ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『鉄路の闘い』(1946) ルネ・クレマン:監督

鉄路の戦い [DVD]

鉄路の戦い [DVD]

  • アントワーヌ・ローラン
Amazon

 これはもう、終戦一年後(ちゃんと数えれば9ヶ月後)にはもう公開されたという、戦後すぐに「この映画をつくろう!」と製作が開始された映画なんだろう。そのエネルギーがすごい。
 この映画はフランスの鉄道労働者らのレジスタンス運動を描くもので、特に「ノルマンディー上陸作戦」以後に、ドイツ軍の戦場地区への物資・兵器輸送を食い止めようとした作戦を、まさに「あのとき、こうやったのだよ!」という生々しい記憶と共に、当の鉄道労働者らが自らを演じたという、「感動」の映画であります。

 映画のさいしょのうちは、皆の運動もサボタージュ中心で、「やるべきことをやらずに」ドイツ軍の計画を遅延させるわけで、「あの地域で線路を爆破した」などということもセリフだけでの展開で、「やはり戦後すぐで、予算も限られた中での苦心しての映画製作か」とも思ったのだけれども、そうじゃなくって、終盤には「現在の映画だってそこまではやらない!」みたいなシーンをみせてくれて、「すっごいな~!」って驚いたのだった。

 そのあたりの「サボタージュ作戦」であるとか、あとの「列車運行妨害作戦」は、さすがに「鉄道労働者」だなあというリアリティもあったし、そんな運行する機関車を撮影するカメラマンもいい仕事をしている。
 ドラマ進行も、誰が主役というのではなく、けっこうドキュメンタリータッチで進行し、序盤にはシャルル・ボワイエのナレーションが状況説明をする。後半のクライマックスとも言える展開は、「ノルマンディー上陸作戦」で上陸した連合軍を迎え撃つためにドイツ軍が現地に列車で送ろうとした装甲車の列車運行を阻止しようという鉄道労働者の「活躍」がメインになる。
 対抗するドイツ軍もそんな「妨害」を阻止し、乗り越えようとするのだが、最終的にはその列車の先頭機関車を脱線させ、連結された十両の装甲車搭載車両もまた脱線するのである。いやはや、このシーンはじっさいにそんな車両を線路から脱線させているのだろうけれども、すっごいリアリティ、すっごい迫力であった。
 このあとも連合軍空軍による空爆も描かれ、このあたりの迫力も相当なモノで、この終盤のたたみかけるような作劇はインパクトがあった。

 俳優陣もアマチュア主体ということで、ほとんどそういう「人間描写」もないのだけれども、それだけにかえって、前半にドイツ軍に捕らえられて銃殺される労働者が自分の目の前の壁を這う蜘蛛を見る目線や、夜に列車操行の妨害をしようとする若い鉄道員の手のひらに「ホタル」がとまって光り、「オレはホタルというのを初めて見た」というシーンなんかが心に残る。
 脱線して谷底に落下する車両からアコーディオンが転がり出て、そのアコーディオンの音が聞こえるシーンなども、悲惨な戦争の現場との対比で心に残るものでもあった。

 この映画は、当時のフランスでレジスタンスに加わった鉄道労働者らの「誇り」でもあっただろう。そしてここに、ルネ・クレマン監督の「原点」があったわけだろう。