ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ブリザード 凍える秘密』(2014) グレッグ・アラキ:監督

ブリザード 凍える秘密(字幕版)

ブリザード 凍える秘密(字幕版)

  • 発売日: 2019/04/27
  • メディア: Prime Video

 グレッグ・アラキ監督の名前だけは知っていた。それでエヴァ・グリーンが出演しているもので「観てみよう」という気になったのだが。
 いきなり音楽がコクトー・ツィンズなのでびっくりしたのだが、なんと音楽がそのコクトー・ツィンズのロビン・ガスリーと、今かかった曲で共作者となっているハロルド・バッドの2人とクレジットされていたもので、期待が高まった。
 音楽は80年代のニューウェイヴのヒット曲中心に選曲されていて、ニューオーダーエヴリシング・バット・ザ・ガール、エコー&ザ・バニーメンなどなど。別にロビン・ガスリーハロルド・バッドがこの映画のために書き下ろした曲はないようだったが、選曲はとても良かった。

 それで主人公のキャットや彼女のボーイフレンドの部屋にエッシャーなどアート系のポスターが貼られていたし、どことなく雰囲気的にアート系映画を狙っているのかと思う。家族から母親が突然いなくなってしまったり、主人公がその母親の夢を見るあたりから「これって『ツインピークス』を狙ってる?」と感じたのだが、じっさいにレコード・ショップの壁にリンチの『イレイザーヘッド』のポスターが見られ、「やっぱりか!」とは思うのだった。極めつけは出演者、ずっと後半になって出てくる父親の新しい恋人が、その『ツインピークス』でローラ・パーマーを演じたシェリル・リーによって演じられていたあたりだろうか。

 ではじっさいに、この映画がデイヴィッド・リンチ的世界を創出していたかというとまるでそうでもなく(そこまで至らず?)、母親失踪の謎を追っていくのと主人公の女性としての成長とを並行して描いているのだが、その主人公の日常の中に「謎」がないというか、リンチ的「非日常」な世界はまるで紛れ込んで来はしない、ごく普通の青春ドラマのようだった。
 タイトルからも主人公の夢からも、途中の描写からも、「母親失踪」の真相は想像がついてしまい、それは思った通りだったのだが、さいごの父親の行動の「どんでん返し」には、エヴァ・グリーンならずとも大笑いしてしまうのだった。

 ということで、その音楽と、エヴァ・グリーンの演技(出番は少なかったが)を楽しむ作品だった。そう、主人公もそのボーイフレンドも良かったか。