ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『ナイル殺人事件』(2022)アガサ・クリスティ:原作 ケネス・ブラナー:監督

 昨日『ユージュアル・サスペクツ』を観て、ちょっとがっかりしたもので、今日はアガサ・クリスティの原作、ケネス・ブラナーの監督と主演の『ナイル殺人事件』を観てみた。これからしばらくは、ひょっとしたらこうやって「犯人当て」みたいなミステリー映画を観て行くかもしれない(そういうのが好きなわけではないけれども)。

 ケネス・ブラナーのポワロもの前作、『オリエント急行殺人事件』は決して気に入った映画ではなかったけれども、「推理もの」ということをはみ出して、戦中のヨーロッパ史まで取り込んでいたわけで、「単に推理するだけ」という映画ではなかったことでわたしが今期待する「推理もの」ではあった。それならばこの『ナイル殺人事件』もまたそういうことは期待出来そうだし、まさかもう、『オリエント急行殺人事件』みたいな犯人像、ということもないだろう。そう思いながらこの映画を観た。

 前作『オリエント急行殺人事件』のラストで、ポワロが「次はナイルへ行かなくては」みたいなことを言っていたが、そういう感じでつながりのある作品ではなく、まったく独立した作品。

 富豪の娘であるリネットが、カイロでサイモンという男との婚約を発表し、友人関係者一同はクルーズ船「カルナック号」を借り切り、ナイル河周遊観光に出発する。ポワロもまた、リネットに「身辺を見張ってくれ」と頼まれて同行するのだが。そこにサイモンの元恋人のジャクリーンが乗り込んできて、不穏な空気が流れる。
 それで「やっぱり」というか、リネットが自室で寝ているところを射殺されるのである。その直前にジャクリーンとサイモンの痴話喧嘩が起きていて、サイモンはジャクリーンに足を撃たれている。ジャクリーンもサイモンも犯人でないように思われるが。

 「オリエント急行」と同じように、関係者しかいないクルーズ船が舞台で、こういう「密室劇」みたいな状況は、推理小説では何というのだろう。
 しかし船上の乗客はみ~んな、リネットかその親かに恨みを持っているような人ばかり。ポワロは全員を一室に集めて、ひとりひとりにリネット殺害の動機があるようなことを順番に告発して行くわけだけれども、わたしは原作がどうなってるのかしらないけれども、「これはいただけない」と思う(「映画的」に見せようとすれば、こうなってしまうのだろうが)。だって、皆それぞれに「動機」はあったかもしれないが、ポワロはたいていの人物は「犯人ではない」ことを知っているというのに、彼ら彼女らが「人には隠しておきたい」と思っているであろう被害者またはその親への恨みを皆に知らしめるというのは、よろしくないんではないのか。おまけに中にはレズビアンであることまでほのめかされるというのでは、ポワロの行為はまったく褒められたものではないだろう(そもそも、ポワロはさいしょっから犯人の目星はつけているわけだし)。
 ポワロがもっと慎重にことを進めれば、ラストで犯人ら3人は死ぬことはなかったのではないだろうか。そういう意味では「探偵失格」って気がしてしまう。

 ケネス・ブラナーの演出はだいたい『オリエント急行殺人事件』のときと同じく「ギミック」なものであり、今回はナイル河沿岸のピラミッドやアブ・シンベル神殿など、観光旅行的に観客の目を楽しませてもくれたが。
 しかしけっきょくやはり、昨日の『ユージュアル・サスペクツ』と同じように、「犯人探し」映画はつまらないのではないか、というわたしの印象をくつがえしてくれるような映画ではなかった。

 映画でリネットを演じているガル・ガドット、「最近この人の名まえを聞いたなあ」と思ったら、(白雪姫役の主演女優の放言など)いろいろと炎上していたディズニーの実写版「白雪姫」で「王妃」を演じたという方で、ネット上では皆が、ガル・ガドットが鏡に「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだ~れ?」と聞いたなら、鏡は「それはあなたです!」と答え、そこで映画は終わってしまうのだと騒いでいたのだった。この「白雪姫」の公開は、来年まで延期にされてしまったようだ。