ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『デッド・ドント・ダイ』(2019) ジム・ジャームッシュ:監督・脚本

 「The Dead Don't Die」。英語発音をカタカナにすると「デッドンダイ」と、何だか「どですかでん」みたいだ(そんなことないか)。
 映画はジム・ジャームッシュが監督したゾンビ映画。まあジャームッシュ監督は昔っからオフビートな、笑っていいのかどうなのかわからないような映画をよくつくっていたけれども、この映画はどうやら「思いっきり笑ってくれ!」というつもりで撮ったようではある。まあ「マジメ」につくってはいない感じで、そういうところではちょびっと、ティム・バートン監督の『マーズ・アタック!』を思い出すところもある。
 じっさい、群がってくるゾンビらをせん滅するにはその首を切り落とせばいいのだけれども、首を落とされたゾンビは傷口から黒い霧のようなモノを発散して倒れるわけで、『マーズ・アタック!』でやられた火星人が緑のネバネバを噴き出して死ぬのに似ている。これはおそらく、『マーズ・アタック!』のように、血しぶきをリアルに描くことで<R指定映画>にされることを避けるためのアイディアだろう。

 で、映画が始まるとまずは、ビル・マーレイアダム・ドライヴァーがいっしょに並んで歩くのだけれども、なぜか、この二人が並んで歩いているというだけで大笑いしてしまう。それで「こりゃあどんだけ笑かしてくれる映画になるだろう!」と楽しみにしたのだけれども、実はこの映画でいっちばん笑えるのは、この二人がいっしょにいるということだけなのだ。

 この映画の出演者はほとんどが、過去にジャームッシュの作品で活躍した俳優ばかりで、そ~んな俳優の顔ぶれを見ているだけでもけっこう楽しいのだが、う~ん、どこか「空振り」だなあという感覚はある。
 いちばんエキセントリックなのはやはりティルダ・スウィントンさまで、役名も「ゼルダ・ウィンストン」とふざけているのだけれども、エキセントリックすぎてアニメのヒーロー(いや、ヒロインか)みたいで、もう「生身の人間」というのを超越してしまっている。っつうか、あんまりにも無敵に強すぎて。
 クロエ・セヴィニーのお姿もずいぶんと久しぶりに目にしたけれども、ちょっと「わたし、怖いんですけど」という演技ばかりで、わたし的にはいちばんの「空振り」。しかし彼女はメガネが似合うなあ。
 スティーヴ・ブシェミも、もうちょっと活躍していただきたかったなあ。そういうのでは、「世捨て人のボブ」を演じていたトム・ウェイツも、見てくれはインパクトあったのだけれども、ただ外から皆の狂乱を眺めているだけだった。まあ見て楽しかったのは、ゾンビ役で出てきたイギー・ポップとサラ・ドライヴァーだろうか。

 わたしがこの映画でいちばん気に入ったのは、工具店のオーナーだかなんだかで出ていた、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズという役者さんかな。そのキャリアを調べると、コーエン兄弟の『ノーカントリー』でデビューして、『ソーシャル・ネットワーク』や『スリー・ビルボード』にも出演していたらしい。ちょっと、この人の出た映画をもう少しチェックしてみたい。

 まあ、何というか、「映画からはみ出した部分で」観客を笑かそうとした映画か? そういう気がした。