ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

2020-09-13(Sun)

 朝から、黒沢清監督の新作『スパイの妻』がベネツィア映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞されたというニュース。うれしいニュースだ。
 この作品は前からいろいろと情報を読んで、黒沢監督も裾野を拡げたような印象を持っていて、ベネツィアに出品されるのなら大きな賞も獲るのではないかと思っていたのだが、すばらしい結果になった。
 日本では10月中旬から映画館で一般公開で、「これは観に行かないとあかんな」とは前から思っていたのだが、実はもう演劇公演にも美術館にも映画館にも行くのをやめようかと思っていた矢先のことではあり、また「どうしようか」と迷うことになるのだった(やはり観に行くことだろうが)。
 ひとつ気になるのが、撮影がこのところずっと、長いこと黒沢監督の撮影監督を引き受けていた芦澤明子さんではないことで、わたしはもう近年はずっと、黒沢清:監督=芦澤明子:撮影というタッグに慣れていたので、この撮影監督の変化はどういう結果になるのだろうか、ということも観てみたい。

 もうひとつうれしいニュースだけれども、女子テニスの大坂なおみ選手が、全米オープンの決勝に勝利して優勝されたというニュース。わたしはそこまでテニス競技のファンというわけではないが、この大会での大坂選手は「Black Lives Matter」の動きに呼応して、毎試合ごとにトータル7枚の、理不尽に警官に命を奪われたアフリカ系の人の名まえを白くプリントした黒いマスクを着けて会場に現われていた。それはすばらしい行為で、わたしもその行為、そして大坂選手のプレーを応援していた。
 優勝後のインタヴューで、「7枚のマスクを通して訴えたかったメッセージは何ですか?」と質問されると、「あなたはどのようにメッセージを受け取られましたか?」と質問を返している。すばらしいクレヴァーな対応で、ちょっとしびれてしまった。
 日本ではツイッターなどで当初は「スポーツに政治を持ち込むな」という批判が相次いだが、多くの反論からその論点での大坂選手への批判が成り立たないとみた連中は、こんどは「被害者のアフリカ系の人たちはテロリストではないか、テロリストを支援するのか」と、前にもまして乱暴な大坂選手への批判をはじめているようだ。
 けっきょくそうやって大坂選手を批判する連中は単にアフリカ系の人たちを差別したいのだということだけがあらわになっている。自分たち自身がアメリカに行けばある種の人々からは「黄色いアジア人」と差別される側なのに、そんな「ある種の人々」に同調するというのは、いったいどういう神経なのだろうかとあきれるばかりである(まあ日本から一歩も外に出るつもりのない人たちなのだろうけれども)。

 さて、今日はそこまで暑くなった印象もなかった。買い物で外に出ると、空の雲は昨日までの積雲とか積乱雲とかいうのではなく、もう「秋空」という感じである。まだまだ残暑はつづくかもしれないが、「もう秋だ」と言ってしまっていいんだろう。

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 それで今日はエアコンをつけずに、ずっと扇風機でやりすごした。少し「エアコンを使いたい」という気にもなったが、なんとか乗り切った。ニェネントくんも暑がらず、「Bean Bear」家族と仲良くやっているようだ。

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 夕方から、「GYAO!」の無料配信で『ナイトクローラー』という映画を観た。食事のあと、テレビの「ダーウィンが来た!」という番組で「動物の赤ちゃん」特集だったのだが、民放とかどこででもやっているような平凡な番組づくりでガッカリした。
 寝る前は『ナボコフ書簡集』の(2)を読み始めた。ナボコフ夫妻はまずはアメリカを離れるのだけれども、ナボコフは思いのほかキューブリック監督の『ロリータ』映画化に入れ込んでしまっていて、その脚本執筆にかかりっきりになり、またキューブリックとの連絡を密にするためにもアメリカに戻ったりもする。知られているように書きあげられたナボコフの脚本はあまりに長大で、書き上げたあとは「いかにカットして短くするか」に尽力をつくすのだ。今夜はそのあたりまで。