ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『Lifetime クリスチャン・ボルタンスキー』@乃木坂・新国立美術館

     f:id:crosstalk:20190831154136j:plain:w500

 ボルタンスキーの作品というのは、観ているようでちゃんと観てはいない。今回の展示はもちろん会場に合わせた新作インスタレーションもあり、同時に今までの彼の活動を総括する「回顧展」という性格も合わせ持つというから、やはり観ておきたい展覧会ではあった。

 会場に入ろうとすると、その入り口壁面の上部の「DEPART」との青いLED電球で書かれた文字が観客を迎え入れる。入ってすぐの2点の映像作品、そのあとの3点ほどの粘土による作品は、この展覧会トータルな作品群の中では彼の初期の作品ということでちょっと異質ではあるのだけれども、通底するトーンというのは感じられるし、「これから<異世界>へ足を踏み入れるのだ」という導入部の役を果たしている。特に粘土の作品は「記憶」の問題へのこだわりとして、以後のアウシュヴィッツの犠牲者の写真を使った作品へと連なって行くようだ。
 そのあとにつづく、冥界をさまよわせられるような展示世界は、まさに人の生と死を超越したような世界で、わたしはまるでダンテの『神曲』の中にはまり込んでしまったような感覚を味わった。

     f:id:crosstalk:20190831150948j:plain:w500

 進んでいくと、ぱっと明るい開けた展示室があり、それは三面のスクリーンに映像を映す「ミステリオス」という作品。パタゴニアで撮影されたという映像は静止しているようでいたがヴィデオ作品で、左の面には陸に打ち上げられたクジラの骨格が映されている。中央に映っているラッパみたいなオブジェ(ポスターやチラシにこのオブジェが写されている)で、ボルタンスキーはクジラとのコミュニケーションを試みたのだという。実はわたしは、この作品が好きだ。

     f:id:crosstalk:20190831151427j:plain:w500

 展示が終わり、出口の上にはこんどは赤いLEDで「ARRIVEE」の文字が。わたしは到着した。