ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『キツネとウサギ』(1973) ユーリー・ノルシュテイン:監督

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 ノルシュテイン監督の第三作だが、ノルシュテイン単独での監督作品はこれが初だということ。これまでの作品はたしかに、わたしなどのなじみのノルシュテイン作品とは距離があったわけだけれども、この作品はノルシュテインのタッチが濃くあらわれていると思う。

 この作品は原作のあるロシア民話からのものらしく、キャラクターデザインはノルシュテインが妻のヤールブソワといっしょに、民族美術を参考に考案したという。多くの場面はタペストリーのような装飾的模様で縁取られているし、二次元性を強調した絵は子どもたちに親しまれるだろう。

 物語は冬から始まり、ウサギ(かわいい)は樹皮でつくった家、キツネは氷でつくった家に住んでいる。ウサギは室内で暖炉をたいて暖まり(この暖炉の赤く燃える色彩が美しい)、キツネは「あたしの家の方がいいもんね」とスケートして遊んでいる。
 ところが春になるとキツネの氷の家は融けてしまう。それでキツネはウサギを追い出してウサギの家に住むことにする。
 このキツネはスカートをはいていて女性のキツネらしいのだけれども、「牝狐」といえばずる賢い女性への蔑称だったりするわけで、まさにそんな「牝狐」だったのか。
 キツネに自分の家から追い出されたウサギが家の外で涙を流しながらニンジンとか食べていると、ナイフとフォークをちゃらちゃらいわせながらちょい悪そうなオオカミがやって来て、「ウサギさん、どうしたの?」と聞く。かくかくしかじかと話を聞いたオオカミは、「よし、オレがキツネを追い払ってやろう!」と、見かけのように「ウサギを食べちゃうぞ」というような悪いヤツではなく頼もしいのだが、相手のキツネが意外と強敵で、オオカミは負けてしまう。同じようにクマ、そしてウシがウサギを助けようとするのだがキツネの方が強いのだ。何というキツネ!
 さいごに、赤いブーツを履いて剣を持ち、美しい羽根を持つ勇ましそうなニワトリがやって来る(ニワトリの登場の場面は赤が主体の暖色系になり、周囲の装飾図もずいぶんと様変わりするのだけれども)。キツネとの激闘の末、ニワトリも羽根が抜けてしまったりはするけれども見事にキツネを追い出すのである。以後、ウサギとニワトリは樹皮の家でいっしょに暮らすようになるのでした。

 ニワトリとキツネの争いの場面では、周囲にそのタペストリーのような画面枠が複数並び、それぞれの中でオオカミ、クマ、ウシらが真ん中の戦いを見ていて、ニワトリを応援している。

 まさに絵本が動き出したような楽しいアニメーションで、そりゃあ子どもたちに見せたくなるアニメだが、子どもたちは「ねえねえ、何でクマさんとかはあんなに弱いの?」と質問してくるだろうな。