ワニ狩り連絡帳2

前世のワニ狩りの楽しい思い出。ネコのニェネントとの暮らし。

『The Bold Navigators The story of England's Canals in Song』Jon Raven & other musicians

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 Jon Raven(ジョン・レイヴン)という人のことが、どれだけ日本で知られているだろう。日本中で何十人レベルのことだろうか。彼はミュージシャンのみならず著作家でもあったのだが、彼の音源も著作も日本で紹介されたことはなかった(もう、お亡くなりになられている)。そういうことで、このCDをここで紹介しても、だ~れも興味は持たれないだろうこととは思うのだが。

 アメリカに「フォーク・リヴァイヴァル」があったように、イギリスにも第二次世界大戦後に「フォーク・リヴァイヴァル」の動きがあり、Ewan MacCallやA.L.Lloydらがイギリス古謡を研究しレコーディングし、著作をあらわした。そこから多くの成果が生まれ、わたしもそんな音世界にどっぷりだったわけだけれども、Jon Ravenはそんな、イギリス古謡を研究し、自分でもそれを歌ったという、「フォーク・リヴァイヴァル」の最後の世代だっただろうか。彼はバーミンガム周辺の「ブラック・カントリー」と呼ばれる地域の伝承文化を研究し、同時にその地域に伝わる音楽を蒐集した。

 この『The Bold Navigators』というアルバムは1975年にリリースされたもので、やはり「ブラック・カントリー」地域の研究の成果なのだけれども、ここではその地域にあった「運河(Canals)」と人々の労働との関係を歌った曲を集め、Jon Raven自身もオリジナル曲を書いている。ちなみに、このアルバム収録曲の内訳は、いわゆるtrad.の伝承曲が4曲、作者不詳ということだろうanon.曲が6曲。その他Jon Ravenのつくった曲、作者のはっきりしている曲が8曲という内容。
 このアルバムに参加したミュージシャンはJon Ravenをはじめ、John Kirkpatrick、Sue Harris、Gary & Vera Aspeyなどが加わり、一種の「コンピレーション・アルバム」という体をあらわしている(このCDではアナログ盤には収録されていなかった曲が2曲含まれているが、違和感はない)。というか、今聴いても、これは「大傑作」アルバムだと思う。

 このアルバムで大活躍しているのは、John KirkpatrickとSue Harrisの夫婦で、まあわたしも昔からこの夫婦のリリースしたアルバムは皆大好きだったのだけれども、このアルバムの2人はすごい! とりわけ、Sue Harrisの飛び跳ねるようなヴォーカル、コーラスにはしびれてしまうし、このアルバム全体がJohn Kirkpatrickのアコーディオンの音が基調になっているだろう。そこに時にSue Harrisのオーボエが加わる。ある面で、このアルバムはJon Raven、John Kirkpatrick、Sue Harris、この3人がメインのアルバムと言えるのではないかと思う。
 この、トラディショナル・ソングに「オーボエ」という楽器を持ち込んだのがSue Harrisのひとつの功績なのだけれども(というか、彼女ひとりしかいないだろうけれども)、たしかこの後にオーボエを演奏できなくなり、ハンマー・ダルシマーに楽器を変えてしまったのだった。彼女のオーボエが聴けなくなったのは残念だった。
 もう一組、Gary & Vera Aspeyという夫妻デュオも、このアルバムで2曲で参加していて、そのコーラスにもわたしは当時惹かれ、同じ頃にリリースされた二人のアルバムを買ったのだけれども、残念なことにそれはまるで楽しめるアルバムではなかった。しかし、このアルバムで聴ける2曲のふたりのコーラスは、素晴らしいものだった。
 書き忘れたが、Jon Ravenの朗々たるシンギングももちろんこのアルバムの大きな魅力で、先日買ったBob Davenportのシンギングに通じるような、雄々しい歌声にわたしも惹かれるのだった。

 歌詞の内容はさすがにわたしがどうこう言えるまでに聞き取れないのだけれども、うん、ちょっとずつ、勉強して行きましょう。

 最後に、そのアルバムタイトル曲、「The Bold Navigators」を紹介して。