ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』(1972) ジャン=クロード・カリエール、ルイス・ブニュエル:脚本 ルイス・ブニュエル:監督

 ああ、この作品は2,3度観ていて、けっこう内容も記憶していたわ。特に、何度も皆が集まるセネシャル家のメイドの顔とかよく覚えていて、この人の日本でいえば小池栄子みたいな、流線型の「新幹線みたいな顔」が気にかかり、今回は調べられるだけ調べてしまった。

       

 この女優さんはミレーナ・ヴコティッチ(Milena Vukotic)というイタリアの女優さんで、ブニュエルの作品にはこのあとにも出演されているようだし、あとはフェリーニの『魂のジュリエッタ』や『世にも怪奇な物語』、ジャン=ジャック・ベネックスの『溝の中の月』、そしてタルコフスキーの『ノスタルジア』などに出演されているという。やはりさすがに、いろいろな名作に出演されておられるようだったが、とにかくわたしは、この『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』での、ミレーナ・ヴコティッチという女優さんが気に入ってしまったのだった。

 今の日本では「夢オチ」などという便利な言葉があって、この『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』なんか、「み~んな<夢オチ>じゃないか!」とのたまってしまえば「批評」もおしまいになってしまうが、そういうことでいいのか。例えば「デウス・エクス・マキナ」と言ってしまってもいいが、そういうことで「ああ、『大怪獣のあとしまつ』はけっきょく<デウス・エクス・マキナ>だよ」とか、「ブニュエルの『ブルジョワジーの密かな愉しみ』はみ~んな<夢オチ>だよ」と言ってしまうようなもので、実は「批評」をすべてそういう、「デウス・エクス・マキナ」だとか「夢オチ」とかの言葉に預けてしまい、その先に進まないケースがままにある。

 ま、この映画に関して「コレはブルジョワ階級への批判だよ」とか「聖職者への皮肉だよ」と言ってしまったとしても、映画はスラっとそういうことを抜け出して、ただ畑の中の道を歩み続ける6人のブルジョワたちに収斂してしまう。そのシーンがなぜ「おかしみ」を伴うのかということは、この映画をたっぷりと観なければいけないのだ。