ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ポオ小説全集4』(創元推理文庫)エドガー・アラン・ポオ:著

 収録作品は以下の通り。

・黄金虫(The Gold Bug) 丸谷才一:訳
・黒猫(The Black Cat) 河野一郎:訳
・長方形の箱(The Oblong Box) 田中西二郎:訳
・不条理の天使(The Angel of the Odd) 永川玲二:訳
・「お前が犯人だ」("Thou Art the Man") 丸谷才一:訳
・ウィサヒコンの朝(Morning on the Wissahicon) 野崎孝:訳
・シェヘラザーデの千二夜の物語(The Thousand-and Second Tale of Scheherazade) 高松雄一:訳
・ミイラとの論争(Some Words with a Mummy) 小泉一郎:訳
・天邪鬼(The Imp of the Perverse) 中野好夫:訳
・タール博士とフェザー教授の療法(The System of Dr. Tart and Prof. Fether) 佐伯彰一:訳
・ヴァルドマアル氏の病歴の真相(The Facts in the Case of M. Valdemar) 小泉一郎:訳
・盗まれた手紙(The Purloined Letter) 丸谷才一:訳
・アモンティリャアドの酒樽(The Cask of Amontillado) 田中西二郎:訳
・アルンハイムの地所(The Domain of Arnheim) 松村達雄:訳
・メロンタ・タウタ(Mellonta Tauta) 高橋正雄:訳
・跳び蛙(Hop-Frog) 永川玲二:訳
・×だらけの社説(X-ing a Paragrab) 野崎孝:訳
・フォン・ケンペレンと彼の発見(Von Kempelen and His Discovery) 小泉一郎:訳
・ランダーの別荘(Landor's Cottage) 松村達雄:訳
スフィンクス(The Sphinx) 丸谷才一:訳
・暗号論(Cryptography) 田中西二郎:訳

 この巻には、エドガー・ポオの1843年から彼の没年の1849年にかけて書かれた作品が収録されているが、最後の「暗号論」のみは1841年発表のもの。巻末には江戸川乱歩氏による「探偵作家としてのエドガー・ポオ」(1949)が掲載されていて、これが大変読みごたえがあった。

 先にこのシリーズの第3巻を読んだとき、ごく一部の作品以外は「バカバカしい」との感想を持ったのだったが、この第4巻は「黄金虫」「黒猫」から始まるので期待していたのだが、この2作を読んだあとはだんだんにつまらなくなり、そのうちに(わたしの感想として)あまりに「下劣」な作品がつづくことに辟易し、よっぽど途中で読むのをやめようと思ったのだった。
 けっきょく我慢して最後まで読み通したが、今残るのは「これはわたしの最悪の読書体験だった」という思いである。

 作者にはネクロフィリアの趣味でもあるのかと思うぐらい、やたらと死体(とかミイラ)の話ばかりが出て来るし(わたしは基本、そういうのがダメなのである)、そうでなければ作者のポオの「うぬぼれ鏡」というか、自らの知性、知識を自慢するような記述ばかり(しかも、その知識とかは、わたしが言うのも何だが、中途半端で大したものでもないと思えた)。
 この本の中に「天邪鬼」という作品があり、これは完全犯罪を成功させた男が、どうしても「オレは殺人犯だ!」と人に言いたくなり、我慢しきれずに街頭で告白、死刑囚となった男の物語なのだけれども(この作品は素直に読めた)、この作品の中で語り手は「もしある種の錯綜した言廻しや、挿入句などを用いればこいつは相手の怒りを挑発できるかもしれぬ」と語るのだが、これはまさにポオ自身の「声」なのではないのか、彼はわざと読み手を怒らせようとしてこの巻に収録されている作品群を書いていたのではないのか、とも思える。

 とりあえず今は『ポオ 詩と詩論』の巻を読み始めているけれども、それを読み終えたならば、わたしの考えるエドガー・アラン・ポオという人物像(わからないところはいっぱいあるのだけれども)を組み立てようと、がんばってみようかと思う。