ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『勝手にしやがれ!! 脱出計画』(1995) 黒沢清:監督

 『勝手にしやがれ!!』第2作。今回は黒沢清の単独脚本で、雄次(哀川翔)と耕作(前田耕陽)の2人は今回は「日本脱出」を図る。
 オープニングは第1話とまったく同じく、谷中の角で2人が出会い、「夕焼けだんだん」をチャリンコで駆け下りるのだが、第1話の映像の使い回しではなく、キチンと同じことを同じように撮り直している。これは全6話、ずっと通して同じだったりするのだろうか?

 今回は暴力団神崎組の組長が「自分の娘のアスカに手を出した男がいる。その男をひっぱってきたら200万出す!」と仕事を持ち掛け、雄次と耕作はみごとその予備校生の木村という男をつかまえて連れて行き、200万せしめるのであった。耕作は200万あれば何でも日本の5分の1の値段だというオーストラリアに行きたくなってしまう。200万は1000万になるのだ。最初はオーストラリアへ行くなんてトンデモないと思っていた雄次も、けっきょく行くことに同意する。
 組長らにボコボコにされた木村は雄次の部屋に逃げ込んで来るが、別に木村はアスカのことを好きなわけでもなく、本当は陽子というコが本命なのだという。雄次と耕作は木村への罪ほろぼしに彼もオーストラリアに誘おうとするが、木村にはオーストラリアに農園をやっている叔父がいるという。さらに木村は陽子といっしょでないと行かないといい、何かというとすぐに自殺しそうになる。
 やむなく雄次は近所の大学(東京芸大だ!)にいた陽子に声をかけるが、実は木村は陽子に2、3回しかあったことがないという。雄次が話をしていると陽子は逆に雄次に惚れてしまったようで、「あなたが後押ししてくれればわたしはオーストラリアにも行くわ!」となる(ここでの雄次の「オーストラリア行き」への口説きがいいのだ!)。これでオーストラリア行きは4人になる。

 木村のことが忘れられないアスカは、ついに木村が雄次の部屋にいることを突き止めてやって来るのだが、そこで陽子はアスカの妹、同じ神崎組組長の娘なのだということがわかるのだった。アスカも「どこまでも木村くんについて行く」となって、オーストラリア行きは5人になってしまったのだった。
 しかし、アスカのあとを追って来た神崎組組員に皆は追われることになってしまうが、組員の一人、芹沢という男が「組長のやり方がイヤになった」と、5人を守っていっしょに逃げるのだった。芹沢もオーストラリアへ逃げることになり、オーストラリア行きは合計6人だ。

 オーストラリア行きの貨物船まで乗せてくれる漁船が来ることになり、桟橋で待っているところに神崎組の追手が来る。折しもやって来た漁船に皆が乗り込むが(漁船の船長は諏訪太郎であった)、芹沢がひとり食い止めようと組員らに向かう。しかし、黒沢映画らしく芹沢は組員に唐突に撃ち殺されてしまう。それを見た雄次と耕作は、「ここで逃げるわけにはいかない!食い止めるのはオレたちだ!」と組員たちに立ち向かっていくのだった。漁船は3人を乗せて沖へと出て行くが。

 ははは、スッキリと面白いね!(つい、ストーリーを全部書いてしまった) しかも黒沢清らしい演出の冴えも随所に見られるし(今回は浅草の「アサヒビール吾妻橋ビル」、通称うんこビル、昔の「アサヒ・アートスクエア」をバックにした雄次と耕作の対話シーンのカメラが素晴らしかった)、脚本のチープさ、ばかばかしさをしっかり盛り上げてくれるのである。そうだ、前回に続いての、ラストの2人の歌う「森のクマさん」も最高である! あと4作、楽しみである。