ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『オリエント急行殺人事件』(2017)アガサ・クリスティ:原作 ケネス・ブラナー:監督

 わたしは推理小説のファンではないし、アガサ・クリスティの本は一冊も読んだことがない。だからこの有名な『オリエント急行殺人事件』の犯人は誰だったのかということなど、まるで知らないでこの映画を観始めた。
 わたしとしてはコレは推理小説の映画化なのだから、映画の中に隠されたヒントをもとに、観客もいっしょになって「犯人は誰?」と推理するような映画だと思っていたのだけれども。

 イスタンブール発の「オリエント急行」の客室内で殺人事件が起きる。偶然同じ列車に乗り合わせていたエルキュール・ポアロが事件を解明するわけだ。
 殺された男はその前日、ポアロに「自分は狙われているから警護してほしい」と申し込んでいたが、ポアロは男に「胡散臭さ」を感じて警護を断っていた。彼は古美術売買の詐欺で命を狙われていると言っていたが、実は彼の犯罪はそれだけではなかった。
 犯罪の夜、同じ車両に乗り合わせていたのは12人。とりあえずはその12人すべてが容疑者で、ポアロは全員に聞き込み調査をする。とりあえず全員にアリバイはあるようだったが。

 しかし、ポアロは「この殺人事件の背後にはもっと大きな事件が関わっている」ということは推測しているわけで、そこから人々の「背後事情」を推定して行くのだが、(原作のことはわからないが)この映画で観る限りでは「さすがポアロ!名推理!」としか言いようがない。それは観客が映画を観ながら気づくような事柄ではなく、観客が推理するということは不可能だ。そういうことでいいものなのだろうか。
 でもわたしは、ポアロが12人それぞれへの聞き込みで「12人に共通するある事象」が明らかになったとき、「そんな背景を持つ12人が偶然にも同じ列車に乗り合わせることはあり得ないだろう」と、事件の真相はちょっと早くにわかってしまったけれどもね。

 しかしそれにしても、ラストでポアロが拳銃を皆の前に置き、「わたしを撃ちたまえ!」とすること、そのあとにある人物がその銃を手にする展開というのは「不可解」。というか、わたしには何をあらわそうとしていたのか全くわからなかった(まさか、原作もそうなっていたとは思えないが)。

 監督はこの作品でポアロを演じているケネス・ブラナー自身が担当していて、冒頭からやけにトリッキーでギミックな撮影がつづき、まあ「閉ざされた列車内での犯行」という「密室殺人」の要素のあるこの作品、列車内の撮影に凝るというのもわかるのだけれども、ドラマの進行とそういう凝った撮影というのは、マッチしていなかったと思う。
 同じケネス・ブラナー監督の『ベルファスト』はかなり楽しんで観た映画だったけれども、残念。