ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『怪獣大戦争』(1965) 円谷英二:特技監督 本多猪四郎:監督

 ここまでのゴジラ映画は、アメリカでも再編集、英語吹替されて公開されていたのだけれども、そのユナイテッド・プロダクションズ・オブ・アメリカ(UPA)は、プロデューサーのヘンリー・G・サパースタインに「アメリカで公開するための高品質の怪獣映画」を購入するように依頼した。それでサパースタインは東宝と交渉を始め、まずはアメリカ資本で製作された『フランケンシュタイン対地底怪獣』(同じ1965年公開)に参加した。そのまま彼はこの『怪獣大戦争』にも企画段階から関わることになった。
 この過程でサパースタインは「アメリカ公開を見越してアメリカ人俳優を起用するよう」に求め、ニック・アダムスが主演格で出演することになった。映画の中でニックはずっと英語をしゃべっていて日本人俳優と「会話が成り立っているフリ」をしているけれども、公開時にはニックの声は納谷悟朗によって日本語に吹き替えられた。
 作品として、東宝の二大特撮看板である「怪獣映画」と、『地球防衛軍』に始まる「空想科学映画」を融合させ、特撮ものの集大成を狙ったもので、前作『三大怪獣 地球最大の決戦』の、人類と融合した「金星人」よりもはっきりと「宇宙人」であるところの「X星人」が登場し、怪獣の戦いとドラマの一部分が、その「X星」が舞台とされることになってしまった。

 映画は人気のある伊福部昭の「怪獣大戦争マーチ」で始まるが、いきなり舞台は宇宙。時は196X年、木星の裏側に発見された新惑星「X星」の調査のために、地球連合宇宙局のパイロット富士(宝田明)とグレン(ニック・アダムス)がロケットで向かうのだ。「X星」に2人が降り立ってみると、そこには「X星人」がいて、「自分たちはキングギドラに苦しめられている。地球からゴジララドンを借り受けて、キングギドラをやっつけたい。お礼に自分たちが開発した『ガンの特効薬』データを差し上げよう」というのであった。

 だいたいゴジラにせよラドンにせよ地球に災害をもたらす「じゃまもの」なんだから、欲しいと言うんならいっそあげちゃえばいいようなものだが、とにかくは条件を承諾するわけだ。
 地球にやって来たX星の円盤がビーム光線でゴジララドンをX星に運び、キングギドラと対戦。とにかくはキングギドラを撃退し、富士とグレンとは「ガンの特効薬」データをもらって地球に戻る。X星に「置いてけぼりにされる」ゴジララドンの恨めしそうな顔。
 地球に戻った2人が「ガンの特効薬」データのテープを皆で聞いてみると、そこにはX星人の地球への「宣戦布告」があり、「24時間以内に降伏するか滅亡するか」だという。地球制圧のため、X星人の電磁波であやつられることとなったゴジララドンも地球に戻り、暴れはじめる。また、実はX星人はキングギドラのこともコントロールしていて、キングギドラもまた地球にやって来る(キングギドラをコントロールしてるんなら、なんでわざわざゴジララドンをX星に連れてきたのか?と思うが、X星人はX星にゴジララドンを連れて来て、それで2匹をコントロールできるようにしたのだ、と解釈しておこう)。
 ま、この基本ストーリーに並行して、X星人の地球侵略前線基地だった「世界教育社」、そこにいる波川(水野久美)の話とか、不協和音を発する「護身器」を発明した鳥井(久保明)の話とかもあるんだけれども、割愛。
 けっきょく地球では即座にX星人の「電磁波」を遮断する兵器を開発(超高速の開発だ!)、ゴジララドンとはX星人のコントロールを解かれ、前作からの「敵」キングギドラに協力して立ち向かうのだ。
 そしてここで「不協和音」に弱いことがわかったX星人は、先にちょっと書いた「護身器」の出す「不協和音」にみ~んな倒されてしまうのだ。
 キングギドラゴジララドンともみ合いになり、おだんごになって海中に転落(このところ、毎回ラストは「海中への転落」なのだなあ)。海から浮かび上がったキングギドラは、またまた「空の彼方」へと飛び去るのであった。ゴジララドンは「行方不明」。

 でも、なぜ今回「モスラ」は登場しなかったのだろう? それはおそらく、X星人は電磁波でモスラをコントロールすることが出来ないと判断していたのだろうね。モスラは昆虫だし。
 ゴジラの「おちゃらけ度」は加速し、当時の赤塚不二夫のマンガ「おそ松くん」中で登場人物イヤミが日本中に流行させた「シェ―!」のポーズを取ったりしてしまうのだ。これは特撮監督の円谷英二が「(子供が喜ぶから)やろう!」と言い出したらしいが、ゴジラの操演者の中島春雄や特撮撮影の有川貞昌らは反対だったと言い、そもそも「幼児化路線」には反対だった本多猪四郎監督は、のちに相当に怒っていたらしい(特撮の領域は特撮監督の演出だからね)。

 全体に「まいったな~」という作品だったし、その惑星でのゴジララドンキングギドラとの決戦も星の上では怪獣の大きさを比較させるものがなく、こまっちく感じてしまうのだった。
 しかしこの作品で「いいところ」といえば、ゴジララドンキングギドラによる日本での破壊シーンがたっぷりあることで、今回はモニュメント的な建造物の破壊はないとはいえ、ビルや住宅の破壊は「これでもか!」というくらいにたっぷりとやってくれるし、迎え撃つ自衛隊の攻撃もたっぷりだった。ここで今回新登場、「ゴジラの足の張りぼて」が家屋の破壊場面で足のアップのみの画面で活躍するのだ。ただ、観ていて「ラドンの破壊シーン」は既存作『ラドン』の中からの「使いまわし」だと気づいたし、『モスラ』や『地球防衛軍』からも流用されていたらしい。このことに関しては本多猪四郎監督も「おかんむり」だったらしいが。