ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ポオ小説全集1』(創元推理文庫)エドガー・アラン・ポオ:著

 収録作は以下の通り。

・壜の中の手記(MS. Found in a Bottle) 阿部知二:訳
・ベレニス(Berenice) 大岡昇平:訳
・モレラ(Morella) 河野一郎:訳
・ハンス・プファアルの無類の冒険(The Unparalleled Adventure of One Hans Pfaall) 小泉一郎:訳
・約束ごと(The Assignation) 小泉一郎:訳
・ボンボン(Bon-Bon) 永川玲二:訳
・影(Shadow) 河野一郎:訳
・ペスト王(King Pest) 高松雄一:訳
・息の喪失(Loss of Breath) 野崎孝:訳
・名士の群れ(Lionizing) 野崎孝:訳
・オムレット公爵(The Duc De L'Omelette) 永川玲二:訳
・四獣一体(Four Beasts in One) 高松雄一:訳
エルサレムの物語(A Tale of Jerusalem) 高松雄一:訳
・メルツェルの将棋差し(Maelzel's Chess-Player) 小林秀雄大岡昇平:訳
・メッツェンガーシュタイン(Metzengerstein) 小泉一郎:訳
・リジイア(Ligeia) 阿部知二:訳
・鐘楼の悪魔(The Devil in the Belfry) 野崎孝:訳
・使いきった男(The Man That Was Used Up) 宮本陽吉:訳
・アッシャー家の崩壊(The Fall of the House of Usher) 河野一郎:訳
ウィリアム・ウィルソン(William Wilson) 中野好夫:訳
・実業家(The Business Man) 宮本陽吉:訳

 ‥‥ふう。この文庫本の翻訳陣が豪華なので、「一目でわかるように」という気もちもあって(該当文庫分の「目次」をみてもわからないのだ)、全作品タイトルと翻訳者を書いたのだが、それだけで疲れてしまった。

 わたしは今まで「エドガー・アラン・ポー」と書いてきたのだけれども、この文庫版全集では「エドガー・アラン・ポオ」という表記なのでしょうがない、わたしも「エドガー・アラン・ポオ」と書くことにしよう。

 それでやはり、読み始める前から想像していたように、ポオの文章は七面倒くさくって回りくどくってすんなりと読めないわけで、前から思っていたように、少年少女がポオを読むには、コレをうまい具合にリライトする手慣れたライターがいてくれた方がいいようには思うのだけれども、まあまだこの「第一巻」にはそこまで「少年少女向け」という作品もなく(例えばわたしが言ってるのは『黄金虫』だとか『モルグ街の殺人』のことで、そういう作品ではじっさいにどういう文章なのかはまだわからないわけだ)、「ここは素直に読みましょう」というところ。

 やはり、この第一巻で「圧倒的」に魅力的な作品は、『ベレニス』『モレラ』そして『リジイア』という、「死せる女性のよみがえり」を描いた作品で、今になってこれらの作品を初読したわたしは、まさに「戦慄」してしまった。
 ここでは、そのポオの「七面倒くさい」文体こそが効果的で、ひとつの「詩」とも言えるのだけれども、特にさいしょの『ベレニス』は、まさに昔読んだマリー・ボナパルトの有名なポオ評を思い出すのだった。

 この第一巻を読んでも、ポオの精神は「分裂」していて、そんな「詩的」な作品があるかと思えば、ジャーナリストとしてのポオの持ち味を発揮した「諧謔的」な作品、そして「自分は科学的なまちがいない視点を持っている」というところから書かれた『ハンス・プファアルの無類の冒険』みたいなSFチックな「月世界旅行譚」、当時評判になった「見世物」のタネを暴いたとするような『メルツェルの将棋差し』などなど。
 もう、今となってはどんな作品だったのか思い出せない作品もあれこれとあるけれども、さすがに有名な『アッシャー家の崩壊』や『ウィリアム・ウィルソン』は興味深かったし、『メッツェンガーシュタイン』も、気分的に錯綜しながらも面白く読んだ。