ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『団地妻 不倫でラブラブ』(2000) 小林政広:脚本 サトウトシキ:監督

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 3組のカップルのそれぞれの、一夜のストーリーというか。タイトルにこそ「団地妻」とあるのだが、その団地でとなり同士の奥さん二人はこの作品のあいだはずっと温泉旅館に行っていて、団地に残っているのはその旦那さん二人である。「団地旦那」、「団地夫」という方が正しいような作品だ。

 その団地のある世帯で、朝に夫が目覚めると妻がいない。手紙が残されていて、となりの奥さんと温泉に行くのだと書かれている。夫はそのとなりの部屋に行き、「ウチの妻とオタクの妻とが温泉旅行に行っちゃったみたいだ」と告げる。「妻同士が仲良くやるんだったら、ボクたちも<ホモだち>になりませんか?」ってとんでもないことを持ちかけるが、けっきょく二人はそういう関係になるのだ。
 ひなびた温泉旅館に行った妻二人は、こちらはこちらでレズ的に関係を深めてしまう。その、絡んでいる二人を、また別のカップルが覗き見し、「すごいねえ」と。
 旅館には大きなプールのような温泉風呂があり、けっきょく4人で泳ぐのだ。
 覗き見していたカップルは、実は「婚約」しようかというところなのだが、男がタトゥーを入れているので、女の親に認められないのではないかと躊躇しているのだ。女はそんな男を「根性なし!」とか責めるが、けっきょくは女の親元に承諾を得に行くことにする。
 妻たち二人も一泊して団地に帰るのだが、その団地の外で、お互いの旦那がキスを交わしているところを目撃し、「ではわたしたちも」と、こちらの二人もキスをする。なんというか、そういう映画。

 つまり、これは「不倫」とはいえないようなもので、愛情のもつれというわけでもなく、妻たちも夫たちもそんなに「レズ」とか「ホモ」な関係に深入りしようとはしていないようだ。それは観ていても「そういうのもいいんじゃないの」みたいなもので、温泉のカップルにしてもそうだけれども、「愛欲」がどうのとかいう「濃い」ものでもないだろう。
 はっきり言えば「どうでもいい」みたいなものなのだけれども、まったくギスギスとすることもない、この作品のどこか「爽やか」な感覚は、心に残るものがある。

 一本の映画として、映像としてはけっこう見ごたえもある作品で、そのこともまた「心に残る」一因ではあっただろう。
 夫たちの関係を持つ「団地」の風景、その部屋と、妻たちが出かけて関係を持つ温泉旅館の周辺の風景、その温泉プール、そして部屋の感じとの対比が心地よく、特に旅館の部屋の黄色い照明と、けっこう意識的に青い照明を使われた団地の部屋とが効いていた。「青い照明」の部屋は、何というかデヴィッド・リンチ風でもあったような。

 心の片すみにしまい込んでおいて、それで時に思い出して「そんな映画があったなあ」ということでいいだろうというか、「そんな程度の作品だった」というのではなく、どこかほっこりとしまっておけば「いい感じ」の作品、だったような気がする。