ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ネイチャー』(2013) パトリック・モリス、ニール・ナイチンゲール:監督

 原題は「Enchanted Kingdom」で、BBC-EARTHによる、アフリカ大陸とその周辺の海で撮影したドキュメンタリー。今まで観たBBCのドキュメンタリーでは、北から南へと地球を周回したり、夜中から夜が明けて日が暮れ、また夜中になる24時間を追ったりしていたけれども、この『ネイチャー』では雨降る季節「雨期」から始まり、動物たちが水を求めて移動する乾期を経てまた雨が降り出すまでをとらえている。
 始まりと終わりのシーンでは都市で生活する人々の姿がとらえられていて、わたしたち人間の「生」というものも、アフリカの自然の中で生きる動物たちとこの地球の上ではいっしょなのだということが、うまく伝わってきたと思う。

 しかし月日の流れを順に季節の移り変わりで追っていくわけではなく、さいしょの雨のシーンのあとはいきなり「雨の降らない」砂漠の世界になったりする。主役は動物たちではあるけれども、広大なアフリカ大陸の中での「砂漠」「熱帯雨林」「サバンナ」「高山地帯」「火山地帯」、そして「サンゴ礁」と、その大陸の「多様さ」を追った作品だと言える。
 動物たちも「総花的」に数多くの動物たちを登場させるのではなく、そんな生きる環境から動物の数を絞り、それなりにそれぞれに時間をかけてその生態を紹介する。
 今までのBBCドキュメンタリーと同じく、子供たちも観ることが想定されてだろう、「弱肉強食」の争いで動物が屠られるシーンは映されず、「危うく牙から逃れる」というシーンにとどまるわけだ。
 それでも、ナイルワニが水を飲みに川岸にやって来るムーを待ち伏せして襲う場面は、ちょっとしたサスペンス映画ばりのカット割りがされ、襲われたムーが川に引きずり込まれるところは(例外的に)映されていた。

 毎回、このBBC-EARTHによるドキュメントは映像が美しいのだけれども、そういうのではこの『ネイチャー』がいちばん、だったのではないかと思う。特に「サンゴ礁」の水中撮影の色彩の美しさは、「きっと天国とはこういうところなのではないか」という美しさだった。
 そんな海の、北斎の描く波の中にカメラが入り込んだような映像も迫力があったし、激しい流れの川の中にカメラも一緒に流されて行くような映像など、やはり「どうやって撮影したんだろう」と驚愕してしまうのだ。サバンナを襲う激しい雷雨の雲の動き、雷光も強烈だったし、後半はスローモーション映像を多用し、そんな中で水面の波紋をとらえた美しい映像には息をのむほどだった。