ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『北極のナヌー』(2007) アダム・ラヴェッチ、サラ・ロバートソン:監督

 「ナショナル・ジオグラフィック」が製作に絡んだドキュメンタリーで、ホッキョクグマの子の「ナヌー」、セイウチの子の「シーラ」の成長を捉えた作品だが、実際にはナヌーもシーラも一頭の個体を追ったのではなく、複数の同種の動物を合わせたものなのだ。
 15年にわたって撮影されたものだというが、そもそもホッキョクグマもセイウチも、通常カメラで捉えるのがむずかしい動物だそうだが、それでも撮影した映像は800時間分に及んだらしい(作品の最後のクレジット部に撮影の様子も垣間見ることが出来る)。

 作品は、そのナヌーとシーラの成長を追いながらも、ホッキョクグマやセイウチ(その他の動物も)の生態を捉え、「地球温暖化」の動物たちへの影響も描いている。
 映画は春になって氷の洞窟の中から母親のホッキョクグマと産まれたばかりのメスのナヌー、それとナヌーの弟が這い出て来るところから始まる。まず、2頭の子グマは母親から生きて行く術(すべ)を学ぶのだ。
 一方、海の中では産まれたばかりのセイウチのメスのシーラが、母親に守られて泳いでいる。セイウチは何十頭もの群れを成していて、それでも群れに子どもの数は少ないので、シーラには母親だけでなく彼女のことを守ってくれる「子守り」のセイウチもいる。
 ナヌーの弟には映画の中で名前が付けられていないから、「こりゃあ弟は死んじゃうんだな」と思っていたが、やっぱり食べるものがなくて家族が飢えたとき、弟は死んでしまうのだった。

 そのあとナヌーもシーラも成長して2歳になり、ナヌーの母親はナヌーを追い払い、1匹で生きる道を選ばせる。シーラはやはり群れといっしょだが、セイウチを狙うホッキョクグマのオスが近づいて来たのを発見し、群れの皆に「危険だ!」と告げたりする。

 北極も温暖化の影響で冬が短かくなり、氷が凍るのが遅くなるし溶けるのも早くなる。ナヌーもシーラの群れも食べ物を見つけるのが困難になるため、どちらも食物を求めて長い旅をする。ナヌーはセイウチの群れに近づき、狩りをしようかとするが、セイウチはまだ大きくないナヌーが相手にするには大きすぎる。
 一方、十分に大きなオスのホッキョクグマがセイウチの群れに近づき、危うくシーラは捕えられそうになるが、シーラの「子守り」のセイウチが身を挺してシーラを守り、自分が犠牲になってしまう。
 飢えたナヌーは、そんなオスのホッキョクグマの食べる獲物を分けてもらおうとするが、さいしょオスグマはナヌーを追っ払う。ナヌーが粘り強くオスグマのそばを動かないでいると、オスグマも根負けしたのか、ナヌーが食べるのを許すのだった。

 年月が過ぎてナヌーもシーラも8歳になった。ナヌーにはついに連れ合いのオスグマが出来、2頭で仲良くするさまが写される。ナヌーは雪の斜面に洞穴を掘り、その中にこもるのだった。一方、シーラも年頃のオスの唄うラヴソングに惹かれる。
 春になって、ナヌーにはオスとメスの子どもが誕生する。シーラにも子どもが生まれ、シーラのときのように1頭のセイウチがその子の「子守り」になる。

 映画の最後には、地球の温暖化によって北極の氷はどんどん減少していて、2040年には氷は亡くなってしまうおそれがあることが告げられる。「そのことを考えて、行動しよう!」と。

 観ていて、セイウチの群れがあまりに数が多いことに驚いたが、これはWikipediaで読むと、強いオスを中心とした「ハーレム」なのだという。
 やはりホッキョクグマに群れが襲われて群れは混乱するらしいが、そのときに仲間の下敷きになって死んでしまったりするそうだ(これは映画を観ていても「そういうことは起こりそうだ」と思った)。ただ、ホッキョクグマがセイウチを襲うのはけっこう稀なことらしい。

 ラストには、ホッキョクグマが雪の洞穴の中で出産したばかりの小さな小さな赤ちゃんの姿が見られてうれしかった。ナヌーに「彼氏」が出来て、2頭で雪の上でじゃれ合う姿も感動的だったな(この「ナヌー」は、映画の最初に出て来た「ナヌー」と同じ子ではないのだろうが。
 「地球温暖化」のせいでホッキョクグマが絶滅のおそれがあることはよく語られることだが、調べてみると「温暖化」だけでなく「環境汚染」の影響を最も受けているのがホッキョクグマだという。世界各地で発生する「残留性有機汚染物質」は、海流に乗って北極圏に集まって行くのだ。
 現在世界には約26000頭の個体がいると推定されているというが、2100年には絶滅するだろうという意見もある。

 この映画のDVDジャケットの子グマの写真もかわいいが、わたしはアメリカでのこの映画のポスターの、母親グマといっしょの写真が好きだ(向こうにセイウチの姿も見える)。