- 作者: 中島敦
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/01/01
- メディア: Kindle版
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漢の武帝の時代の物語である。物語の中心には武帝に仕えて匈奴と戦った李陵がいるわけだが、匈奴に捕らえられて「不忠」の疑惑の持ち上がった李陵を、武帝に逆らっても擁護した司馬遷、そして匈奴の地にやはり捕らえられていた蘇武、この三人それぞれの国(漢)への思い、その「運命」が、漢文調の硬質な文章で語られる。
もちろん原典がある歴史上の物語を中島敦が取り入れ、「翻訳」ではないオリジナリティを持った「物語」として完成させているわけで、読んでいてただただ、中島敦の絶妙な語り口に酔うわけである。
特に前半、五千の兵で匈奴に立ち向かい、やがて敗れることになる李陵の軍の描写の面白さは格別だった。