ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『オー!』(1968) ジョゼ・ジョヴァンニ:原作 ロベール・アンリコ:監督

 この映画はただ、「ジョアンナ・シムカス」見たさに観た映画。ジョアンナ・シムカスという女優さんは、この作品と同じロベール・アンリコの大ヒット作品『冒険者たち』で知られているけれども、あんまり映画界で活躍しないうちに、後に共演したシドニー・ポワチエと結婚して映画界を引退してしまったのだったわけで、今日本で観ることの出来る彼女の出演作も少ない。そんな中で、わたしが今まで観ていなかった作品が、このジャン=ポール・ベルモンドと共演した『オー!』だった。この作品の前には、やはりロベール・アンリコ監督の『若草の萌えるころ』でヒロインを演じていて、ずいぶんとロベール・アンリコ監督と相性がいい。

 さて、やはり『冒険者たち』はいっしゅ傑作ではあるし、『若草の萌えるころ』も、(あまりよくは憶えていないが)青春映画の秀作だったと思う。それでこの『オー!』。この原作は、『冒険者たち』と同じくジョゼ・ジョヴァンニであるが。
 う~ん、けっこう漫画チックというか、シリアスな犯罪ドラマからはちょっと距離がある。こういうところの中に「リアリティ」があったと考えたことも了解は出来るけれども、「愚かさ」を先に感じてしまう。

 主人公のオラン(通称:オー)は元カーレーサーだったけれども、レース中の事故で友人のレーサーは死に、彼もライセンスをはく奪され、今は「強盗団」の逃がし屋をやっている。それでもモデルのベネディットと付き合っていて、彼女は今や売れっ子である。
 強盗団が次の強盗を企てていたときに、そのボスが自分の銃の暴発で死んでしまう。オランは強盗は自分で仕切ろうと思うのだが、そんなときに車を盗んですぐに逮捕され、監獄入りしてしまう。
 その監獄の同室に刑期の短いホームレスの男が来て、オランはうまく彼に化けて監獄を出てしまう。このことは新聞に大きく取り上げられ、彼は「ルパン+カポネ」だと持ち上げられオランを喜ばせる。その新聞を大量に買い、自分の名刺代わりに使ったり、その記事を書いた記者とコンタクトを取り、自分が「一流のカーレーサー」であったことなどを新聞に書かせる。この記事でベネディットとの仲ももどったり。
 オランは若いチンピラらと組んで、銀行の金を強奪するが、隠れ家に戻ると、以前の強盗仲間が待ち伏せしているのだった。

 いっしゅ「劇場型」犯罪人とでもいうのか、自分の犯罪がメディアに書きたてられることに喜びを感じる男だし、そんな記事を「自己宣伝」の材料にするあたり、ガキっぽいのだけれども、今でもじっさいに存在する人種だろう。それはいいのだが、そういうことがキャラクターとして面白みがあるかというと、わたしにはそういうこともない。ジャン=ポール・ベルモンドの持つ軽薄そうなイメージがこのキャラには似合っているとはいっても、もうちょっと「スタイリッシュ」であったならばなあ、という気はする(ネクタイを集める趣味はあるのだが、それが70年代ファッションなので、今観るとやっぱりダサいのだ)。

 お目当てのジョアンナ・シムカスはやはり良かったのだが、ラストに(『冒険者たち』と同じに)死んでしまうのは、例え映画とはいえ残念だ。