ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『猫が教えてくれたこと』(2016) チェイダ・トルン:監督

 イスタンブールの街頭で生きるネコたちを捉えた、トルコのドキュメンタリー映画
 イスタンブールの街には10万を超えるネコが生活しているといい、イスタンブールの人たちとの親密な暮らしで生きている。それは単にネコたちにとって「生きやすい」というだけでなく、街の人たちの生きざまをも豊かなものにしている。
 ある人は重いうつ病に悩んでいたが、街のネコたちにエサを与えて歩くことで、だんだんに病から立ち直る。街全体が、まさに「ネコとの共生」を目論んだ街づくりを目指しているようだ。街のあちこちに、ネコたちを救済するための「募金箱」が設置されている。

 ネコたちはその映像を見るだけでかわいく、見ているこちらも癒されもするのだけれども、このドキュメントではそんなイスタンブールの街のネコの何頭かを選び、追跡する。カメラの位置を低く構え、進んで行くネコの動きを追って行く。「野生」の部分を見せてくれるネコもいるし、人間との生活をエンジョイ(?)しているようなネコの姿もある。
 登場する人が面白いことを言っていた。「イヌにとっては人間が<神>なのだが、ネコは人間というのは<神の代理人>だと思っている」と。それはネコにとっては人間は「絶対的な君主」ではなく、ネコたちの生きるのを助けてくれる存在。けっこうネコたちの思うがままに生きさせてくれる「主人」だという感じだろうか。そして、何よりも、ネコにとって人間は「良きパートナー」だろうか。
 わたしも、自宅でニェネントくんといっしょに暮していて、何よりも「良きパートナー」でありたいと思っているわけだ。

 このドキュメントに出て来るネコたちは基本的に「野良ネコ」で、中には首輪をしているネコも登場するから飼われているネコもいるのだろうけれども、そんな「飼い猫」もみ~んな「外飼い」である。
 日本では「ネコは室内飼いすべきだ」という声が大きく、わたしとてそんな声に反対してニェネントくんを家の外に出してあげようとは思いはしないのだけれども、こういうことは多大に住宅環境によるものも大きいようで、先日見た「イギリスでの飼いネコの行動範囲を調査する」ドキュメントでは、み~んな「外飼い」だったのだ。まあ車の往来もない緑豊かな田舎(カントリー)ゆえ、ではあっただろうが。
 このドキュメントでも、ポジティブな側面だけを取り上げて、戸外でネコたちが暮らすことのネガティブな面を取り上げていないという批判もあるようだけれども(やはりイスタンブールも都会だから、交通事故に遭うネコも多いらしいし、それなりに「困ったこと」もあるようだ)、ま、このドキュメンタリーはそんなトータルに「都会でのネコの生活」を紹介するものでもないのだから、「いい面」だけを見せてくれていいのではないかと思う。

 あとこの作品、音楽が聴きごたえがあったというか、(エレキ・バンドを含む)さまざまなイスラム圏音楽を聴くことが出来た。むかし日本でもヒットした「ウスクダラ」の現地(オリジナル)ヴァージョンを聴けたのはうれしかったが、そ~んな歌詞だったのか!という感じだ。

 個人的なことをさいごに書けば、「ネコを愛せる人は人をも愛せるのだ」みたいな言葉があったが、わたしはニェネントくんを何よりも愛しているつもりでいるけれども、考えてみたら今までのわたしの人生で、実は人を愛したことなどないのではないかと思ってしまった。
 何人か大事な友人はいるし、娘(娘がいるのだ)のことは愛おしく思っているが、それ以外に(特に女性)人をしっかりと愛したことなどなかったように思う。悪いけど両親もだ。
 ひょんなことから、自分がそんな出来損ないの人間であることを認識させられたりしてしまった。とにかくは愛するニェネントくんとしっかり生きて行こう。