ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

「不滅の女」(1963) アラン・ロブ=グリエ:脚本・監督

 ロブ=グリエの初監督作品で、舞台はイスタンブール。ちらっとパンフレットを読むと、実はこの映画は「去年マリエンバートで」の前からプロジェクトが進んでいたのが、トルコの政情不安で一時中断、そのあいだに「去年マリエンバートで」が先に撮られたのだということ。で、ストーリー面でも映像面でも、「去年マリエンバートで」を思わせるようなところがいろいろとある作品だと思った。
 それでまたも、この作品の展開のすべてが主人公の男の<妄想>なのではないか、というのも先に観た(作品としては20年のちにつくられた)「囚われの美女」と同様で、「囚われの美女」と共通するポイントもあまりに多い。

 とりあえずは、「モノクロ映画」とはいえ、イスタンブールの風景に惹かれてしまうわけで、観光地のモスクの美しい建築と、裏町に回っての<廃墟>に近しい木造建築との落差。ネコもいるぞ。そして、川沿いの広場にたたずむ群衆のロングショットは、どうみても「去年マリエンバートで」を思い起こさせられる。
 「存在したはずの女」〜「ファム・ファタールとしての女」を追い求めるのはロブ=グリエの「固定観念」なのだろうか? ここでも時間軸はまるで確定せず、現実と妄想との区別はつかないし、そのことはフランス語と、主人公の男には理解できないトルコ語との錯綜で拍車がかかる。やはり、ロブ=グリエの映画はあまりに面白い。それはやはり、これが単にストーリーを伝えるための映像ではなく、映画技法と一身となって、その映画物語を観客に<体験>させるという魅力、なのだろうか。

 この作品には、とっても小柄な魅力的な女性、カトリーヌ・ロブ=グリエという女性が出演しているのだが、彼女はもちろんアラン・ロブ=グリエ夫人。アランとカトリーヌはこのイスタンブールでさいしょに出会ったということも、イスタンブールでこの映画を撮ろうという後押しになったらしい。さらにさらに、一時話題になったジャン・ド・ヴェール作の「哲学的ポルノ小説」の「イマージュ」(日本でも文庫本にまでなった)の、そのジャン・ド・ヴェールとはまさにこの、カトリーヌ・ロブ=グリエだったのだ、ということ。ちょっとびっくり!