(詳しくは「日記」の方に書いたが)わたしはどうも難聴気味らしく(この映画を観てわかった)、セリフがしかと聴き取れなかったもので、しっかりと映画を了解していない部分もあるだろうが、わたしはタイトルの「悪は存在しない」というのは、その前に(自然界には)という言葉を足し、「自然界には悪は存在しない」ということと解釈した。
しかし、「悪」はよそからやって来る。ラストの唐突な、とんでもないジャンプカットにはほとんど観ていても狼狽してしまったが、単純に自然礼賛ではない、どこか恐ろしい映画だと思った。
聴き取れなかったこともあり、もう一度観に行きたい。そしてちゃんとした感想も、そのときに書きたい。
今書けることだけでも少し書いておけば、まず撮影(北川喜雄)が印象に残る。冒頭の(あとでも繰り返される)林の中を下から見上げてゆっくり移動して行くカメラが美しかったし、そのあとの固定位置からの長回し主体の撮影も心に残る。
全体に、林の中のシーンが多かったせいなのか、わたしはなぜかアッバス・キアロスタミ監督の作品のことを思い浮かべてしまった。
そして、そんな絵とマッチした石橋英子の音楽もまた、素晴らしかった。