…
ポーランド出身の映画監督イエジー・スコリモフスキは、名の知られた監督ではあるけれども、実はわたしはこの監督の作品を観た記憶がない。そもそも20年ぐらい映画を撮らなかったブランクがあるし、その前の作品は日本では未公開だったのではないかと思う。2…
ルイス・ウェインは19世紀末から20世紀初頭に活動した、とにかくは「ネコの絵」で有名になったイギリスの画家。彼は晩年に統合失調症を患っていたとされ、わたしなどは、年代順に並べられた彼の描いたネコの絵から「統合失調症」の進行を読み取る例とし…
トリュフォーの、『大人は判ってくれない』(1959)に次ぐ第二作で、製作された1960年はゴダールが長編第一作の『勝手にしやがれ』を撮った年でもあり、この二本の作品の撮影監督はラウール・クタールだったりする。見ていても「こういうショットはラウール・…
この映画は、わたしが今まで観た映画の中でも、もっとも大きな感銘を受けた作品だった(と思う)。それはけっきょく、わたしが「映画」に求めているのは「ドラマ」とかいうものではない、ということだっただろうか。いや、この映画はこの映画で、また別の「…
主人公の「あみ子」を演じたのは、オーディションで選ばれた大沢一菜(おおさわ かな)という、東京に住む(撮影時で10歳ぐらいの)女の子だったけど、パンフレットなど読むと、この一菜ちゃん、まさに「あみ子」を彷彿とさせられる、天真爛漫な型破りの子…
先週観た『私、あなた、彼、彼女』(1974)の翌年に撮られた作品で、シャンタル・アケルマンの代表作とされる作品。主演はデルフィーヌ・セイリグで、この200分に及ぶ作品で、彼女はさいしょから最後まで、ほぼ「出ずっぱり」である。というかこの作品、そのデ…
わたしが、シャンタル・アケルマンという映像作家のことを意識するようになったのはけっこう最近のことで、それはつまりは2年前に、『ONE DAY PINA ASKED... / ある日、ピナが…』という1983年の彼女の作品をネット配信で観てから、ということになる。 実は…
濱口竜介監督の作品は、前にサブスクで『寝ても覚めても』という作品を観ているが、実はこれっぽっちも記憶していない。ただ、黒沢清監督の『スパイの妻』の脚本がこの人だったということで、その作品に映画として感銘を受けたこともあって、(その「脚本」…
実はこの作品のことを調べていて、「製作総指揮」のジャン=ピエール・ラッサムという人物のことを知った。この人物、ゴダールがアンヌ=マリー・ミエヴィルととも設立した「ソニマージュ」の共同製作者として、巨額の資金を調達し、この「非=商業時代」の…
映画はいきなり、若者たちが集まる討論集会のような場面から始まり、まるでこの映画より10年近く前の「五月革命」みたいな雰囲気。若者たちの政治意識がテーマになっているようでもあって、まさかブレッソンがこんな政治的映画を撮るとは思わなかったし、…
ロベール・ブレッソン初のカラー作品であり、ドミニク・サンダのスクリーン・デビュー作。 原作はドストエフスキーなのだが、実はこの邦訳は『白夜』とカップリングされて文庫本で出ている。その『白夜』はヴィスコンティの映画が有名だけれども、ロベール・…
映画というものが映画監督の「夢」の具現化だとしたら、これほど見事な映画作品もないと思った。「映画を観た」というより、まさに「映画を体験した」という感じではあり、これはわたし自身のみた夢なのではなかったか、という感覚も生まれた。 ヒロインはあ…
ついに日本でも、あのフランク・ザッパの伝記ドキュメンタリー映画が公開された。観に行かないわけにはいかない! 実はわたしはちょっとばかり年季の入った「ザッパ・フリーク」で、わたしが高校生のときにリリースされたフランク・ザッパとマザーズ・オブ・…
ミュージカルである。「ロック・オペラ」ともいわれているようで、つまりほぼすべてのセリフが「スパークス」による楽曲にのせて歌われる。 映画の冒頭はレコーディング・スタジオで、ミキシング・ルームにいるレオス・カラックスが、自分の後ろにいた娘に「…
「お二人は、いつ出会われたのですか?」 「‥‥だから、兄弟だっちゅーの!」 な~んていう楽しいやり取りから始まる映画、実にテンポよく、アニメーションや過去の映像を駆使し、そしていろんなミュージシャンやファンら(その中にはエドガー・ライト監督の…
日記に書いたように、わたしは数日前に、この原作から1947年に映画化された同じタイトルの『Nightmare Alley』(日本公開時は『悪魔の往く道』という邦題)をYouTubeで観ている。ただし英語字幕について行けなかったので、細かい展開はわかっていない(そも…
アイルランド(ベルファスト)が舞台で、映画もモノクロだというので、てっきりケン・ローチ監督の作品かと思ってしまっていたのだが、これはケネス・ブラナーの自伝的作品なのだった。じっさい、Wikipediaでケネス・ブラナーのことを調べると彼はベルファス…
長いタイトルだけれども、これはつまり、こういうタイトルの雑誌なのであり、この映画はイコールその雑誌なのである。「カンザス・イヴニング・サン」というアメリカの架空の新聞社が、フランスの架空の町「アンニュイなんとか」というところに編集部を置い…
40分ほどの<短篇>3篇による作品で、濱口監督は同趣向の<短篇>を計7篇、つまりあと4篇の準備ができているという。 ここでの3篇は、「魔法(よりもっと不確か)」「扉は開けたままで」「もう一度」。 どのドラマも物語の主体は女性にあり、そういう意…
これは、「ウッドストック」の行われた同じ1969年の夏に、ニューヨークの公園で開催された「Harlem Cultural Festival」というイヴェントの記録映像。一夜のイヴェントではなく、6月29日から8月24日までの日曜日の午後3時にハーレムのマウント・モリス・パー…
この映画は、2018年にリリースされたデヴィッド・バーンのアルバム「American Utopia」に基づくブロードウェイ公演の記録ということで、2019年のことだったらしい。あやうくCOVID-19禍に呑み込まれるところだったが、こうやってこのステキな公演が記録された…
わたしとしては、まずは近年傍役ばかりであまりフィーチャーされないウィレム・デフォーがたっぷりと拝める、という気分で観ることを選んだ作品。 監督はロバート・エガースという人で、2015年に『ウィッチ』という作品で監督デビュー。この作品が2作目だと…
フランシス・マクドーマンドが主演してまたまた今年のアカデミー賞の「主演女優賞」を受賞したということ(これで3回目?)、そのアカデミー賞で「作品賞」と「監督賞」を受賞した作品だということ、監督のクロエ・ジャオは中国生まれの中国人だということ…
こうやって本編を観る前に予告を観たり、黒沢監督や主演二人のインタヴューを観たりもしていたのだけれども、これはまったく予想外の作品だった。脚本は先日観た『寝ても覚めても』で脚本と監督をやっていた濱口竜介と、野原位という人物。もちろん黒沢清監…
森達也監督の作品、『A』や『A2』も観ていると思うのだけれども、あいにくと(病気のため)記憶には何も残っていない。ただ、先年の『FAKE』のことは記憶にある。そんな『FAKE』の記憶からこの作品のことを書きたい気になる。 『FAKE』は、「真」と「偽」を…
カンヌ国際映画祭で「パルムドール」を受賞した作品。監督は韓国のポン・ジュノ監督なのだけれども、わたしには彼の監督した映画の記憶はまるでない。観ていないということはないと思うのだけれども、作風など、まるでわからない。この作品も、とにかくは「…
「実話」の映画化ということだけれども、コーンウォールの船乗りたち(漁師・警備艇、救命艇の乗組員ら)「Fisherman's Friends」が大手レコード会社(Universal Music)と契約し、2010年にそのファースト・アルバムがみごとに売り上げトップ10入りし…