ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『飛行士の妻』(1981) エリック・ロメール:脚本・監督

 この作品を撮ったとき、監督のエリック・ロメールは60歳とか61歳だったみたいだ。う~ん、若い! というか、ここまで監督自身と世代差のある「若者たち」の話を、まるで世代格差など感じさせずに撮ってしまうなんてすごいな!
 しかも「映画話法」(っていうの?)として、撮影の「カット割り」自体がストーリーをけん引して行く「力」にもなっているようで、感嘆してしまう。まさに「映画」の力、という感覚だ。

 舞台はパリ。主人公は大学生のフランソワくん。夜中に郵便局でバイトしてるので、陽が昇ってからは眠い。いつもいつも、ついつい「うとうと」と寝てしまうから楽しい。
 フランソワくんは年上のアンヌちゃんのことが好きで好きで、なのだけれども、アンヌちゃんはパイロットのクリスチャン(奥さんがいる)との不倫関係から抜け出せない。しかしそのクリスチャン、勤務地がパリに変わるので奥さんもパリに来てしまうわけで、前のように「勤務先で不倫」ということではなくなる(「スリル」がなくなるのだろう!)。それでアンヌちゃんとは別れることを決めたようだ。そういう事情はフランソワくんは知らないのだが、バイト明けの朝にアンヌちゃんのアパートに行ったとき、そのクリスチャンが出て来るのを見てしまう。
 フランソワくん、アンナちゃんと会ってケンカ。いろいろと事情を聞いて面白くないフランソワくんがカフェでぐだぐだやってると、同じカフェにそのクリスチャンが別の女を連れてやって来るのだ。何を思ったか(ヒマなのか?)フランソワくん、そのクリスチャンと連れの彼女を尾行しはじめる(きっと、その女はクリスチャンの奥さんなのだろう)。バスに乗ったクリスチャンら2人を追って同じバスに乗ると、そのフランソワくんの前にリュシーちゃんという女の子がいて、フランソワくんに「興味津々」なのだ。
 クリスチャンと彼女はどこかの公園でバスを降り、もちろんフランソワくんもそこでバスを降りるが、そのリュシーちゃんもいっしょに降り、フランソワくんにいろいろと絡み、話を聞いてリュシーちゃんも「尾行」のお手伝いをすることになるのだ。その他いろいろ。笑うしかない。
 ところで、リュシーちゃんは(自称)15歳だというが、んなことを信じるのはフランソワくんぐらいのものだろう。ちなみにフランソワくんは20歳、アンヌちゃんは25歳なのだ。

 いやあもう、ストーリー展開をぜ~んぶ書いてしまってもしょ~がないが、とにかくその公園内の「尾行」の展開からして大笑い。じっさい、テレビの前で何度も声を出して笑ってしまった。な~んて楽しい映画なんだろう!

 わたしはパリの街など詳しく知る由もないけれども、コレは知っている人が見たら「ああ、あそこね!」とか、もっともっと楽しめるのだろう! それは「東京」を舞台にした映画でも、そういうのはあったようにも思うが、やはりエリック・ロメールの「演出」の勝利だろう。

 映画には「小道具」が付きモノ、というか、そういうのをどう使うか。この作品では、フランソワくんがなぜかKioskで買う「絵ハガキ」が、いい感じの「落としどころ」をつくってくれる。

 むむむ、「エリック・ロメール」の作品などというと、どこか「めんどくさい」という先入観もあったのだが、こ~んな楽しい映画だったとは!