ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

Book

『ベンドシニスター』ウラジーミル・ナボコフ:著 加藤光也:訳

ベンドシニスター (Lettres)作者:ウラジーミル ナボコフみすず書房/東アジア出版人会議Amazon 1947年に刊行された、ナボコフ2作目の英語による長編小説で(ナボコフ全体では11作目)、ナボコフがアメリカに渡ってから初めての作品。ナボコフの中でこの作…

『ヴェネツィアで消えた男』パトリシア・ハイスミス:著 富永和子:訳

ヴェネツィアで消えた男 (扶桑社ミステリー)作者:パトリシア ハイスミス扶桑社Amazon イタリア(ヴェネツィア)が舞台である(タイトルでわかるって!)。主人公のレイはアメリカの裕福な家庭の生まれで、将来画廊と持ちたいとヨーロッパの作家(画家)を探…

『断頭台への招待』ウラジーミル・ナボコフ:著 富士川義之:訳

世界の文学〈8〉ナボコフ (1977年)キング、クィーンそしてジャック 断頭台への招待作者:ナボコフAmazon 亡命ナボコフのパリ時代、「シーリン」のペンネームで1938年に発表された作品(当然、ロシア語による作品)。この作品の次は『賜物』で、1940年にはアメ…

『サスペンス小説の書き方 パトリシア・ハイスミスの創作講座』パトリシア・ハイスミス:著 坪野圭介:訳

サスペンス小説の書き方 パトリシア・ハイスミスの創作講座作者:パトリシア・ハイスミスフィルムアート社Amazon 原題は「Plotting and Writing Suspence Fiction」で、さいしょにこの本が刊行されたのは1966年のことらしく、パトリシア・ハイスミスのキャリ…

『商業美術家の逆襲 もうひとつの日本美術史』山下裕二:著

商業美術家の逆襲: もうひとつの日本美術史 (NHK出版新書 666)作者:山下 裕二NHK出版Amazon 実はつい昨日まで、竹橋の東京国立近代美術館で『没後50年 鏑木清方展』が開催されていたのだけれども、その鏑木清方も、この本でかなり大きく取り上げられている。…

『扉の向こう側』パトリシア・ハイスミス:著 岡田葉子:訳

扉の向こう側 (扶桑社ミステリー)作者:パトリシア ハイスミス扶桑社Amazon ハイスミス1983年の作品で、彼女の後期の作品がけっこうそうであるように、「ミステリー」とか「サスペンス」というような作品ではない。彼女の著作一覧をみると、この『扉の向こう…

『ロシア文学講義』ウラジーミル・ナボコフ:著 小笠原豊樹:訳

ロシア文学講義作者:ウラジーミル ナボコフ阪急コミュニケーションズAmazon 1920年にソヴィエトロシアから西欧に亡命したナボコフは、まずはベルリン、のちにパリで執筆活動を継続するけれども、ナチスドイツの抬頭からの危機感から1940年にアメリカに渡る。…

『成城だよりⅢ』大岡昇平:著

成城だよりIII (中公文庫)作者:大岡 昇平中央公論新社Amazon 雑誌「文學界」の1985年3月号から1986年2月号まで連載されたもので、内容は1985年1月から12月までの「日記」。大岡氏75歳から76歳にかけての日記であられる。 この時期に大岡氏は『堺港攘夷始末』…

『水の墓碑銘』パトリシア・ハイスミス:著 柿沼瑛子:訳

水の墓碑銘 (河出文庫)作者:パトリシア・ハイスミス河出書房新社Amazon 1957年発表の、パトリシア・ハイスミスの長篇第5作(ただし、第2作『キャロル』はいわゆる「ミステリー」ではなく、ハイスミス名義での発表ではなかったが)。この前作は1955年の『太…

『成城だよりⅡ』大岡昇平:著

成城だよりⅡ (中公文庫)作者:大岡 昇平中央公論新社Amazon 雑誌「文學界」の1982年3月号から1983年2月号まで連載されたもので、内容は1982年1月から12月までの「日記」。単純に考えて、40年前に書かれた日記だ。大岡氏はこのとき72歳から73歳だったことにな…

『映画の授業 映画美学校の教室から』黒沢清 他:著

映画の授業―映画美学校の教室から作者:黒沢 清青土社Amazon この本は、「映画美学校」で行われた講義のレジュメや資料、講義をもとに作成されたもの。主な章分けと著者は以下の通り。 ・はじめに 黒沢清 ・脚本 高橋洋 塩田明彦 ・演出 黒沢清 万田邦敏 塩田…

『日時計』シャーリイ・ジャクスン:著 渡辺庸子:訳

日時計作者:シャーリイ・ジャクスン文遊社Amazon 1958年発表の、シャーリイ・ジャクスンの長篇小説第4作。このあとは『山荘綺談』、『ずっとお城で暮らしてる』と、「(世界から隔離された)屋敷モノ」がつづくけれども、この『日時計』もまた「(世界から…

『成城だより 付・作家の日記』大岡昇平:著

成城だより-付・作家の日記 (中公文庫)作者:大岡 昇平中央公論新社Amazon 「成城だより」は1979年11月から1980年10月までの日記で、「文学界」1980年1月号から12月号まで連載された。「作家の日記」は1957年11月から1958年4月までのもので、「新潮」の1958年…

『鳥の巣』シャーリイ・ジャクスン:著 北川依子:訳

鳥の巣 (DALKEY ARCHIVE)作者:シャーリイ・ジャクスン国書刊行会Amazon エリザベス・リッチモンドは内気でおとなしい23歳、友もなく親もなく、博物館での退屈な仕事を日々こなしながら、偏屈で口うるさい叔母と暮らしていた。ある日、止まらない頭痛と奇妙な…

『鳥の生活』マイケル・ブライト:著 丸武志:訳

原題は「The Private Life of Birds」。著者のマイケル・ブライトは、イギリスのBBC放送の自然史部門の主任プロデューサーで、数多くの自然ドキュメンタリー番組を制作する人物。 この翻訳が出版されたのは1997年と今から25年も前のものなので、データ的…

『市(まち)の人々』トマス・ハーディ:著 森村豊:訳(ハーディ短篇集『月下の惨劇』より)

原題は「Fellow-Townsmen」。 とは言っても、このストーリーの中心人物はバーネットという裕福な男で、バーネットの友人でそこまで豊かではないダウンという男と、ルゥシィという女性とがここにからむ。 当初バーネットには裕福な家系の別の夫人がいたが、関…

『野心家二人の悲劇』トマス・ハーディ:著 森村豊:訳(ハーディ短篇集『月下の惨劇』より)

原題は「A Tragedy of Two Ambitions」。 ジョシュアとコーネリアスのハルバラァ兄弟は神父、神学者を目指す勉学熱心な兄弟で、順調に上昇機運に乗って出世街道をばく進しておる。ちょっと年下の妹のローザも美しく成長しそうだ。ひとつだけ、兄弟の頭痛のタ…

『變わり果てた男』トマス・ハーディ:著 森村豊:訳(ハーディ短篇集『月下の惨劇』より)

『遥か群衆を離れて』でもそういうところがあったけれども、かつてのイギリスではそれなりの地位にある軍人こそ女性たちのあこがれの的ではあったし、それこそ女性の前で剣を振り上げて剣舞を見せただけで、女性なんかみ~んなイチコロなのだった(らしい)…

『呪はれし腕』トマス・ハーディ:著 森村豊:訳(ハーディ短篇集『月下の惨劇』より)

そのあたりの大きな農家の主人ロッヂは、若い嫁をもらうという噂があたりの小作人、牛の乳しぼり場に働く人たちのあいだに拡がった。中でも乳しぼりに従事するローダは人一倍、その新しい嫁に興味を抱いていた。ローダは夫はいないが若い男の子の家族があっ…

『見知らぬ三人の男』トマス・ハーディ:著 森村豊:訳(ハーディ短篇集『月下の惨劇』より)

トマス・ハーディは、わたしがテレンス・スタンプ出演ゆえに買ったDVD『遥か群衆を離れて』の原作者。他にも『テス』だとか『日陰者ジュード』などの作品は著名で、わたしもそのタイトルぐらいは知っている。 今回は、岩波文庫の「リクエスト復刊」による…

『風に吹かれて』(1979) パトリシア・ハイスミス:著

風に吹かれて (扶桑社ミステリー)作者:パトリシア ハイスミス扶桑社Amazon 原題は「Slowly, Slowly in the Wind」で、1974年から1979年のあいだに書かれた12編の短篇を集めたもの。日本では1992年にわたしが読んだ文庫本として刊行されたが、それまでに半…

『金井姉妹のマッド・ティーパーティーへようこそ』(2021) 金井久美子・金井美恵子:(ホステス?)

鼎談集-金井姉妹のマッド・ティーパ-ティーへようこそ (単行本)作者:金井 久美子,金井 美恵子中央公論新社Amazon この本(鼎談集)は、かつて1979年から1981年にかけて、雑誌「話の特集」に不定期連載されていたモノ。それがどういう経緯でかは知らないけれ…

『小説の森散策』(1994) ウンベルト・エーコ:著 和田忠彦:訳

ウンベルト・エーコ 小説の森散策 (岩波文庫)作者:ウンベルト・エーコ岩波書店Amazon この書物は、1992年から93年にウンベルト・エーコがハーヴァード大学で6回連続して行った講義の草稿記録という。内容はそこまで<専門的>というわけでもなく、別に大学…

『贋作』(1970) パトリシア・ハイスミス:著 上田公子:訳

贋作 (河出文庫)作者:パトリシア・ハイスミス河出書房新社Amazon 主人公は詐欺師のトム・リプリーで、パトリシア・ハイスミスが1955年に書いて1960年にアラン・ドロン主演でルネ・クレマン監督によって映画化されて大ヒットした、『太陽がいっぱい(The Talen…

『絞首人』シャーリイ・ジャクスン:著 佐々田雅子:訳

絞首人作者:シャーリイ・ジャクスン文遊社Amazon 1951年に発表されたシャーリイ・ジャクスンの長編第二作で、原題は「Hangsaman」。シャーリイ・ジャクスンの長編作品を読むのは、今までに『山荘綺談(たたり)』、『ずっとお城で暮らしてる』につづいてこれ…

『ゴルフコースの人魚たち』パトリシア・ハイスミス:著 森田義信:訳

この短編集は1993年に刊行された、おそらくパトリシア・ハイスミス自身が内容もタイトルも決めて刊行した、生前さいごの短篇集だと思われる。全11篇、いちいちの感想はそれぞれ読んだ日の日記に書いたけれども、その原題と邦訳タイトルを並べておきましょう…

『なんでもない一日』シャーリイ・ジャクスン:著 市田泉:訳

なんでもない一日 シャーリイ・ジャクスン短編集 (創元推理文庫)作者:シャーリイ・ジャクスン東京創元社Amazon シャーリイ・ジャクスンは、1965年に48歳で亡くなられているのだけれども、それから30年ぐらいたって彼女の未発表原稿が何篇か発見されたという…

『月 人との豊かなかかわりの歴史』ベアント・ブルンナー:著 山川純子:訳

月: 人との豊かなかかわりの歴史作者:ベアント ブルンナー白水社Amazon 前に読んだ『水族館の歴史』の著者と同じ翻訳者による、今度は「月」と人間とのかかわりの歴史をとらえた本。一種博識な著者による、科学的・文化的エッセイといえる。 昨夜の「月蝕」…

『オーデュボンの自然誌』スコット・R・サンダース:編 西郷容子:訳

この本は、オーデュボンが書いた文章のアンソロジーであり、主に『鳥類の生態』から抜粋された鳥をテーマにした文章、その間にはさみ込まれた「冒険譚」のようなエッセイ、そして最後にオーデュボンの日誌、手紙からの抜粋で成り立っている。そこからはまさ…

『オーデュボン伝 野鳥を描きつづけた生涯』コンスタンス・ルーアク:著 大西直樹:訳

オーデュボン伝―野鳥を描きつづけた生涯作者:コンスタンス ルーアク平凡社Amazon この、1993年に国内で刊行された翻訳書、いちばん素晴らしいのはカヴァー表紙のオーデュボンによる「卵を守るチャイロツグミモドキ」の見事な絵なのだが、正直言って何とか通…