どうもこの映画のデータが調べてもよくわからないのだけれども、このPart2は監督がロブ・ジョンストーンという人に変わっているみたいだ。でもこの人は前作『ビーチ・ボーイズの光と影』でも製作総指揮にたずさわってたようだし、わかる範囲で調べると、この2人はいっしょに組んで、多くのミュージシャンのドキュメンタリーをつくっているようだ。書いておくと、ビートルズ、ボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、そしてエリック・クラプトンやジェフ・ベックなどなど。あ、この2人はイギリスの人で、映画もイギリス製である(「映画」なのか「テレビ番組」なのかもわからないが)。
登場するコメンテイターも『ビーチ・ボーイズの光と影』のときとダブる人も多いが、撮影場所が前作と同じ人も、変わっている人もいる。新しく登場する人も多いが、そんな中に元タートルズ、元マザーズのマーク・ヴォルマンが登場したのは意外だったしうれしかった。彼はブライアンの古い友人で、ブライアンが半分リタイアしているときに彼の家に遊びに行き、巨大なベッドで寝ているブライアンを見たのだと「証言」している。そのとき彼は、ブライアンは「危険な状態にある」と思ったらしいが。マーク・ヴォルマン、お元気そうで何より。
いちおう原題は「Brian Wilson: Songwriter 1969 - 1982」。前作Part1は3時間9分もあったが、こちらは2時間14分と、ありがたいことにだいぶ短かくなっている。
前作はビーチ・ボーイズのアルバム『Friends』(1968)のリリースまでが描かれていたけれども、この作品は少しフィードバックして、1966年の『Pet Sounds』のリリース時からを復習しながら始まる。このあたり、前作はけっこうビーチ・ボーイズ中心の見かただったけれども、こちらではブライアン・ウィルソンの心理をメインに追って行く。レコード会社からのプレッシャーと、バンドのメンバーとの関係で押しつぶされて行くブライアン。彼はけっきょく薬物に依存するようになるし、そんな彼を精神的に助けようとする人物もいなかった。彼は『Smile』制作に挫折してなかばバンドをリタイアするわけだ。
じっさい、この頃にはビーチ・ボーイズの曲もヒットチャートの上位に昇ることもなくなり、わたしも彼らの曲を耳にすることもなくなってしまう。さいごに聴いたのは「Do It Again」かな?
ヒット曲、名曲もなくなるから、前作のように曲ごとの精緻な解説もなくなってしまうし、「一般の評価は低いけれども、よく聴けばいいアルバムだよ」というような紹介がつづく。
わたしはその頃にはブライアンはすっかりバンドをリタイアしてしまったのだと思っていたけれども、そういうわけでもなかったようで、プロデュースこそすることはなくなったけれども、何曲かの新曲を提供することとかはあったようだ。
この作品で描かれるように、一時期はランディ・ニューマンの音楽に惹かれるようにもなり、ピアノ弾き語りで歌うブライアンの声もまた、かつての美声も失せてダミ声になってしまったりもする。
彼の精神状態はさらに悪化し、1975年からは悪名高い心理学者ユージン・ランディの治療を受け始めることになるわけだ。結果、彼は『15 Big Ones』(1976)において実に久しぶりにアルバムのプロデュースを引き受けるし、その次の『Love You』(1977)はまったく売れなかったけれども、ブライアンのソロとしての評価の声は高いらしい。
その後再び退行し始めたブライアンは入院、その入院生活は3年間つづいたという。ブライアンの主治医に復帰したユージン・ランディは「彼を救ったと同時に破滅にも追いやった」という。
ここで作品は一気に先を急ぎ、最終的に2000年にビーチ・ボーイズから離れたソロ・ライヴを行い、音楽界に復帰したことをちょびっと告げて、実に唐突に終わってしまうのだった。
‥‥ああ、うまく書けなかったなあ。けっきょくわたしは、ブライアン・ウィルソンという人のことを深く知りたいというよりも、ただ『Pet Sounds』に浸っていたい人間なのだということがよくわかったのだった。