書きなおすナボコフ、読みなおすナボコフ Revising Nabokov Revising
- 作者: 若島正,沼野充義
- 出版社/メーカー: 研究社
- 発売日: 2011/05/27
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (7件) を見る
「日本ナボコフ協会」というものがある。その日本ナボコフ協会設立十周年を記念して、2010年に京都で「国際ナボコフ学会」が開かれたのである。この本は、そのときの発表論文、そしてその後の議論などを通して生まれた書物で、海外の研究者のエッセイ(論文)7篇、国内研究者13篇、そして若島正と沼野充義との対談とから構成された本。収録数が多いこともあり、それぞれ十数ページぐらいの短いエッセイ(論文)から成る(この中には、世界でのナボコフ研究の重鎮、ブライアン・ボイド氏による「心理学者としてのナボコフ」も含まれている)。内容は相当にナボコフを読みこんだ読者に向けられたもので、軽い気持ちでナボコフ論を読みたいとこの本を手にすると、とてもではないがその論旨について行けるのもではないかと思う。そもそもこの書物を刊行したのは「研究社」という「硬い」出版社ではあるし。
わたしもナボコフは相当に読み込んでいるつもりだけれども、「研究者というものはここまでに微に入り細を穿った読み方をするものなのか」と、いささかながら驚いてしまったのであった。でもそのことは「ナボコフという作家の奥深さ」のあらわれでもあるわけで、「ついていけない」ところもありながらも結局楽しく読むことができた。そんな中ではけっこう柔らかい、若島正氏の「『ロリータ』と英国大衆小説」が、わたしには楽しかった。
この本の編者は若島氏と沼野氏の二人だが、ナボコフの英語時代を若島氏が総括され、ロシア語時代を沼野氏が総括。この二人の対談がやはり面白かったし、つまりはわたしとしてはナボコフのロシア語時代、とりわけ『賜物』をもういちどしっかりと「再読」したいものだと思うのだった。