ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『日本列島 いきものたちの物語』(2012) 出田恵三:監督

 「総勢25人のカメラマンが日本全国30ヵ所以上で足かけ2年半にわたり撮影を敢行した」というNHK製作の作品。エンドロールにそういう動物たちを追っての撮影の様子が垣間見られる。岩合光昭氏や中村征夫氏など、著名な動物カメラマンも参加している。

 「日本列島」とはいっても、北は知床半島から南は屋久島まで、セレクトされた数ヶ所での撮影がメインになっている。季節的に「春」から始まり、「夏」「秋」を経て短い「冬」の描写、そして翌年の「春」までの一年を通し、基本的に動物たちの子育てから子どもの自立への過程を描いている。
 主に描かれる動物たちは、知床半島の「ヒグマ」、釧路湿原の「キタキツネ」、下北半島の「ニホンザル」、兵庫の六甲山の「イノシシ」、そして屋久島のニホンザルの亜種「ヤクザル」と。このメインの動物たちの合い間に、屋久島のシカ、アザラシとラッコ、カクレクマノミオオサンショウウオ、そしてタンチョウなどの短い映像が挿入されている。

 「春」の子育ての時期のほのぼのとした映像から、子どもたちは「自立」をうながされ、だんだんと厳しい自然の脅威と対峙するようになる。
 わたしは2~3年前に、NHKのテレビで放映される「自然のアルバム」みたいな番組で、やはり知床半島でのヒグマ、母グマと子グマを捉えた映像を見たことがあり、そこでは食糧を得られずに飢えて彷徨う母子の姿。そのうちに子グマはついに飢え死にしてしまい、母グマはさわっても反応のない子グマの遺体に反応を求め、ついには坂を転げ落としてしまう映像を見て、ただただ涙してしまったものだった。おまけにNHKはその後の「かわいい動物の親子」とかいう番組で、そのヒグマ親子の子グマもまだ元気だった頃の映像を流し、それを見てしまったわたしは、その子グマは死んでしまうことがわかっているものだから、また泣いてしまうのだった。この映画ではちょうど時節柄タイミングも良く、ヒグマの棲息する知床半島の岸辺にクジラの死骸が流れ着き、ヒグマ親子にとってまたとない「ごちそう」になるというシーンもあった。

 この映画でのヒグマ親子は無事に子グマ(2匹)も成長し、自立の道を歩んだようだったが、悲しいのは屋久島のサルの母子とか(屋久島の森林の中で、白骨化した子ザルと親ザルの姿はつらかった)、下北半島で母ザルがいなくなってしまった子ザルとかだった。
 まあ十年前のこの映画、当時はイノシシが市街地に侵入して暴走するとかいうこともなかっただろう。ヒグマの被害は昔っからあっただろうけれども、知床半島のヒグマは、今でも「地域個体群」として守ろうとする人たちがいる。
 この映画も、ラストには(ちょびっと唐突に)今日本に棲む哺乳類の2割、鳥類の1割、爬虫類の3割は「絶滅の危機」に瀕していると語られる。そんな動物たちも、人たちと同じようにこの「日本列島」に生きているのだというメッセージ。

 こういう動物モノのドキュメンタリーでは、わたしはイギリスBBC製作のモノを愛好し、そういうドキュメンタリーに比していささか感傷的すぎるように思ったりもしたが、こういう演出の方が、今まだ幼い子どもたちには訴えるところが大きいのか、とも思った。