ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『禁断の惑星』(1956) フレッド・M・ウィルコックス:監督

 過去に観たことのある作品だが、例によって内容はまるで記憶になかった。ロボットの「ロビー」というのが登場することは覚えていたが、観始めると「そうだ、この作品には<イドの怪物>というのが出て来るのだった!」と思い出した。

 物語は22世紀、地球からの宇宙船が「アルテア4」という惑星に到着する。実はこの惑星に20年前に訪れた宇宙船があり、地球との連絡を絶っていた。その宇宙船の生き残りを捜索するというのが今回の大きな使命だった。
 惑星にはモービアス博士という人物が、その娘のアルタと共に生き残っていた。博士はこの惑星にむかし住んでいた「クレル」という民族の残した「文明」を発見・解読し、自らその文明を受け継いで発展させるような研究を行っていた。しかし、宇宙船は正体不明の怪物に襲われ、乗組員が殺されたりもするのだった。その「怪物」の正体とは?

 空を飛ぶ宇宙線や、惑星「アルテア4」の風景、モービアス博士の住居やクレルの残した文明の特殊撮影映像のクオリティは高く、「ちゃちだなあ」などとほとんど思うこともなかったし、今でもそのまま充分に通用する部分もあると思えた。
 わたしは気づかなかったが、このストーリーの根底にはシェイクスピアの『テンペスト』の翻案があるようで、モービアス博士とはつまり、『テンペスト』のプロスペローなのだ。実はわたしは『テンペスト』を観たり読んだりしたことがないので、この映画にどれだけリンクしているのかはわからない。
 しかし、先にも書いた「イドの怪物」という概念はおそらくこの映画でのオリジナルだろうし、ここで人間にとって外側の「外宇宙」と、その内面に関わる「内宇宙」とを並列して描いたことは「快挙」で、この精神が『2001年宇宙の旅』にも引き継がれるものだっただろう。
 初めて「自意識」を持ったロボットとして登場したロボットの「ロビー」を含め、いろいろと「画期的なSF」ではあったのだろうけれども、正直言って、ただひとりの女性アルタをめぐる前半のストーリーはあまりに「チャラい」というか軽く、見るに堪えないところもある。このあたりのストーリー展開には「???」というところもあるし。