ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『アウトブレイク』(1995) ウォルフガング・ペーターゼン:監督

アウトブレイク [Blu-ray]

アウトブレイク [Blu-ray]

  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: Blu-ray

 「エボラ出血熱」が世に知られ、「ヤバい」と言われていた頃のパンデミック映画(「エボラ出血熱」といろいろと共通するものが大きい)。今のCOVID-19の全世界的な感染拡大から思うところもあるが(とちゅうでウィルスが変異してしまうところとか)、ちょっと、あまりにデタラメな展開が多い映画で、まあそういう「バイオハザード」を題材にしたサスペンス映画、と観るしかない感じ。主演のダスティン・ホフマンをはじめ、けっこう「大スター」といえる俳優が多く出演しているのもお楽しみ。しかし、そういうスターがたくさん出演しているからか、たくさん出演させようとしたからか、それらのスターそれぞれに「見せ場」をつくることからか、どんどん嘘っぽいストーリー展開になって行く気もしてしまう。
 だいたい軍隊も絡むシビアな展開で、登場人物も「男ばかり」でいいところを、女医さん(正確には「疾病予防センター」の幹部)なら女性も出演させることができるとレネ・ルッソがキャストに上がり、じゃあその女医さんと主人公(こっちは軍隊の「感染症研究所」の幹部)とで「ドラマ」をつくっちゃおうと、この二人が「元夫婦」で、けっきょく「再出発」しちゃうドラマにしようとしたのね。このダスティン・ホフマンのかつての同僚で今は上司(ダスティン・ホフマンは追い越されたのだな)なのがモーガン・フリーマンで、モーガンはその悪辣たるさらに上司(ドナルド・サザーランド)の指示、命令に苦しみ、その上司の命令に従って当初はダスティン・ホフマンに「俺が上司だ!俺に従え!」とやるのだけれども、まあそのうちね。
 ダスティン・ホフマンの同僚が、今はもうスクリーンで新作には出て来ないだろうケヴィン・スペイシーで、これはレネ・ルッソに「ダスティン・ホフマンはあんたを愛してるよ」と告げて死んでいく役。それともうひとりのダスティンの同僚が、この映画では「超人的」な能力を発揮するキューバ・グッディング・Jr。おいしい役だ。

 まあいろいろあって、アフリカで捕えられたサルがかんたんに言えばアメリカに密輸されて、アメリカ西海岸の小さな町に病原菌をまき散らす。このサルだが、わたしが映画を観たあとで調べた結果ではコイツは多分「ノドジロオマキザル」というヤツで、中米に棲息するサルでアフリカにはいないヤツなのだ。まあいいけどね。
 それで、この「宿主」といえるサルから感染していた男が映画館に行って映画を観て、咳きこむこの男の口からウィルスが映画館中に飛び散ってみ~んな感染するのね。ココのところの映像が、今のCOVID-19禍でテレビとかで「こうやってウィルスが拡散する」として映された映像とクリソツなのだった。笑ってはいけない。映像演出者としての「想像力」のイコーリティのもんだいなのだ。

 で、その人口2600人ぐらいだという、周囲から隔離されたような小さな町にウィルスがまん延して、患者が続出してパニックになる。これがロサンジェルスとかの大きな都市だったとしたら、もうこれ以降のストーリーは成立しない。「小さな町」でよかったね(って、そういう脚本にしたのだが)。
 それでドナルド・サザーランドが出てきて、このウィルスは軍としては30年前から知っているわけで、軍事に利用としてもいる(「細菌兵器」というヤツだな)。その秘密を守るために町をそっくり、「何とか」という核兵器ではない爆弾で住民も何もかも吹き飛ばしてしまおうとするのである。何と乱暴な!
 そんなときに、ダスティン・ホフマンの元妻のレネ・ルッソも治療中に感染してしまい、まあそれだけの理由でもないけれども、ダスティン・ホフマンは相棒のキューバ・グッディング・Jrと共に、ほとんどロール・プレイング・ゲーム的な八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍をするのだ。「このウィルスの宿主は<サル>だぜ!」という予測から密輸入のサルを探り、もう船出している韓国船までヘリで飛んで行き、感染して死んじゃってる船員のベッドにあったサルの写真から「コイツだぜ!」と、すっごいテキトーな当てずっぽうをやるのだが、これは映画だからその「当てずっぽう」は当たってるのだ。
 ヘリで取って返した二人はテレビ局(ラジオ局だったか?)に乱入し、「こ~んなサルを知っている人は知らせてくれ!」と強引に放送させる。すごいぜ!
 もうあまりに楽しかったのでぜ~んぶストーリーを書いてしまうけれども、その放送を聞いたある家族が、「そのサルって、ウチの娘が最近会っているサルじゃないのかしら?」との名推理をする。まあアメリカには野生のサルはいないでしょうからね。その伝達を聞いたダスティン&キューバはその家族の家にヘリで飛び、そのサルをキューバがみごとに麻酔銃で射止める。すごい射撃の腕。しかし、このサルこそが「宿主」という「推測」は、相当程度に乱暴な話であろう。
 「やったぜ!さあ医療センターに飛んで帰って<血清>をつくろう!」となるが、誰が考えたって、そ~んなかんたんに<血清>はつくれんだろうし、しかもそこに「軍」のヘリが彼らを阻止するために飛んで来るし、そのヘリにはドナルド・サザーランドが乗っていたりする。「なんでそんな<お偉方>が出てくるねん!」って感じで、「ははあ、ここでドナルド・サザーランドの乗るヘリは墜落してしまい、<めでたしめでたし>となるのかなとどうしても思ってしまうのだけれども、実はそうはならなかったのね(ま、似たようなものだけれども)。ここでも、キューバ・グッディング・Jrの「超人的」なヘリ操縦技術! コイツ、何者なんやねん!

 というわけで、まさに「ちゃっちゃっちゃっ!」とわたしの料理のようにあっという間に<血清>がいっぱいつくられて(ここでもキューバ・グッディング・Jrの活躍ね!)、すべては(ダスティン・ホフマンレネ・ルッソの関係のことも)解決してしまうのでありました(COVID-19もこういう風にかんたんに解決すればいいけど、それはムリ、ムリ、ムリムリね!)。
 まあ「ジェットコースター・ムーヴィー」といいますか、後半は楽しませてもらったわけだけれども、「あれ? あれれれれ?」と、パンデミックな問題は安易に解決してしまう映画ではありました(まあこういう時期でなければ、もうちょっと本気で楽しめたでしょうか?)。