ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004) サイモン・ペッグ:脚本・主演 エドガー・ライト:脚本・監督

 今をときめくエドガー・ライトの、映画監督デビュー作(この前にテレビ作品の監督はしていたようだが)。この作品のあとエドガー・ライトは共同脚本/主演のサイモン・ペッグ、同じくこの作品にも出演しているニック・フロストと共にしばらく映画を製作している。

 この作品はのちの作品『ゾンビランド』(2009)に似通ったところもあるというか影響を与えているようで、この作品でゾンビが撲滅されず、さらに増加して行ったらば?というのが『ゾンビランド』の世界かな、とも思う。そういうところで、この作品のバックグラウンドには「青春コメディ」的世界が横たわっていると思ったし、主人公らが多数のゾンビに囲まれたとき、銃で打ち倒すときに時計の「何時の方向」と伝えて銃を向けさせるのは、『ゾンビランド』でもそのまんま出て来る。

 街にはあちこちにゾンビらがあふれるようになっているが、この映画の主要登場人物らがなかなかにその存在に気づかない、というのが第一の「お笑いポイント」なんだろう。
 ようやく街に増殖する「ゾンビ」らに気づいたショーン(サイモン・ペッグ)とエドニック・フロスト)はまずはショーンの両親を救いに出て、そのあとはつい先日フラれたばかりのショーンの元カノのリズ(ケイト・アシュフィールド)も救いに行く。
 ショーンの母のバーバラは救出するが、義父のフィリップ(ビル・ナイなのだった!)はすでにゾンビに襲われていて、「ゾンビ化」が始まっている。
 ショーンとエド、ショーンの母のバーバラ、リズ、リズのルームメイトのデービットとダイアンの6人で、ここでも母のバーバラは状況をまったく理解していなくって、ゾンビの存在を認めようとしなかったりするのだが、ショーンは街の中で「安全な場所」を求めるが、その「安全な場所」とは、ショーンとエドが常連であるところのパブ、「ウィンチェスター・パブ」ということになる(パブにはライフル銃が飾ってあったりするのだ)。

 わたしはじっさいのところどうなのか知らないが、イギリスの若者にとっての「パブ」というもののあり方というか。ショーンとエドはそれこそ毎日のように、住まいの近郊の「ウィンチェスター・パブ」に通うわけで、リズとのディナーの場所をそのパブに決めたことも、リズに振られる原因のひとつではあった。
 まあ日本でいえば「居酒屋」みたいなモノと考えていいのか、居酒屋よりはもうちょっと「若者向け」に振れているというか、店内にジュークボックスなどもあるわけだ(「ジュークボックス」が「若者向け」ということもないか)。
 エドガー・ライトはこのあとの『ワールズ・エンド/酔っぱらいが世界を救う!』(2013)という作品で、街中のパブをハシゴして、すべて制覇することを目指す作品を撮ることにもなり、やはりエドガー・ライトの文化の原点としての、「イギリスのパブ」というのはあるのだろう。

 エドガー・ライト作品の特徴である「演出に合わせた冴えた選曲」というのもすでに活きていて、わたしが爆笑したのはやはり、パブで皆がゾンビに襲われたとき、反撃するときにクィーンの「Don't Stop Me Now」がジュークボックスの「自動選曲」でかかってしまうとことかな? 
 わたしは実はクィーンというバンドは好きではないのだが、告白すると前の妻がクィーンの大ファンだったもので彼らの曲の多くは知っているし、彼らの日本公演にも行ったことがある。忌まわしい思い出ではあって、クィーンの曲など聞きたくはないのだが、この映画での「Don't Stop Me Now」には楽しませてもらったのは事実。

 優柔不断なようなショーンだが、映画の進行と共にその「やさしさ」は際立つし、ショーン自身も人の「やさしさ」に気づくわけだ。お約束だが、ショーンとリズはよりを戻して生き残る。ここは「かろうじて間に合った『ミスト』のラストという感じでもあったが。ラスト、生き残った「半年後」のショットにも笑えたが。