ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『鳥の生活』マイケル・ブライト:著 丸武志:訳

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 原題は「The Private Life of Birds」。著者のマイケル・ブライトは、イギリスのBBC放送の自然史部門の主任プロデューサーで、数多くの自然ドキュメンタリー番組を制作する人物。
 この翻訳が出版されたのは1997年と今から25年も前のものなので、データ的にもその後の研究結果などからも、今では古くなってしまったところもあるだろう(原書の刊行は1993年で、この翻訳が出た時点ですでにその後の研究とのずれもあり、そのことは「あとがき」で触れられている)。
 
 原題の「Private」とは何ぞや? 鳥には「Official Life」というのもあるのか? とか考えてしまうけれども、そのあたりの英語のニュアンスはわたしにはよくわからない。わたしなどは、ただ「The Life of Birds」でもいいような気もするけれども、「Life」の意味を強調したのかもしれない。

 この本は、いわゆる鳥類の基本的特徴の記述から始まり、その性質としての「飛翔能力」「音感」「さえずりの意味」「視覚」「営巣~子育て」「狩猟」、そして「人間との関係」などの項目それぞれで、世界中の鳥類からの多くのものについてのその特徴、能力などを紹介する本。
 巻末に取り上げられた鳥類の名の索引が掲載されているが、1ページに30行3段、これが8ページあるので、30×3×8でだいたい700種の鳥のことが書かれているのだろうと思う。
 もちろん、ちょっとだけ名前が書かれているだけの鳥もあるけれども、何ページにもわたって書かれている鳥もある。

 さすがに、かのBBCのプロデューサーの筆になるというか、全体が鳥をテーマにしたドキュメンタリー映像のナレーションを読むような気分になれる。
 もちろん、そうするとこの本の欠点は「画像・映像がない」ということになり、画像は本の中央に30枚ぐらいのカラー写真が掲載されているだけで、本文中に写真やイラストなどはまったく掲載されていない。700種類も紹介されているかも、というところで30枚の写真はいかにも少ない。
 しかし、今わたしたちはコンピュータを手元に持っている。この本に出てくる鳥の名前をどれでもネットで検索してみると、(特にWikipediaで)その鳥の写真と、詳細な生態を見て読むことができるのだ。

 というか、今この本を読むならば、そのようにパソコンで本に出てくる鳥を検索しながら読むべきなのだ。
 例えば、この本の終わりの方には「コウヨウチョウ」という鳥のことが書かれている。アフリカのサハラ砂漠南部に棲息するこの鳥は、膨大な数の群れをつくって農地に集まり、収穫を無にしてしまうという。この本によると、この鳥の群れは数十~何百万になるという。本には「小さな鳥」だとぐらいにしか書かれていなくって、いったいどんな鳥なのかまったくわからないのだけれども、これが「コウヨウチョウ」で検索してみると、カラフルなスズメのようなかわいらしい鳥なのだ(被害を受ける人たちには「かわいらしい」などと言えないだろうけれども)。これはこの本の文章を読んだだけではまるで想像もできない。しかもWikipediaによると、この鳥は「世界で最も数の多い鳥」とされ、その数は成鳥だけでも推定15億羽いるという。被害を防ぐため、毎年約2億羽のコウヨウチョウが駆除されているというが、その数は一向に減らないのだという。

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 こういうのは、まずはこの『鳥の生活』でその鳥のことを知り、さらにパソコンで検索することでその画像を確認でき、さらなる知識を得ることができると思う。それがこの本の活用法だろう。

 わたしはとにかくは最初のページから最後までいちおう読み通し、何十本ものドキュメンタリーを見たような気分をすっかり楽しんだのだけれども、実は画像は見ていないのだ。
 ここに書かれている鳥がどんな鳥なのか知るためにも、さらなるこの本以上の知識を得るためにも、ネットとリンクさせて読み進めることでこの本の面白さは何倍にもなるだろうと思う。
 特に無理して通して読む必要もなく、ある鳥に関しての記述をこの本で集中して読んで、それをさらにネットで検索していけばいいだろう。
 データ量の豊富な本でもあり、いちど読んだからと言って了解しきれないところも膨大だ。まさに「再読」を即される本というか、わたしはこれから空いた時間とかに少しずつ、二度目の読書に挑むつもりである。