映画
つげ義春はわたしの若い頃から大ファンだった漫画家(作家)で、その作品はだいたいすべて読んでいるはずなのだけれども、わたしの記憶障害のこともあり、今ではほとんど思い出せないでいる。「ねじ式」あたりまでの作品だったらある程度記憶しているところ…
2016年のアメリカ大統領選はトランプ氏が勝利した。フレデリック・ワイズマン監督はその結果を受けて、保守的な共和党支持者が多いインディアナ州の農業の町モンロヴィアを題材に選んだのだった。 インディアナ州は地理的には五大湖のひとつミシガン湖の南に…
アメリカの「社会的ドキュメンタリー」の巨匠、フレデリック・ワイズマン監督による、彼のドキュメンタリー第一作。 ここで撮影を担当しているジョン・マーシャルという人は彼自身人類学者であり、カラハリ砂漠のジュホアンシ族を記録した有名な「The Hunter…
今は想田監督も住む岡山県瀬戸内市の牛窓(うしまど)の町。その瀬戸内海の南には小豆島があるという位置。ちょっとした観光地でもあるのだが、その町の海岸通りからすぐの石段を登ったところに「五香宮(ごこうぐう)」という、小さな神社がある。その境内…
石井岳龍監督は、けっこうわたしの好きな監督の一人だった。昔は「石井聰亙」という名だったけれども、まずは彼の『エンジェル・ダスト』(1994)にハマり、それからしばらくは彼の新作が公開されるたびに必ず映画館で観ていたものだった。今となってはわたし…
この作品は、第97回アカデミー賞の国際長編映画賞の日本代表作品に選出されているという。1回観た感じで、この作品ならアメリカでの受けはいいんじゃないかと思った。どうも国内の観客の評価は(想像した通り)イマイチのようだが、アカデミー賞受賞の可能…
ティム・バートンは大好きな監督だけれども、どうもこの21世紀に入ってから(つまりこの24年ぐらい)はわたしには「イマイチ」という作品がつづいていて、特に『アリス・イン・ワンダーランド』で打ちのめされてからは彼の作品を観る気も失せてしまって…
楽しみにしていた映画。出演者は荒川良々以外誰も知らなかったが(笑)。 映画を観る前についこの作品の映画評を読んでしまったのだが、その評では前半は黒沢清監督らしいホラー・ミステリー的な展開だけれども、後半は銃撃アクション映画となり、全体の構…
二回目の鑑賞。さいしょに観たあとに黒沢清監督のインタビューとかを読んだのだけれども、黒沢監督はこの作品のなかに「映画の中の三大怖いモノ」を詰め込んだのだ、ということなのだった。 その「映画の中の三大怖いモノ」というのは何だろう?と思ったのだ…
近年はNETFLIXとかの躍進から、有名監督の新作でもストリーミング配信でしか観られなかったりするようになっていると思うのだけれども、ここに新しいかたちの映像配信プラットフォーム「Roadstead」っうのが出来て、その第一回作品がこの黒沢清監督の『Chime…
アメリカ、イギリス、ポーランド三ヶ国の共同製作になる作品。アウシュヴィッツ収容所と塀を隔てただけの「隣」に住んだ、収容所長のルドルフ・ヘスとその家族との物語、というかその「日常」の恐ろしさ。 わたしはその収容所長がルドルフ・ヘスと聞いて、…
「コーエン兄弟」としてジョエル・コーエンと共同で映画を撮って来たイーサン・コーエンは、2018年の『バスターのバラード』を最後に「映画を撮ることはもうやめる」とかの話で、じっさいジョエル・コーエンは次の『マクベス』(2021)を単独で監督し、「あら…
2回目の鑑賞。今回観終わったあとにもういちど、この映画の大きな主題である「復讐」ということを考えてみた。 そもそもがこの映画、8歳の娘を殺されたというアルベールが、「犯人」を探り当てて復讐するのを、あとで知り合った小夜子(柴咲コウ)が手伝う…
黒沢清は久々にフランスで映画を撮る機会を得て、1998年に哀川翔、香川照之出演で撮ったVシネマ『蛇の道』(脚本:高橋洋)を、フランスを舞台としてリメイクすることを選んだ。 哀川翔の役を柴咲コウが演じ、香川照之の役はダミアン・ボナールが演じた。ス…
脚本と監督のフリーヌル・パルマソンはアイスランドの人で、映画の舞台はほとんどがアイスランド(冒頭でわずかにデンマークが舞台となるが)。主人公の牧師のルーカスはデンマーク人で、この映画はアイスランド、デンマーク、そしてフランスとスウェーデン…
(詳しくは「日記」の方に書いたが)わたしはどうも難聴気味らしく(この映画を観てわかった)、セリフがしかと聴き取れなかったもので、しっかりと映画を了解していない部分もあるだろうが、わたしはタイトルの「悪は存在しない」というのは、その前に(自…
今年になってから、この「名作」の4Kリストア版が国内で公開され始め、ようやくウチのとなり駅の映画館でも上映が始まった。それでわたしも、30年ぶりぐらいにこの映画を観たのだった。 う~ん、やっぱり映画館の外の寒さを忘れて、熱くなってしまった。ま…
ヴィクトル・エリセの新作『瞳をとじて』が公開されたもので、彼の旧作『ミツバチのささやき』、『エル・スール』とが劇場で再公開された(『マルメロの陽光』の上映はなかった)。わたしは両作品とも観ていたが、『ミツバチのささやき』の方はなんとなく記…
ある年の10月12日の深夜3時、ある家でオールナイトで開かれていたパーティーから、女子大生のクララは「ウチへ帰る」と会場をあとにする。帰り道、公園のそばで男がクララに近づき、彼女にガソリンをぶっかけ、ライターで火をつける。 彼女の焼死体は翌朝発…
二回目の鑑賞。わたしは前回、自分自身の記憶障害とこの作品とをあまりに関連付けて観ようとしてしまい、いささか道に迷ってしまったのだったが、今回はさいしょのときのそのような先入観を捨て、もっとストレートに観ることにしたのだった。 ただ、いちど観…
わたしはまず、この作品のポスターのイメージに惹かれた。「雪の上に血を流して倒れている人物を見つめる人物」というイメージは、『ウィンド・リバー』という作品でも用いられていたし、古くは『ファーゴ』にもそういうイメージがあったと思う。どちらの作…
83歳のヴィクトル・エリセ監督、『マルメロの陽光』以来31年ぶりになる、彼の長編第4作。観る前の予備知識で、「記憶喪失に陥った男(俳優)」の話ということを知っていたので、記憶障害を抱えたわたしとしては、そんな心の準備をしてこの作品を観たのだっ…
わたしは当初、この作品のことはその内容もわからなかったし、ただタイトルから『風立ちぬ』みたいな作品かと思っていて、「それなら観なくってもいいや」というつもりだったのだが、実はこの作品が海外で公開されるときのタイトルが「The Boy and The Heron…
わたしは1970年代の頃のヴェンダース監督の作品を愛おしく思い出すことができるが(このあたりの、ロビー・ミューラー撮影になる作品群は去年の3月にまとめて観たもので、まだ記憶が消えずにけっこう憶えている)、実はそれ以降のヴェンダース作品はそれほ…
わたしもカウリスマキの作品は好きだからだいたい全部観ていると思うけれども、例によって(このことを毎回書くのも恥ずかしいが)その内容はほとんど記憶していない。今日この映画を観た映画館では、この『枯れ葉』公開を記念して、来週からはカウリスマキ…
「パトリシア・ハイスミスとは、いったいどんな人物だったのか?」という問いかけの、その答えの一端でも見出せればという気もちでこの映画を観た。 わたしは(そのほとんどを忘れてしまっているとはいえ)パトリシア・ハイスミスの作品はいちおう、邦訳され…
というわけで、2回目の鑑賞。そもそも日記に書いたように、先に通常上映でこの作品を観たときにあまりにもサウンドトラックの音量が小さく、「もっと音量が大きければもっと迫力を感じられたことだろうに」と感じたことから、この2回目の鑑賞になったわけ…
観る前から予想はしていたが、パトリシア・ハイスミスの著作を年代的に紹介しながら彼女の私生活を追っていくような展開ではなく、彼女の著作で紹介されるのはデビュー作の『見知らぬ乗客』、それと『トム・リプリー・シリーズ』、そしてもちろん『キャロル…
12月になって、この新作ゴジラ映画がアメリカでもかなり大規模に(字幕付きで)一般公開され、観客動員数も相当なものだったというし、何よりもアメリカの有名な映画評サイト「Rotten Tomatoes」で批評家レビューは97パーセント、一般レビュー(千件以上のレ…
そもそもの原作はフランスのグラフィック・ノヴェルということで、そこから『セヴン』の脚本家アンドリュー・ケヴィン・ウォーカーが脚本を手掛けた。 マイケル・ファスベンダー(冒頭からラストまで、まさに「出ずっぱり」)演ずる雇われ殺し屋が依頼された…