ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

濱口竜介短篇集『偶然と想像』濱口竜介:脚本・監督

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 40分ほどの<短篇>3篇による作品で、濱口監督は同趣向の<短篇>を計7篇、つまりあと4篇の準備ができているという。
 ここでの3篇は、「魔法(よりもっと不確か)」「扉は開けたままで」「もう一度」。
 どのドラマも物語の主体は女性にあり、そういう意味では「女性映画」と呼びたくなってしまう(そんな呼称があるのかどうか、また、そんな呼称を使っていいのか?)。

 「魔法(よりもっと不確か)」は、見事なまでに女性二人の「恋のさや当て」の話で、「扉は開けたままで」は年長の男性を「ハニートラップ」にひっかけようとする女性(失敗するらしいのだが)。「もう一度」は、二十年ぶりの高校の同窓会に出席するために故郷に帰った女性が、駅前でかつての同窓生と思う女性とすれ違う(彼女にはLGBT的気性があり、その同窓生に惹かれていた)。相手も反応してしばらく話をし、その女性の家に招かれもするのだけれども、実は「別人」だったとわかる。

 今、この映画のことを細かく書いている時間がないのだけれども、とにかくは「シリアスな映画」かと思って観始めていたらそういうものではなく、「そりゃあおかしいや」と、観ていて声を上げて笑ってしまう場面が続出するのだった。まあそれは「コメディ」として演出しているわけではないけれども。

 映像として興味深いところのたくさんある作品で、ひとつには「室内」というものを正面からとらえた演出の妙。わたしは観ながらどこか、小津安二郎映画の空間のことを考えてもいた。特に「扉は開けたままで」(タイトルからして部屋の空間のことだ)、そして「もう一度」。
 それから、都会の駅前の空間のとらえかた。「魔法」ではラストの渋谷の風景が印象的だし、「もう一度」では仙台駅前のコンコースが心に残る。

 濱口監督はまさに「今注目の監督」というか、わたしは濱口監督が黒沢清監督の『スパイの妻』の脚本に協力していることでこの監督の名前を心にとめることにもなったのだけれども、まあ、もうちょっと体調を整えて、この監督の、3時間を超える『ドライブ・マイ・カー』にも挑戦してみたいとは思う。