ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『MINAMATA-ミナマタ-』(2020) アンドリュー・レヴィタス:監督

 写真家のユージン・スミスと、彼の妻となるアイリーンとの、水俣の取材をメインにとらえた作品。ユージン・スミスを演じたジョニー・デップはプロデューサーも務めている。アイリーンを演じるのは美波。また、「LIFE」の編集長のロバート・ヘイズ役でビル・ナイも出演しているけれども、ラストのクレジットを見ると、ビル・ナイもまたこの映画のアソシエイト・プロデューサーを務められていたのだった。

 わたしはこの映画を観るまで、ユージン・スミスがかなりの酒びたり生活をしていて、実は金銭的にも困窮していたなどということは知らなかった(この映画には多くのフィクションが含まれており、「実際はどうだったのか」ということを知るには映画から離れて調べてみなければならなかった)。
 じっさい、水俣での取材の成果(アイリーンとの共書)「Minamata, Words and Photographs」を印税総額10万ドル、前払い3万ドルという破格の契約で出版するまで、彼の困窮状態はつづいていたらしい。
 この「Minamata, Words and Photographs」は評判を呼び、特にその中の1枚の写真「Tomoko and Mother in the Bath」は「報道写真の傑作」として世界中に知られたわけだった。もちろん、この写真によってわたしもユージン・スミスという写真家を知ったわけではあった。

 この映画の中でも、その写真を撮る場面がひとつのクライマックスになっている。映画ではこの写真を撮影したのはスミスがチッソ社の人間に暴行を加えられたあとのことにしているが、それは事実ではない。
 ただ、ユージン・スミス自身、「水俣病の悲劇を伝える象徴的な1枚」というのを求めていて、そのとき取材を通して懇意にしていた、罹患者智子の母親に、智子の写真を撮らせてもらえないものかと話したが、母親はそのことを承諾し、自ら智子の変形した身体を写すために「わたしが智子を風呂に入れるところを撮ってくれ」と持ちかけたらしい。

 そのように、映画では事実関係の時系列が事実と異なるところもあるし、映画で水俣病罹患者でスミスの助手になるキヨシ(加瀬亮)など、事実は罹患者ではないし、水俣のスミスのアトリエが放火されるのは事実ではない。
 映画を盛り上げるためにある程度脚色するのはよくあることだろうけれども、少しばかり「やりすぎ」ではなかったかな、とは思ってしまう映画ではあった。

 しかし、映画が始まってユージン・スミスらが水俣に到着してからの撮影は美しく、チッソ工場内の撮影にしてもすばらしいモノだったと思った。撮影監督はブノワ・ドゥロームというフランスの人で、古くは『青いパパイヤの香り』などの撮影を担当された方ではあった。
 そしてやはりジョニー・デップの演技も賞賛されるべきもので、わたしは(メイクのせいもあるだろうが)それがジョニー・デップだとなかなか認知出来なかったし、ある程度やさぐれながらも熱意を持って「ミナマタ」に迫る姿は胸に迫った。わたしは近年のジョニー・デップの出演作というのはまるで観ていなかったけれども、「やはりいい役者さんだなあ」とは思ったのだった。