ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『銀河』(1968) ジャン=クロード・カリエール、ルイス・ブニュエル:脚本 ルイス・ブニュエル:監督

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  • ポール・フランクール
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 この作品、前に観た『ブルジョワジーの密かな愉しみ』や『自由の幻想』と同じく、ブニュエル流のコメディー映画だろうが、ここでは「キリスト教」というものを茶化しているのだとはっきりとわかる。しかしその「茶化し方」は半端なものではなく、Wikipediaによれば「キリスト教異端事典」をもとに脚本は書かれているとされ、映画のラストには「この映画の中の宗教に関する部分は すべて古今の文書から引用されたものである」との字幕があらわれる。
 
 作品はそれでも「ロード・ムーヴィー」というか、若い男と初老の男との二人が、フランスのフォンテーヌブロー(ただ何もない道沿いに「フォンテーヌブロー」と看板が出てるだけだが)からスペインの町サンチャゴ・デ・コンポステーラへと「巡礼の旅(ヒッチハイク)」をするだけの話なのだが、そのとちゅうで二人はいろんな人々に出会い、いろんな出来事を体験するのである(欧米の言語で「銀河」とは、コンポステーラへの巡礼を意味していたのだと、映画の冒頭では語られる)。
 それら出会う人々、体験する出来事らは、いずれもキリスト伝説や処女マリア伝説など、そしてキリスト教にからむことばかりである。もちろんブニュエルは筋金入りの「無神論者」なのではあるが、この映画でどこまでその「無神論」を本気で振りかざしているのかは不明で、けっこうキリスト教を擁護しているようにも見えるところがいかにもブニュエル作品だろう。

 映画の中で二人が「自由」ということについて語り合うシーンがある。
「自由って何だ?」
「善と悪 どちらにするか選べるということさ」
「神様なら分かるだろう 俺が悪を選ぶのはお見通しだ」
「前からご存じだ」
「前から決まってるのに 自由と言えるか?」
「自由意志という 善を選ぶよう神が導くんだ」
「悪を選ぶと知ってるなら 選んだのは神だろう なぜ悪を選ばせた?」
「神のお考えは分からない」
 などと語り合うのだが、このことは、昨日観た『自由の幻想』のテーマとも重なり合うようだ。
 ただ、宗教を題材とした「コメディー映画」だと打ち捨てられないのが、ブニュエルの映画のむずかしいところだろう。