ワニ狩り連絡帳2

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『始皇帝暗殺』(1998) チェン・カイコー:脚本・監督

始皇帝暗殺 [DVD]

始皇帝暗殺 [DVD]

  • 発売日: 2009/11/20
  • メディア: DVD

 わたしは無知なので「史記」や「三国志」の内容についても何も知らなかったし、この映画で描かれた秦の始皇帝「政」のことや、ましてやこの映画の一方の主役である「荊軻」、そして両人のあいだでの重要な存在だった「趙姫」について、この映画を観るまでは何ひとつ知ってはいなかった。そんな状態で観た「始皇帝暗殺の企み」の映画。監督は『さらば、わが愛/覇王別姫』のチェン・カイコー。中国、日本、フランスの共同製作映画である。

 まず先に書けば、膨大な数のエキストラの登場(近年の映画のようなCGではないことは見ればわかる)、様々な美術装置、ロケーションの駆使などの圧倒的なスケールには驚かされ、あのウィリアム・ワイラーの『ベン・ハー』かよ!(たとえが古臭い!)とも思ってしまう。おそらくはチェン・カイコーも、そんなこの作品の「圧倒的な規模」というのをひとつの「勝負」駒とは考えていたのではないかと思う。たしかにすごい。
 しかしながら、そんな「すごいねー」という映像も、観続けていると同じようなロケーションも多用されているし、何といっても映画の中でシンメトリー(左右対称)構図が多すぎる感を受ける。「壮大さ」を打ち出すためにシンメトリーに頼るのはわからないでもないのだけれども、いつもいつもだと「こういうシーン、前にもあったよね?」みたいに思ってしまう。

 ちょっと不必要な「辛口」なことを書き続ければ、ヒーローのふたり、「政」と「荊軻」を演じる俳優に魅力がない。別に「これぞアクション映画のヒーロー!」という配役がいいと思っているわけではないのだけれども、どこか「精悍さ」を視覚的に訴えてくれないと、正直観続けるのがキツいところがある(特に「荊軻」を演じた俳優さんは、けっこう人気のある俳優さんだったようで、初見でこんなことを書いて申し訳ありません)。
 これは演出の面のことでもあるのだけれども、特に冒頭しばらくの「政」の「趙姫」に会うときの「浮かれ加減」というのはこれは「軽薄」という印象で、観ていても「コイツ、アホかよ?」みたいなことになる。もちろん「政」がどれだけ「趙姫」に惚れているかという描写は必要だろうけれども、結果としてこれでは、「秦の始皇帝とはアホだったのではないか?」ということにもなってしまう(まあちゃんと観ていればそこまで辛辣なことは思わないが、やはり違和感はある)。
 クライマックスの「暗殺」の場面も、「いったい何ゆえに失敗してしまったのか?」がよくわからなかった。

 スケールの大きな映画ではあろうけれども、わたしには特に記憶にとどめようと思うような作品ではなかった。ごめんなさい。