ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017) ギレルモ・デル・トロ:原案・監督

 むかし映画館で観て「いい映画だなあ」と思っていたはずの作品だけれども、例によってわたしの記憶障害のため、ラストシーンをわずかに記憶するだけの映画になってしまっていた。だから6~7年ぶりに観た作品だけれども、ストーリー展開などほとんど記憶してはいなかった。

 作品は1960年代のアメリカを舞台として、当時(1954年)製作の『大アマゾンの半魚人』という映画のリメイク的なスタンスである。
 主人公のイライザ(サリー・ホーキング)は幼少期ののどの傷のためしゃべることが出来ないのだが、今は政府の機密研究機関で仲の良いゼルダオクタヴィア・スペンサー)と共に清掃員として働いている。彼女は映画館の上のアパートで独り暮らししているが、隣人の売れないイラストレイター(実はゲイ)のジャイルズ(リチャード・ジェンキンズ)とも親しくしている。
 あるとき、研究室に秘密裏にアマゾン奥地から「半魚人」が運ばれてくる。研究担当はストリックランド(マイケル・シャノン)とホフステトラー博士(マイケル・スタールバーグ)だが、ストリックランドは半魚人の「生体解剖」を目論んでいるし、ホフステトラー博士は実はソヴィエトのスパイである。
 半魚人の存在を知ったイライザは、手話で半魚人とコミュニケーションを取るようになるし、「生体解剖」の計画を知り、何とか半魚人を助けようと思うのだ。
 ここでイライザの同僚のゼルダ、イライザの話を聞いたジャイルズ、とにかく研究機関から半魚人のデータを盗もうとするホフステトラー博士らの助けを得て、イライザは半魚人を研究室から救い出し、アパートの自室のバスタブに彼をかくまうのだ。そしてイライザは彼を愛するようになる。
 盗まれた半魚人を探すストリックランドは、ついにはイライザが半魚人をかくまい、今まさに運河の水門から半魚人を海に逃がそうとしていることを突きとめ、海辺でイライザと半魚人に銃を向けるのではあった。

 まさに「ファンタジー」で、画面の世界とその色合いとが、よく設計されたアニメーションの世界みたいだ。
 全体に色彩が青と緑とに覆われ、それは映画の中で「ティール」という色なのだと説明されるけれども、イライザと半魚人とがまず水中で抱き合うとき、その色彩がその青と緑との美しい混色の世界だった。

 主人公のイライザは「しゃべれない」ということでマイノリティーのひとりなのだが、同僚のゼルダもアフリカ系。この映画の時代が1962年だということで、まさにマイノリティーだし、ジャイルズもまたゲイということでマイノリティーではあるだろう。そんなメンバーらが、いつしか心を合わせて「政府機密機関」に対抗する、という展開が面白い。

 その「時制が1962年」ということで、作品中何度も出てくるテレビの映像が、まさに時代を感じさせるものだし、いっしゅノスタルジーをも感じさせられるものでもあり、映画のストーリーのある意味で「ベタなファンタジー」ということと合わせて、この作品の世界観がしっかりと伝わってくるようではあった。