ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ゴジラ×メカゴジラ』(2002) 手塚昌明:監督

 この時期の「ゴジラ・シリーズ」はもう毎回「これでゴジラ映画も終わりにしよう」と考えられていたらしいけれども、ハリウッド製の『GODZILLA』(1998)への「そりゃあ<ゴジラ>とちゃうで!」という思いは根強く、毎回「日本の<ゴジラ>とはこういうもの」というものを伝える「使命感」もあったらしい。
 しかし前作『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』は久々のヒットとなり、それは名の知れた金子修介が監督したからとか、子供向けアニメ映画『とっとこハム太郎』が併映されたからだとか分析されたが、ヒットの一因としてモスラキングギドラの人気怪獣が出演したからだろうともされ、「では次作は人気キャラ<メガギラス>を出そう」ということになったらしい。
 監督はまた手塚昌明が担当し、脚本も三村渉、音楽は大島ミチルと、『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』のスタッフがまた集結した。そして『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』のように女性が主人公とされ、釈由美子がヒロインとなった。他にも女性総理大臣として水野久美が登場したり、いろいろと女性のフィーチャーされる作品となった(あと、ニックネームが「ゴジラ」であることから、松井秀喜選手が顔を見せている)。

 今回も、第一作の『ゴジラ』以降のゴジラ映画はなかったことにされているし(しかし「巨大怪獣」はゴジラ以外に日本を襲い、「モスラ」などは東京タワーを倒したこともあるようだ)、初代ゴジラは「オキシジェン・デストロイヤー」によって死んだものとされ、その引き揚げられた骨格によって、「機龍」と呼ばれる新「メカゴジラ」が誕生するのであった。
 「機龍」のオペレーターに抜擢されたのは家城茜(釈由美子)だったが、彼女は最初にゴジラが上陸したときに、ゴジラ攻撃に際して同僚を死亡させたという「自責の念」に駆られてはいる。
 「機龍」のオペレーションは基本「遠隔操縦」なのだが、ラストでのゴジラとのバトルでは倒れた機龍が操作不能になり、このとき家城茜は機龍の体内のコックピットに乗り込み、機龍と一体化して操縦するのであった。これまた『パシフィック・リム』のイェーガーを思い出させられる(『パシフィック・リム』の監督のギレルモ・デル・トロは『機動警察パトレイバー』からの影響が強いと語っているようだが、「機龍」自体は数年前の『新世紀エヴァンゲリオン』の影響が強いように見える)。

 作品の尺も88分と、これまでのシリーズよりも短く仕上げられていて(これは子供が集中して観られるように「短く」との配慮があったらしい)、グダグダと人間ドラマを描きつづけることもなく、スッキリとまとめられているようで好印象(「おじゃま虫」っぽく重要な会議場にも顔を見せている少女はウザったいが)。「ゴジラ」に余計な「社会的背景」「存在の意味合い」を求めず、ただただ「災厄の象徴」としたことも、「怪獣映画の普遍性」を現前させていて、これはこれで楽しい作品ではあったと思う。
 「機龍」の着ぐるみスーツは動きやすかったのか、ゴジラとのバトルもあまり「火薬」に頼ることのない、まさに「肉弾戦」で、わたしの記憶では、今までのゴジラ映画でのバトルではいちばんエキサイティングではなかったかと思う。
 ラストに機龍との戦いに敗れ、「オレ、負けちゃったなあ」と海の彼方に去って行くゴジラのうしろ姿も、いい味わいだった。

 劇場公開はなく、DVDのみのリリースとなったアメリカでも好意的に迎えられたようで、「ほとんどの怪獣ファンを喜ばせる、楽しくエキサイティングな映画」との評もあった。