ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ジュラシック・パーク』(1993) マイケル・クライトン:原作 スティーヴン・スピルバーグ:監督

 まあ「怪獣映画」ではないだろうが、怪獣の原型となった恐竜が現代によみがえった映画として、エポックメイキングな作品だろうか。しかし観てみると「南海の孤島に有史以前のジュラ紀の動物が生きている(というか再創造して生かす)」という設定で、その「南海の孤島」(おっと、この作品では「大西洋の孤島」という設定なのだろうか?)というのはつまり、『キングコング』にも共通する設定で、ひとつ今わたしが追及している「怪獣映画とは何か?」ということの原型でもあると思った。
 実は人間が生み出したクローン生物(だったかな?)を海の無人島で飼育(?)するというのは、つまりは『キングコング』の「髑髏島」みたいなものであろう。それをこの作品では、客を島に招いて見せるという「アミューズメント・パーク」として興行しようというのだ(この「ジュラシック・パーク」を創造したオーナーは、元は「蚤のサーカス」の興行主だったというのがおかしい)。

 映画はそんなクローン生物の創造過程から描くのではなく、もう映画が始まったときにはそんな「恐竜の住む島」は出来てしまっている。で、このオーナーのジョン・ハモンドリチャード・アッテンボロー)は、開業間近に迫ったその「ジェラシック・パーク」の安全性を保障してもらうために、3人の科学者に現地検分してもらうことを依頼することから始まる。3人とは古生物学者のグラント(サム・ニール)、古代植物学(なぜこの学問に携わる学者が必要なのかわからんが)のエリー(ローラ・ダーン)、そして数学者(これもなぜ?という感じ)のイアン(ジェフ・ゴールドブラム)という顔ぶれで、ついでに言えばグラントとエリーは恋人同士ではあった。
 そんでもってこの3人とオーナー、そしてなぜか物見遊山気分のオーナーの孫の姉弟2人、そして弁護士やボディガードなどとでその「ジュラシック・パーク」の島を訪れるのだった。

 この映画の本来の感想を書く前に、わたしが以前から抱いている「根本的な疑問」を書いておきたいのだが、この映画では大昔に恐竜類から血を吸った蚊が琥珀に閉じ込められていたのを発掘、その蚊の体内から蚊が吸った恐竜の血を取り出し、そのDNAから「クローン」を産み出したということなのだが、あの巨大な恐竜類の、いかにも分厚そうな皮膚に小さな蚊がとまって、はたしてその血を吸うことが出来るものだろうかね?とは思うのである。わたしはそういうあたりのことはわからないけれど、素人考えで「そりゃああり得ないだろう」という気はする。はたして、サイが蚊に刺されたりするだろうか? そんなことよりも、科学が発達して、古生物の化石の骨からDNAを抽出することに成功した、とでもした方がよっぽど明解だったようには思うのだが。

 そのことは置いておいて、映画の感想。
 ‥‥いったいどうして皆が皆(特に2人の姉弟)、わざわざ恐竜を呼び寄せるようなおバカな行動をするのだろう? このことが、いっちばん大きなこの映画への「疑問」ではある。なんだかラッキーな展開でたいていの登場人物は生き残れるが、これだけバカな行為をやっていれば、この映画の中で彼ら、彼女らはそれぞれ2~3回ずつは恐竜らのえじきにされてしまったことだろう。観ていてもイライラしてしまう展開が多すぎる(特に2人の姉弟)。それがスピルバーグの演出方策なのかもしれないが。
 そして島の中で孫の姉弟が行方不明になっているときに(もちろん、生命の危機でもある)、オーナーのジョンは指令室かなんかでのんびり椅子に座り、アイスクリームを食べながら「溶けかけてる」な~んてのんきなことをのたまっているのである。これも「このジジイ、何?」って感じではあった。わたしにはこういうのは「映画」ではない。

 それでも、わたしがこの映画の中でいちばん「カッコいい」と思って応援したのは、おそらくボディガード役だったのではないかと思えるマルドゥーン(ボブ・ペック)という人物で、彼こそはこのような「人を襲う野獣にあふれる密林」での「有能な」ハンターっぽかったのだが、残念なことに、彼をして「かしこいヤツだな」と言わしめた恐竜にやられてしまうのだった。残念(このボブ・ペックという役者さんは「いいな」と思って調べたのだが、これも残念なことにこの映画の数年後に亡くなられてしまったようだった。残念)。

 スピルバーグ監督としては、こうして今から30年も前にCGを駆使した映像を創出したということで、やはり褒めたたえられなくってはならないだろうとは思う。ただ、やはり「人間」の深みを表現するためには、ただただその場のサスペンスフルな演出をするだけでなく、脚本を査定・改編してでも、登場人物の行動を吟味すべきだろうとは思った。