- 作者: 中島敦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/01/01
- メディア: Kindle版
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孔子に惚れ込んで弟子入りした子路の生涯を、孔子との関係で凝縮して描いた短編(「弟子」と書いて「ていし」と読む)。
子路は直情の人ではあるが、孔子の中にその「直情径行」を越えるもの、つまり自らを越えるものをみていたのだろうか。時には孔子の妥協的な考えに不満も持つのだが、いってみれば「ま、しょうがない」みたいな気もちだったのだろうか?
孔子は孔子で、子路のことをほとんど「一番弟子」のように目をかけている。こちらもまた、子路の直情径行を「ま、しょうがない」みたいにみているようでもある。この二人の、長い関係を的確な文語で凝縮した短編、やはり見事である。
中島敦はそのあまりに短い生涯の晩年に、『西遊記』に没頭していたという。ここでも、西遊記の三蔵法師と孫悟空との関係でこの作品をみるような読み方があるようだ。わたしはまだ、あまりに中島敦について知ることがない。