ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『勝手にしやがれ!! 成金計画』(1996) 黒沢清:監督

 『勝手にしやがれ!!』第5作。脚本に黒沢清に並んでじんのひろあきの名があるが、この人物はかつては『ノーライフキング』(1989)や『櫻の園』(1990)などの客品を手掛けた人で、監督作品もある。
 今回のゲストは"Wink"の鈴木早智子、そして「流山児★事務所」の塩野谷正幸

 さてさて、いきなり地下の駐車場での暴力団抗争の「撃ち合い」が展開し、珍しく諏訪太郎のキレッキレの「銃撃アクション」が見られたりするが、彼も撃たれて倒れ、両陣営とも全員倒れてしまうのだ。その場に偶然三奈子(鈴木早智子)が通りかかり、まだ息のあった諏訪太郎が彼女に「そこの車のトランクにヘロインが入ってるから、アンタにやるよ」と言って息絶える。
 三奈子は雄次らのアジトの前のゴミ集積所のゴミの山に気を失って車を突っ込み、雄次らに助けられ、手に入れたヘロインの話をする。ビニール袋1袋のヘロインは800グラムで、800万相当だろう。そこになぜか狂気じみた3人組の暴力団、それからやはり異様な麻薬バイヤーがあらわれ、「ヘロインをよこせ」と迫る。雄次らはかんたんに彼らを撃退するが、三奈子はそのヘロインを処分して、その金で不倫中の岡田(塩野谷正幸)といっしょになるのだと言う。
 実は三奈子が手に入れたヘロインの量はだんだん増えて来て、最後にはヘロインのビニール袋10袋入りの手提げ紙袋で10袋、合計8億円相当ものヘロインがあるのだった。これだけの量のヘロイン、しろうとにさばけるものでもないし、一度にこれだけ闇世界に出回ると「ヘロインの相場」も狂ってしまう。
 一度消えた暴力団も麻薬バイヤーも何度もやって来るし、しまいには三奈子は「幸せはお金で買えるものではない」と悟り、すべてのヘロインを捨ててしまおうとするのであった。

 ほとんど「マクガフィン」である大量のヘロインをめぐって、今までになくナンセンスで意味不明な展開になるこの作品。白いゴミ袋が積まれてていれば車は必ずそこに突っ込んで行くし、空の段ボール箱が積み重ねられていれば、そこに人間がぶち当たる。狂気じみた暴力団も麻薬バイヤーも、まったくリアリティーのないギャグをかますためにだけ登場するみたいだし、「アホらしい」といえばこの上なくアホらしく、それが「楽しい」と思えればこんなに楽しい作品もない。
 午後の無為な時間を魔法のように楽しませてくれるシリーズだが、残りもあと1本になってしまったなあ。