ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『勝手にしやがれ!! 英雄計画』(1996) 黒沢清:監督

 『勝手にしやがれ!!』全6話の最終話。この回の脚本は大久保智康という人単独で、この人はこの後アニメの脚本家として有名になったようだ。
 今回のゲストは寺島進黒谷友香。そして「特別出演」として藤田敏八も。

 今回もヤクザに追い回されていた雄次と耕作だが、逃げる途中で追いかけるヤクザらが青柳(寺島進)にぶち当たり、青柳が「謝れ!」と絡んだところから雄次らは逃げることができた。
 あとで偶然青柳と出会った雄次と耕作は、青柳は「正義」の遂行に命をかけていることを知り、青柳はまず町のアパートに住む「ヤクザ」を町から追い出すことに使命感を持っていて、市民運動も立ち上げているのだった。
 雄次がその「ヤクザ」の雨宮(清水宏)に会ってみると、彼はただ「ヤクザ」のふりをしているだけの「元畳屋」で、悪事をやるわけでもない好漢で、雄次は雨宮のことがすっかり気に入ってしまうのだった。
 しかし青柳が雨宮に銃で足を撃たれるという事件が起き、市民運動も盛り上がり、雨宮はサッサと町を出て行ってしまう。市民会館で青柳の功績をたたえる宴会が行われ、町出身の代議士(藤田敏八)もやって来て、青柳を助手にする。
 そのとき、雄次は青柳が銃で撃たれたというのは「自作自演」だったとわかるのだが、青柳によって雄次自身の犯行とされ、警察に追われた雄次は姿を消すのだった。

 一年が経ち、青柳は議員となって「ホームレスの排除」などの運動を推し進めているのだった。ホームレスの人々も抵抗を続け、そこには青柳の妹の玲子(黒谷友香)の姿もあった。
 「住みにくい町になった」とぼやく耕作の前に、ホームレスらのリーダーとなった雄次と雨宮が戻って来るのだった。やがて、ホームレスらと青柳らとの「全面闘争」が始まるのだった。

 これまでの5作に比して、特にこの後半には「ハチャメチャ感」は希薄で、けっこうダイレクトに「これが黒沢清監督の主張なのか?」というようなメッセージ性が強い。
 その「メッセージ」とは「正義」という名に隠れた「排除性」「暴力性」の告発、というところでもあり、じっさいにこの時代から広範に叫ばれるようになった「ホームレス排除」ということがそのまま持ち出されてもいる。
 わたしの考えではこの問題は今もなお、SNSなどでの匿名の誹謗中傷投稿にあらわれてもいると思う。

 作品の終盤では舞台の町はほとんど「戦場」の様相を見せ、「SFディストピア」みたいなことになる。
 ラストで雄次と耕作はどこかへと消えて行くのだが、テーブルに突っ伏して眠っていた(?)由美子(洞口依子)がそんな雄次と耕作のことを思い出すような表情をみせて終わるのであった。
 こんなラストでも、エンディングにはちゃんと哀川翔前田耕陽とのデュエットで「森のクマさん」が流れるのであった。

 あ~あ、しかし『勝手にしやがれ!!』シリーズも、これで全部観てしまった。もう2人の「森のクマさん」が聴けなくなるかと思うと、寂しいのであった。