ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』(1972) 中野昭慶:特技監督 福田純:監督

 前作『ゴジラ対ヘドラ』に対する、当時の批評的かつ商業的な低評価に失望したプロデューサーの田中友幸は、ゴジラを60年代の黄金時代に回帰させる方法を模索始めた。1971年の「東宝チャンピオンまつり」での『三大怪獣 地球最大の決戦』の編集版再映、そして1972年の『怪獣大戦争』再映が『ゴジラ対ヘドラ』をはるかに上回る興行成績を残したことからも、田中は「新しいことに挑戦するのではなく、ファンに人気のキングギドラを復活させることだ」と考えるのだった。「困ったときにはキングギドラ」なのだ。
 脚本も関沢新一に戻し、監督も再度福田純が担当することになった。相変わらず予算は少なく、名の知れた俳優を使うことは出来なかったが、キングギドラの再登場にプラスして新しい怪獣「ガイガン」が登場することになり、タイトルにもガイガンがフィーチャーされた。このガイガンゴジラ映画ファンの人気も高いようだけれども、「いきなりのサイボーグ怪獣」という感じで、わたしはそのデザインを含めてあんまり好みではない。

 「困ったときにはキングギドラ」のみならず、「困ったときには宇宙人」(まあ宇宙人が出てくればキングギドラとセットなのだが)というこれまでの「ゴジラ映画」のセオリーにしたがって、「М宇宙ハンター星雲」から飛来した宇宙人(実はゴキちゃん)を登場させた。もちろん、キングギドラガイガンもその星雲宇宙人にあやつられているのだ。
 宇宙人らはすでに人間社会に入り込んでいて、「世界子供ランド」なるものを拠点にすべく建設中。その中央には「ゴジラタワー」なるものが建てられている。
 宇宙人らの秘密テープ(この頃のゴジラ映画にはたびたびこういう「テープ」が登場するけれども、時代柄それは骨董品の「オープンリールテープ」なのではある)を偶然手にした4人組がそのテープを再生してみると、そこには星雲宇宙人による「地球侵略計画」が電子音で記録されていて、人間が聞いてもわからない。ところが今は「怪獣島」にいたゴジラがその電子音を聞きつけ、今は「ゴジラの舎弟」(というか、四つ足だから「ゴジラの忠実な番犬」とも見える)となっていたアンギラスに「日本を偵察しろ」と言いつける。もはやゴジラ、完全に「人間の味方」になってしまったようだ。

 この場面、画面にゴジラアンギラスに重ねて「マンガの吹き出し」が出て来て、2頭の会話を観客に伝えるのだ。
 もちろんこの演出、前作『ゴジラ対ヘドラ』のゴジラ飛行シーンにつづいて「ブーイング」の嵐に見舞われることになるのだが、もう今や「ゴジラ映画」は「マンガ」と並んで子供たちの愛好するアイテムなのだから、大人があれこれ批判してもしょーがないか。

 4人組のひとりの兄のコンピューター技師が「世界子供ランド」で仕事をしていたが行方不明になっており、4人組は「世界子供ランド」の会長と事務局長が怪しいとにらみ、「世界子供ランド」に侵入して兄を救出し、彼らの陰謀を知っているその兄を仲間に、5人で「世界子供ランド」の会長と事務局長に立ち向かう。

 よくわからんけど日本の海岸まで出向いて情報を仕入れたらしいアンギラスゴジラにその内容を伝えたようだ。それでゴジラアンギラスとは日本へと向かうのだ。

 5人組に追い詰められた星雲宇宙人の2人、会長と事務局長は「それでは」と、例によってキングギドラを、それとニューフェイスガイガンとを呼び寄せるのであった。あとはもう、いつもの展開ではあろう。

 前の『怪獣総進撃』で活躍し、わたしが勝手に「殊勲賞」と「敢闘賞」をあげたアンギラス、おそらく子供たちからも「アンギラス、いいね!」という反応もあったのだろう。それで今回はゴジラとタッグを組んでキングギドラガイガンとに立ち向かうのであった。
 ガイガンというヤツ、胸に凶器の回転ノコギリを持ってるし、その腕は鋭利なとんがった爪。この武器によってゴジラアンギラスも「流血の惨事」となってしまうが(この「流血」も賛否があったようだ)、つまりはゴジラアンギラスのタッグが勝利するのだ。
 今回、当初はわたしも応援したアンギラスの活躍が少ないなとは思ったのだったが、戦いの終盤に背中から敵にぶち当たり、その背中のトゲトゲをぶっつけるという必殺技をみせるのだった。

 今回のゴジラの着ぐるみは頭が大きくなったようで、さらに「子供好み」のキャラクターになったようだ。『キングコング対ゴジラ』以来思っていたのだけれども、ゴジラが繰り出す技が「岩をつかんで放り投げる」、というのが定型化しているけれど、これをやっている限りは「お子さま向け映画」から脱することはできないだろう。