ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

「サスペリア」(1977) ダリオ・アルジェント:監督・脚本

 公開の始まったリメイク版新作を観る前に、オリジナルの「サスペリア」を観た。ヒロインはアメリカからベルリンのバレエ学校に入学したスージージェシカ・ハーパー)。学校は寄宿舎制になっていて、そこに住んでいるのは女性ばかりのようだ。夜中に空港からタクシーで学校に到着したスージーの前で、学校の玄関ドアからひとりの女性が飛び出して来る。スージーは学校に入れてもらえず、視点はその、学校から飛び出して行ったパットという女性を追って行くのだが、彼女は自分のアパートで正体不明の存在に襲われ、ナイフでめった刺しにされて殺されてしまう。

 ‥‥いきなり、という展開で、「これはどのような展開になって行くのだろうか」と思うのだが、どうも作品として「謎解き」を進めて行くというのでもなく、その後も唐突に死者が出ることになる。「不在の理事長」というのが本当は学校にいるのではないのか、というほのめかしはあるのだが、そもそもいったいなぜ、殺人が繰り返されるのかはわからない(パットは何らかの秘密を知っていたらしいのだが)。観ている感じは、これは「人が殺される」ということを描いて行く、いっしゅの「ファンタジー」なのではないかと思うのだった。
 それはそのような「殺人」のシーンでのセット、照明などの美術の凝り方、ゴブリンによる音楽からも感じられるところで、リアリズムからは距離を置いた演出であることはまちがいない。赤を基調とした照明は緑から青との変化も見せ、アールヌーヴォー風のドアのデザイン、長い長いくねった廊下の壁模様などにもアート指向が感じられ、観終わったあとも、「謎を解く」というようなものではなく、ひとつの美意識につらぬかれた、ファンタジーとしてのホラー映画なのだろうと思うのだった。