この夏に観たBBC製作の『アース』の、10年ぶりの続編新作。基本的に前作『アース』と製作姿勢は変わらない。『アース』ではこの地球を一周してみせて生物の多様性を見せてくれたけれども、この続編は朝日の出から深夜への、地球の1日24時間の生き物たちの活動を時間を追って見せてくれる、という構成になっている。
前作と同じように、ため息が出るような美しい光景、その構図が堪能できるし、「よくそんな場面を撮影できたものだ」というような動物たちの見せる「決定的瞬間」を楽しむことができた。
今回は「動物」に限らず、(動物の生態に密接に関係しているとはいえ)竹やヒカリキノコなどの植物も、少し紹介されていた。まあ竹はジャイアントパンダの食料になるわけだが、ヒカリキノコはその光で同じく光る昆虫、まるでホタルのようなヒカリコメツキという虫をおびき寄せ、胞子を運んでもらって繁殖するのだ。
この作品はイギリスと中国の合作で、監督の一人も中国の人だし、その他にも実に多くの中国の人がスタッフに加わっている。この成果は自然な環境の森の中で暮らすジャイアントパンダの映像(森の中でのびのびと暮らすパンダの姿はやはり、動物園で見られる姿とちがって実に生き生きとしている)、そしてやはり中国に棲むらしい非常に珍しい絶滅危惧種、ハクトウラングール(オナガザル科)の貴重な映像などにあらわれていたのだろう。
今回も地球上のさまざまな地域のさまざまな生き物たちの生態を見せてくれたが、見終わって印象に残ったシーンを思い出すままに書いてみれば、ガラパゴス島で砂の中の卵から孵化したウミイグアナが地上に出て来るのだけれども、そんなイグアナの幼生をたくさんのガラパゴスヘビが待ち伏せしていて、イグアナが砂の中から出てくると追いかけるのだ。孵化してすぐに全速力で走らなければならないウミイグアナ、まずは生き残るための大きな関門にぶち当たるわけだ(何匹ものウミイグアナがヘビの犠牲になる)。
それからアフリカの草原を移動するシマウマの群れとシマウマの子。このパートは前作『アース』でアフリカゾウで見せてくれた場面の、シマウマでの再現という感じだったが。
そしてキリンのオス同士のけんか。大きく首を振って相手の首にぶち当てることを繰り返すが、結構な迫力だ。転倒させられた方が負けのようで、一匹で群れから離れていった。
南極圏でヒゲペンギンのオスが海に子どものために半日をかけて狩りに出て、何万頭とコロニーをつくるヒゲペンギンの中の、自分の子と母のところに戻ってくるというのは、やはり前に観た皇帝ペンギンを追ったドキュメンタリー、『皇帝ペンギン おかえり』と共通する内容だった。ペンギンの種は異なるけれども、やることはおんなじなのだ。
それから印象に残ったのは、ニュージーランドに棲む花の蜜を吸うラケットハチドリのことで、小さな鳥だからライヴァルはミツバチなのだ。そして雨が降り出すと、そんな雨のしずく一滴が当たってもその衝撃は大きいのだ。でも、ライヴァルのミツバチは雨粒が当たると飛びつづけられずに落下してしまったりする。人間でいえばバケツ一杯の水をぶっかけられるようなものだろうか。
ラストのクレジットをみると、BBCの中に「Earth」という独立したプロダクションがあるようで、そのプロダクションはおそらくは今日もまた地球のどこかで、生き物の姿をカメラに捉えようとしているのだろう。
「この地球というかけがえのない惑星のすがたを伝える」というのがこの作品のひとつのコンセプトなのだろうが、確かに余計なメッセージなどなくっても、「このかけがいのなさを守っていかなくってはならない」という気もちにはなるのだった。