ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『贖罪』(2012) 第1話「フランス人形」 湊かなえ:原作 黒沢清:脚本・監督

 原作自体がけっこうベストセラーになった小説だというが、それをWOWOWが全5回の連続ドラマとして2012年の1月から放映したもの。脚本も演出も黒沢清監督。放映後ヴェネツィア国際映画祭に編集版が正式招待作品とされ、フランスでは前篇・後編と分けて一般劇場公開されて、Wikipediaによれば17万人の観客動員があったという。フランスでの黒沢清人気はスゴいのだ。
 わたしは以前にレンタル・ヴィデオで観たことがあるが、当然その記憶は失われてしまっている。

 この第1話ではその導入部の全編にわたる基調となる、小学校4年生の少女「エミリー殺人事件」が起きる。そのときエミリーと共に小学校で遊んでいて殺人犯をも目撃したはずの4人の同級生がいたのだが、誰もが犯人の顔を思い出すことが出来なかった。エミリーの母の麻子(小泉今日子)は事件半年後にその4人を自宅に招くが、そこで「犯人が逮捕されないのはあなた方のせいだ。わたしはあなた方を決して赦さない」と語り、それがその後の4人の「トラウマ」になるだろう。
 以後はその15年後のストーリーで、その4人それぞれの「贖罪」のあり方が描かれるらしい。

 第1話では紗英(蒼井優)が主人公。その小4の事件のとき、エミリーの死体を発見した4人の中で紗英はその場に残り、エミリーの死体の番をしていたのだが。
 15年経って紗英はおとなしい性格で、彼氏などつくらないような女性だったが、彼女の小学校の2年上級生だったという男、孝博(森山未來)から求婚され、「セックスとかしたいわけではない」という言葉などから結婚を受け入れてしまう。しかし孝博は一種のサイコパスで、彼女には自分の渡したケータイでしか外との交渉を禁じ、ただ自分の睡眠前に「フランス人形」(この「フランス人形」にも15年前の由来があるのだが)の格好をさせ、それを眺めながら眠りに着くだけなのだった。さいごには母に会ったことさえも難詰され、ついに紗英は入眠後の孝博を殴殺するのだった。それはどこかで、麻子への贖罪ではあったのだ。

 さすがに黒沢清というか、彼らしい不穏な演出が随所に見られ、やはりなぜか「これはホラーなのか」という気分におとしめられる。
 エミリーは小学校の体育館で殺されていたのだが、その体育館の舞台上の壁面にはゆらゆらと揺れる光が反射し、非現実的な不穏さ、不気味さを増していたし、そもそもがエミリーの母の麻子からして、自宅に招いた4人の同級生の前でまるで妖怪、死神のような姿を見せている。そして、この回では森山未來が気色悪い男を好演している。
 この回のヒロインの紗英にしても、その孝博との新婚の新居での夜のありさまで、まことに不気味な照明のもとの姿を見せる(この紗英の異様な姿は、のちの黒沢清監督の『ダゲレオタイプの女』を思わせるものがあった)。